歌い手さんの話① yamaさん

先日からボカロの話をしているとよく出てくる「歌い手」さんの話を今回から(何回かに分けて)していこうと思います。

まずそもそも「歌い手」さんとは何じゃらほいという話を。歌い手さんはニコニコ動画YouTubeに「歌ってみた」という動画を投稿されている方々のことです。「歌ってみた」の対象はボカロ曲だけでなく、というかむしろ何でもよくて、現状J-POPを歌っている人の方が多く感じます。体感ね。
歌い手さんは最近出てきたと思いきや、かなり昔からある概念で、かの有名なメルトショック(「メルト」(ryoさん))の関連動画がニコニコ動画の視聴数ランキングの上位に多数ランクインした事件)の発端も歌い手さんだったりします。ちなみにこれが起こったのが2007年です。
現在は「シャルル」(バルーンさん)や「ロキ」(みきとPさん)の「歌ってみた」動画の流行で、勢いをつけつつあります。

さて、そんな歌い手さんですが、近年サブカルからの脱却という新しい動きを見せつつあります。と書くと誇張かもしれないので、衆目に触れつつある、という風に落ち着かせるべきなのですが、そんなちゃちな言葉では表せないほどの人気は出ていると思います。多分。ここで賢しい人はYOASOBIさんが頭に浮かぶでしょうが、こちらは少し毛色が違うので後日扱います。
まあ何せ、歌い手さんがアニメやネットドラマなどの主題歌を引き受けることが増えた、という話です。あとはサブスクの拡大により、歌い手さんの曲が聞かれることが純粋に増えたということもあります。要は歌い手さんが人気になってきているということですね。

歌い手さんにもいろいろなタイプの方がいらっしゃいます。恐らく「外に出る」という意味での先駆者はまふまふさんやEveさんらになるかと思います。この方々は、もともと「歌ってみた」動画を投稿されていましたが、後に自分で曲を作るようになりました。
まふまふさんはそらるさんと組み、「After the Rain」というユニットとして、Eveさんは「ドラマツルギー」「ナンセンス文学」などの作品を経て、オリジナルの曲を多数投稿するようになりました。ちなみにEveさんの初期の曲はニコニコ動画ボーカロイドバージョンが上がっています。

そしてそんな中、注目を集めているのがyamaさんです。本題に入るまで長かったですが、今回はyamaさんを中心に話を進めていこうと思います。
yamaさんも、当初はボカロ曲の「歌ってみた」を投稿する歌い手さんでした。当然ながら、というとあれですが歌が非常にうまく(私も大好きです)、中でも、猫アレルギーさん(現:コメダワラさん)の「bin」という曲が人気を博します。

bin「歌ってみた」動画:[cover]bin/yama - YouTube

そしてそれをきっかけとして、猫アレルギーさんと「BIN」というユニットを結成、2019年3月16日に「チルドレン」という曲でデビューします。

チルドレン:チルドレン - BIN - YouTube

yamaさんはBINの活動と同時並行で「歌ってみた」動画の投稿を続けていました。しかしほぼ1年後に転機が訪れます。ボカロPであるくじらさんにより、「春を告げる」の楽曲提供を受けました。(2020年4月16日)

春を告げる:yama - 春を告げる (Official Video) - YouTube

これをきっかけに、yamaさんは「BIN」としての活動を行いつつ、歌手「yama」としての活動をスタートすることになります。
「春を告げる」は大ヒットしました。YouTubeの動画は2021年3月13日現在6800万回再生を突破しています。「歌い手」出身の歌手の中では珍しく、テレビにも取り上げられました。この後もエナジードリンク「ZONe」のプロジェクトに参加した「あるいは映画のような」、「恋愛ドラマな恋がしたい」の主題歌となる「真っ白」などを輩出します。ちなみに前者の曲はくじらさん、後者の曲はjohnさんというボカロPさんの別名義であるTOOBOEさんが担当しています。私は「真っ白」がめっちゃ好きです。

あるいは映画のような:yama - あるいは映画のような (Official Video) - YouTube
真っ白:yama 『真っ白』Music Video(Film Edition) - YouTube

他にもライブを行ったり、THE FIRST TAKEへの出演をしたりし、ついにメジャーデビュー。「麻痺」というシングルを発表します。

麻痺:yama 『麻痺』Music Video - YouTube

一方BINの活動も止まっておらず、2021年3月24日にはアルバムをリリースするようです。

yamaさんの独自性としては、流行ったことそれ自体もそうですが、固まったユニットとしてだけでなく、様々なクリエーターの曲を受け入れたことにあります。これは「歌い手」としてのスタイルにかなり近いです。
ヒットの立役者は「春を告げる」を制作したくじらさんとなりますが、その後の楽曲制作にはくじらさん以外の方もかかわっており、BINの活動も続けられています。Eveさんやまふまふさんなどの先駆者のように、自分で楽曲を制作されることは(もちろん今後される可能性は十分にありますが)まだありません。

このような点で、yamaさんは歌い手としてのスタイルをうまく応用して、ヒットした「元」歌い手さんであると解釈できると思います。今後のご活躍をお祈りしつつ、あわよくば「歌ってみた」動画も再開していただければと個人的に願っています。yamaさんの声が大好きです。

今回はここまで。以降は「夜」のつくアーティストさんや、ヒットメーカーとなったくじらさんなどの話もして行けたらなと思います。
読んでいただきありがとうございました。