ボカロへの「偏見」を取り除くための

先日、「ボカロへの偏見を取り除く」という触れ込みのCDを購入しました。私としては知らない人ばっかりのオムニバスで、面白そうだから買ってみよう、ぐらいのスタンスだったのですが、よくよく考えてみると私もボカロに偏見を持っていた人間でした。

私が初めてボカロ曲を聴いたのは、小学生の時の校内放送でした。曲はラマーズPさんの「ぽっぴっぽー」とJunkyさんの「メランコリック」*1で、私はそういう電波系の曲が非常に苦手でした。実際今でも「ぽっぴっぽー」はあんまり聴かない部類の曲になります。このことから昔はボカロが嫌いでした。例外的に聴いていたのは「太鼓の達人」に収録されていた黒うさPさんの「千本桜」とハチさんの「マトリョシカ」で、これらも最初は譜面が好きでやってただけであると思います。千本桜は割と好きになり、リコーダーで吹くようになるまで行ったのですが、他はあんまりって感じでした。

私がボカロへの偏見を取り除けたきっかけは、バルーンさんの「シャルル」、ぬゆりさんの「命ばっかり」です。この二曲はバンド!って感じの曲で、抵抗なく聞けたうえに、カッコよかった。特に後者はボカロにこんな曲があるんだ、という感動がありました。

と自分語りをしてきたわけですが、ボカロへの偏見を取り除くには大きな壁があります。それが「声」です。ボカロの声は非常に癖が強く、人を選びます。現に私の周りにもボカロが聴けない人はいっぱいいます。こういった方に無理に布教するのは無粋なのですが、ボカロが苦手な人にも聴いてもらえるようなボカロ曲、について今回は離していこうと思います。

導入が絶望的に長いわけですが

①歌い手さん

べたな選択肢です。それでいて最良と言えば最良でしょう。歌い手さんは様々なボカロ曲を高いクオリティーでカバーしています。ので歌い手さんのものを聴いてもらうというのが一番手っ取り早い。

偶然にも私がボカロ曲にはまるきっかけになった「シャルル」は歌い手さん人気が爆発するきっかけになった曲でもあります。最近は歌い手さんもたくさんいらっしゃいますから、ボカロの醍醐味である「いろいろな声を楽しむ」ことを疑似体験することもできます。

この体験として私が推したいのが「反芻シ考 歌ってみた サブスク配信プロジェクト」です。「反芻シ考」は「脳漿炸裂ガール」でおなじみのれるりりさんの曲で(原曲は鳴花ヒメ)、それをいろいろな人にカバーしてもらい、その中でれるりりさんのお眼鏡にかなったものがサブスク配信されるというプロジェクトです。
このプロジェクトは、まず曲が良いというところから始まります。私は特にこういう緊張感のあるピアノのイントロが好きです。めっちゃ好きです。
そして参加者さんも豪華。質の高いカバーが山ほど聞けます。以下におすすめを。

原曲:反芻シ考 - れるりりfeat.鳴花ヒメ / Rumination thinking - rerulili feat.Meika Hime - YouTube

ダズビーさん:反芻シ考 (れるりり) /ダズビー COVER - YouTube

はるみん。さん:反芻シ考にrapを少々。 /【はるみん。】 - YouTube

②調声如何により

ボカロの「人っぽい調声」というものは昔からやられていて、それにより聴きやすくなる場合もあります。有名な例はMitchie Mさんの「FREELY TOMMOROW」。この曲はハチさんの「砂の惑星」に抜かれるまで長い間VOCALOID伝説入り(ニコニコ動画での100万再生)の最速記録を持っていた曲*2であり、「調教すげぇ」の二つ名でも知られています。

FREELY TOMMOROW:【調教すげぇ】初音ミク『FREELY TOMORROW』(完成)【オリジナル曲 歌詞付】: Mitchie M - YouTube

