思い出話 feat. 音楽100選

はじめに

こちらではご無沙汰しております。すぷれひこです。

最近こちらに出没していないのは、主にnoteを書いているからでありまして、そちらではボカロを中心に音楽についてのよしなしごとをつらつらと書いています。その過程で音楽について考える機会もそれなりにあるわけですが、そうした中でふと、自分にとって音楽の思い出について語ることってなかったな、と思い立ちました。

自分語りのようなものは、音楽についてブログを書く上で極力排除していました。noteは自分のことをよく知らない人が読むことが大半ですし、音楽それ自体について語る上で自分の文脈というのは(それが切り離せないものであったとしても)障害となることがあるからです。
むしろこちらのブログの方が、自分のプロフィールについてある程度知っていて、自分としても自己開示がしやすい相手に届くと思い、本記事を執筆するに至りました。

自分としても、音楽についての思い出は自我について知ってもらう上で重要であるのに、それが酷く内面化されていることに対するもどかしさを覚えていたので、この記事を読んで自分の片鱗を知っていただければ幸いです。

概略

音楽100選、というものをこしらえました。

youtube.com

 

ボカロには「#ボカロ100選」という文化があり、それを模倣したものです。要は好きな曲を100個集めた、というやつです。

中身をジャンルごとに分けていて、

  • 器楽、合唱
  • 非ボカロ(ポップス)
  • ボカロ

としています。自分はボカロの楽曲を結構聴くので、ボカロを分離した、みたいな感じです。

これらの楽曲に対して、一曲ずつコメントをつけていきます。それだけです。
好きなところから読んでください。

目次

器楽、合唱

ポップスに比べて能動的に聴いた数は少ないですが、クラシック楽曲をはじめとして、色々な形式の音楽に触れてきました。その中でも好きな楽曲を10曲挙げています。

1. Harpsichord Concerto No.1 in D Minor (BWV1052) /Jean Rondeau

曲:Johann Sebastian Bach

ハープシコード*1、あるいはチェンバロ協奏曲。自分はチェンバロの音色が結構好きで、中でもこの曲はカッコよくて気に入っています。最近はピアノで弾く例も結構あるらしく、ピアノ協奏曲としてクレジットされることもままあるようです。SEKAI NO OWARIの『Blue Flower』という楽曲にもピアノでサンプリングされていて、クラシックのイカしたサンプリングの例としてよく挙げています。個人的にはチェンバロとしての音が好きなので、ここではチェンバロで演奏している版を挙げさせてもらいました。

自分がバッハを聞いていたのは大昔からで、情操教育として「Baby Bach」というVHSを見ていたところから始まっています*2。今でもこうやって聴いていることを考えると、教育としては上手くいっているのかもしれません。

 

2. Piano Concerto in A Minor /pf: Fazil Say

曲:Joseph Maurice Ravel

一番好きなクラシック楽曲を挙げてください、と言えばこれです。もともとは、漫画「のだめカンタービレ」で効果的に使われていた楽曲でした。自分は母親の影響で少女漫画をよく読んでいたのですが、とくに「のだめ」にはよくハマり、映画も見にいきました。大学生になってからリアルで聴く機会があり、これもなかなか感動しました。クラシックでもそうでなくても、音楽はやっぱ生で聴くのは良いものだなと思います。上記のチェンバロ協奏曲も是非生で聴いてみたいものです。できればピアノではなくチェンバロで。

現代音楽はメロディアスで聴きやすいなと思います。バルトークとかは難解ですが、ラヴェルはジャズの要素が結構入っているので、かなり現代的なポップスに通ずる部分もある。そういう意味で初心者におすすめしている楽曲でもあります。裏を返せば自分はまだ初心者から脱却できていないかもしれない。もう少しクラシックに対する造詣も深くしていきたいです。

 

3. アルセナール /近畿大学吹奏楽

曲:Jan Frans Joseph Van der Roost

父親が吹奏楽をやっており、偶に聴きにいってました*3。実際に聴いた曲のうち、一番好きな曲がこの曲でした。「コンサートマーチ」という形式に分類されるらしいです。確かに、マーチの勇壮さ・華やかさと、厳かさが共存している楽曲として成立しています。これが吹奏楽の楽曲として在るというのも良いですよね。

YouTubeには本人が指揮している動画があって、クラシックに比べ最近の人が作曲・編曲していることが多いにしろ、本人が指揮することってあるんだ……と驚いたことを覚えています。しかも大学の吹奏楽団で。今回はその動画を入れさせてもらいました。

 

4. 宝島/ WISH Wind Orchestra

曲:和泉宏隆
編:真島俊夫

吹奏楽をしている中には知らない人間がいないと言われている曲。こういう「界隈全体に伝わるアンセムがある」というのはめちゃくちゃ羨ましいなと思います。それを抜きにしても良い曲でもあるし。『アルセナール』が比較的古典的な楽曲である一方で、『宝島』はポップス的な楽曲を編したものであるので、かなりモダンな雰囲気を纏っています。こういう折衷があるのも吹奏楽の良いところです。

演奏頻度もそれなりに高いはずなのですが、自分は生で聴いたことが一回あるかないかくらい。高校生がやってる吹奏楽をあまり聴いてこなかった*4ことの弊害かもしれません。

ここに入れた動画ではないのですが、真島先生が指揮をしている動画もあり、その指揮が上品でまた好みなのです。指揮が上品ってすごい。

 

5. 群青/ Le Terre

詞・曲:福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生/小田美樹
編:信長貴富

ここで合唱曲を一曲。これは弊高校のグリー部が歌っていたのを聴いて惚れた曲です。楽曲の背景についても是非知った上で聴いてほしい楽曲でもあります。合唱曲は、ポップス寄りなものは特に、展開がわかりやすくドラマチックなものが多く、自分も好んで聴いています。特にこの楽曲は、典型的とも言えるくらいメロディーが出来上がっていて、そこが好きなのだと思います。

吹奏楽と合唱は、かなり似ているところがあると思います。学生で盛んなカルチャーであるところとか、それ故にその中で通ずるアンセムが存在するところとか。『アルセナール』『宝島』『群青』とここに三つ挙げた楽曲は、自分の中で一直線上に存在する楽曲と言えます。

大学に入ってから、友人がやっている合唱の演奏会を聴きにいった時にアンコールで突然この曲が演奏され、度肝を抜かれました。好きな曲を前触れなしに演奏されるとすごい感情になりますよね。今でも思い出しては心震える経験の一つです。

 

6. はじめての、東京

曲:RADWIMPS

映画『君の名は。』の劇中曲の一つです。当時自分にとって東京へのイメージはこの楽曲に集約されていました。割と悪く言われがちな東京ですが、自分はこういう美しい街の一つだと捉えていました。今でもそういう意識は頭の片隅にあります。臭いけどな。

君の名は。』という映画も、自分に強い感情を催した作品で、最初に見た時はそれはそれはものすごい感情になったものです。作品から抜け出せないというか、しばらく映画に浸って戻ってこれなくなりました。高校生の自分はそういうことがちょいちょいあったのですが、現在は残念ながらその心理状態が再現されない。多感な時期ならではの感情の一つだったと思います。

 

7. Dual of the Fates/ The Danish National Symphony

曲:John Towner Williams

こちらは映画『スターウォーズ』の劇中曲。エピソード1です。スターウォーズも1〜7あたりまで見ました。映画音楽の中で特に好きな曲がこれであり、この曲が用いられている「ダース・モールの登場シーン」がとてもカッコよくて好きなのです。そのカッコよさの一翼を楽曲が担っている、というのが正しい表現かもしれません。

戦闘シーンにおける劇中曲、というのは確かに劇中曲の中でも気持ちが乗りやすいものだと思います。情景描写ではなく、心理描写をダイレクトに書いたものだからです。ゲーム音楽なんかもその類ですね。

 

8. 妖々跋扈/ りくまる

曲:ZUN

東方Project*5は、自分と音楽の関係性を語る上で切っても切れない存在です。中学〜高校時代に東方にハマり、その中で東方音楽にも自然にハマっていきました。今でも仲が良い友人との、最初の話題が東方であったというのも、自分の中で大きな出来事でしょう。
プレイしていく中で気に入った楽曲というのは、それはもう枚挙に遑がないのですが、今回はこの楽曲を挙げさせてもらいます。

東方の曲では、「ZUNペット」と呼ばれるトランペットを用いたメロディアスなフレーズが注目されがちです。自分もそういう曲は好きなのですが、一方でピアノを効果的に用いた、繊細なフレーズも大好きです。妖々夢永夜抄あたりは特に綺麗な楽曲が多い気がします。

 

9. The Regend of Mithica No.6

曲:Alan Silvestri

実はディズニーが結構好きです*6。幼少期に関東に住んでいた時期があり、物心はまだついていない時期でしたが、うっすらとした思い出として頭に残っています。大学生になり、東京に引っ越したために、今も年一くらいでは足を運んでいます。なんなら一人でも行きます。それくらいに気に入っている場所です。