こちらはカバーですが、夏代孝明さんの「ニア」をVOCALOID Fukaseバージョンにしたものがすごく人っぽい(ちなみにVOCALOID Fukaseはその名の通りSEKAI NO OWARIのボーカルであるFukaseさんの声をサンプリングしたボーカロイドです)。コーラスで音街ウナも入っているのですが、その使い方も見事です。ウナの機械っぽさがFukaseの自然さをより高めている感じがしますし、この使い方は曲にもぴったり合っていると言えます。

ニア 原曲:ニア / 初音ミク - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)

ニア VOCALOID Fukase ver:【Fukase・Otomachi Una】Near【Cover】 - YouTube

VOCALOIDに似たものとして「UTAU」というものがあります。ぶっちゃけ私には違いがよく分かりません。ただ、UTAUは本当に人に近い声が出せるようになっています。先日紹介したR Sound Designさんの「Lust Blue」(逆音セシル)もそうですが、例えば闇音レンリを使ったポリスピカデリーさんの「ナーヴ・インパルス」も声がいい曲の一つです。

ナーヴ・インパルス:Nerve Impulse ナーヴ・インパルス - ポリスピカデリー feat. 闇音レンリ / Police Piccadilly - YouTube

最近の曲で言うと芳田さんの「スパイラル・デイズ」が抜群に調声がうまいです。ほぼ人。さらにそれを初音ミクでやってのけているのがすごいです。初めて聴いた時ビビりまくりました。

スパイラル・デイズ:スパイラル・デイズ feat. 初音ミク - YouTube

同様に最近の曲から、志茉理寿さんの「幻想小旅行」も調声が良い。こちらはGUMIを使っていますが、歌い方が人間らしく、それでいて機械的な様子をのこしつつ……という気持ちいいラインを狙ってきています。

幻想小旅行:幻想小旅行 / 志茉理寿 feat.GUMI - YouTube

③吹っ切れてみる

悪手ではあるかもしれません。まあただ吹っ切れればよいというものではなく、声以外に目を向けてみようという話です。私が買ってきたCDはそのようなコンセプトでした。

まずはリミックスから。初音ミクの「Ievan Polkka」カバー(Otomaniaさん)はミームになるほどの人気を博しましたが、これを大胆にリミックスしたのがVSNSさん。滅茶苦茶かっこいいです。

Ievan Polkka VSNS Remix:Miku Hatsune - Ievan Polkka (VSNS Remix) - YouTube

ボカロと人を混ぜてみる、という発想も面白い。代表格はみきとPさんの「ロキ」。人との掛け合い、「がなり」など革新的な要素がふんだんに使われた作品です。

ロキ:【みきとP/ mikitoP】ロキ/鏡音リン・みきとP  ROKI/Rin Kagamine・mikitoP - YouTube

ピノキオピーさんはボカロを使ったライブというものをされています。私も初めて映像を見たときびっくりしました。有名なのは「頓珍漢の宴」ですね。早口感がボカロ!って感じですがピノキオピーさんとの掛け合いも絶妙です。

頓珍漢の宴 ライブver.:頓珍漢の宴 Live from 五臓六腑 Tour 2019 at Tokyo - YouTube

少し長くなってきたのでこのあたりで。これを言ったらどうしようもないのですが、音楽は合うものを聴くのが一番です。ただこのあたりの曲で、少しボカロの導入ができたらと思います。

読んでいただきありがとうございました。

*1:当時の校内放送はCDで音楽をかける方式だったので、実はこの音源を持っていた人は地味にすごい

*2:記録は20日+6時間、2021.4/1現在1位が「砂の惑星」の6日+5時間、2位がDECO*27さんの「乙女解剖」の20日+2時間。余談だが「砂の惑星」は現在米津玄師名義で活動されているハチさんが置き土産的に投稿した曲で、YouTubeでの視聴が増加しつつあったこのタイミングでこの記録を出したのは本当にすごい。