ディズニーではさまざまなショーがこれまでに行われてきましたが、「レジェンド・オブ・ミシカ」は中でも特別な存在です。ディズニーシー10周年記念の曲『Sea of Dreams』と合わせて、この時の曲がまるっと好きだと言えます。中学から高校の間はディズニーに行けていないため、自分がディズニーを訪れていた「最後」の記憶がこの時期でした。すなわち、小さい頃の楽しかった思い出を喚起してくれる楽曲としても機能しているのかもしれません。再演してくれないかな〜〜

 

10. Baroque Hoedown/ Perrey and Kingsley

曲:Perrey and Kingsley

東京ディズニーランドのご長寿パレード、「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」に用いられていることで有名な曲です。そもそもこのパレードに原曲がある、というのを知らない人も多いかと思います。自分も大学に入ってから知りました。

1967年と、かなり昔に発表された楽曲なのですが、シンセがバリバリに効いている楽曲であり、近未来的なイメージも受けます。この時代にこういう曲があるんだ、という意味でも素晴らしい楽曲です。パレードでは、この曲のフレーズを主題として、さまざまな作品の楽曲をマッシュアップしつつ楽曲が展開されており、変奏曲のような体をとっています。変奏曲自体も結構好きなので、パレードのアレンジとしても好みと言えるでしょう。

エレクトリカルパレードも自分の幼少期における重要な思い出の一つらしく、特にクライマックス〜終演アナウンスの流れが記憶に残っています。大学に入り、6年ぶりくらいにディズニーへ行ったのですが、普通にこの部分で泣きました。
パレードそのものだけでなく、「場」みたいなものを音楽を用いてまるっと支配して、ショーを展開するという音楽の使い方は改めてすごいなと思います。

非ボカロポップス

ボカロ以外の楽曲群です。概ねJ-POPですが、少しだけ変わり種が入っています。ネット系だとボカロPが楽曲制作を行なっている場合もありますが、合成音声が使われていない楽曲は基本的にこちらに入れています。

幼少期編

11. ハッピー・ジャムジャム/ しまじろうのみなさん

曲:樫原伸彦
詞:横山武

自分もしましまとらのしまじろうさんにお世話になっていた時期がありました。しかしながら、この曲はどうやら、「子供向け曲ベスト」みたいなCDを聴いていた中で記憶に残ったものであるようです。

『ハッピー・ジャムジャム』はエモい、という感覚は、自分はもっと広がって良いものだと思います。最近はカバーする人も増えてきましたし、世の中もジャムジャムに目を向けつつあるのでしょう。子供がこの曲を聴いている世界、明るいと思いますよ。

最近のしまじろう系列は、打首獄門同好会を曲に迎えるなど、さらに先鋭化*7しているらしい。今後もロックの情操教育を続けていってもらえればと思います。

 

12. 風になる/ つじあやの

詞・曲:つじあやの
編:根岸孝旨

ジブリ映画『猫の恩返し』の主題歌。この曲は好きだという人を結構見ますね。

ジャムジャム同様、「ジブリの主題歌アルバム」みたいなCDを聴いていた中で記憶に残ったものです。幼少期は能動的にCDを聴くということがなかったため、親がかけているCDから音楽がザッピングされていく、という体験が多いかと思います。

ジブリ映画も数あれど、こういう爽やかな楽曲が主題歌に使われている例も結構少ないですよね。『猫の恩返し』自体も青年向け、みたいな印象を受けるので、他のジブリ映画とはちょっと趣向が違うのかもしれません。

 

13. ブルーバード/ いきものがかり

詞・曲:水野良樹
編:江口亮
弦編:クラッシャー木村

親の影響でいきものがかりをよく聴いていました。自分にとっての「好きなアーティスト」の原点はいきものがかりと、同じく親の影響で聴いていたコブクロでした。親の車でかかっていた曲が、最初の音楽の記憶だ、という人も多いのではないかと思います。

いきものがかりの中でも当時好んで聴いていたのは『ブルーバード』でした。思えば、この時の嗜好って今でも変わっていないような気がします。読者の皆さんは是非、以下の音楽群をざっと見て「変わっとらんなぁ」と感じてもらえれば幸甚です。三つ子の魂百まで、というやつかもしれませんね。

中学・高校生編

14. 不死鳥/ SEKAI NO OWARI

曲:中島真一
詞:深瀬慧

SEKAI NO OWARIは、自分が初めて能動的に聴くようになったアーティストであると認識しています。よって、自分にとっての「趣味としての音楽」の起点はセカオワにあります。

セカオワを初めて聴いたタイミングは今でも鮮明に覚えていて、「ミュージックステーション」で『スノーマジックファンタジー』を聴いたのがきっかけでした。小学校6年生の頃です。当時から何かビビッときたというか、自分の気に入る曲だ、という意識があったようで、その記憶を大事に抱えて中学生になり、家でYouTubeを見る環境が整うと、腰を据えてセカオワの音楽を聴き出すようになりました。

初めてライブに行ったアーティスト、もセカオワになります。ドームライブ「Tarkus」の大阪公演でした。「THE DINNER」や「炎と森のカーニバル」はセトリ・演出・アレンジが結構好きで、DVDを繰り返し繰り返し見ていました。
当時は結構セカオワに傾倒していて、テレビ出演を欠かさずチェックしたり、ラジオを聴いたり……ここまで特定のアーティストに入れ込んでいた経験は後にも先にもないですね。

『不死鳥』という曲は、初めて聴いたのはかなり昔のことなのですが、気に入ったのは結構最近のことです。ロックが好きだ、という自認が生えてから、「やっぱりこの曲も良いじゃないか」と思うようになりました。Fukaseさんの中性的な歌声と歌詞のバランス感がすごく良くて、ラブソングってこうあって欲しいな、という理想的な曲でもあります。

 

15. ため息 shooting the MOON/ UNISON SQUARE GARDEN

詞・曲:田淵智也

自分の音楽史を語る上で、もう一人欠かせない存在がUNISON SQUARE GARDENです。セカオワと同じ頃、すなわち中学生の頃からハマり、今でもよく聴きているバンドです。ユニゾンが好き、と言うと意外に思われることが多いですが、自分は「ロック」や「言葉遣い」などの点で、他の好きな音楽と地続きであると認識しています。

ニゾンは、その楽曲が好きなのはもちろんのこと、哲学にも大きな影響を受けています。初めてライブに行ったのはセカオワでしたが、「好きなロックバンドはライブで聴くべきだ」という思想は田淵さん*8の影響を受けています。同様に、「CDは買った方が良い」という思想も田淵さんの影響を受けています。中高生の頃から今に至るまで、懐の許す限りCDは買うようにしています。最近はサブスクも利用するようになりましたが、「アルバムをフルで聴く」という行為は大事にしています。

この曲はアルバム「CIDER ROAD」に収録されている楽曲。ユニゾンで好きなアルバムをあげるとすれば間違いなくこれを挙げます。これは、ロックとしてのカッコよさ、その中にあるポップさ、そして破天荒さが共存していて、なおかつ最もキャッチーな楽曲群が集まっていることによります。昔「ユニゾンで好きな曲は?」と聴かれて、この曲を挙げたらドン引きされた*9のも、今となっては良い思い出と言えるかもしれません。

 

16. ショートショート/ ポルカドットスティングレイ

詞・曲:雫

ポルカドットスティングレイの曲を聴き始めたのは、高校生になってすぐくらいの頃だったと記憶しています。ツミキさん(75参照)のボカロ曲を聴いていた時に、「曲調がポルカに似ている」というコメントを見つけ、聴いてみたらハマりました。
普段そんなに意識はしていないのですが、アルバムが出たら聴いてしまうし、その曲が結構好み、という不思議なバンドです。

ポルカも色々な曲を書くのですが、やはりロックが好きということもあり、この曲が好みにパッと挙がりました。歌詞の内容としては失恋ソングなのですが、曲調が徹底的にポップで明るいというギャップがすごい。この天邪鬼さにとても惹かれました。
この曲は「踊る様に」というアルバムに収録されているアレンジバージョン*10なのですが、このアルバムをちょうど北海道の旅行中に聴いていたので、なぜかこの楽曲は札幌市営地下鉄や地下歩道の記憶と紐づいています。こういう「旅行先の風景」と紐づいた楽曲もままあるように思います。

自分の音楽人生を構成している主要なバンド、と言われれば、セカオワ・ユニゾンポルカの3つを挙げると思います。それぞれ聴き方が全く異なりますが、それぞれの形で、自分の人生を豊かにしてくれています。

 

17. アシタノヒカリ/ AAA

曲:丸山真由子
詞:溝口貴紀・Mitsuhiro Hidaka
編:ats-

自分はアニメや漫画をそこまで嗜まずに過ごしてきました。特に大学生になるまでは、1クール通しで見たアニメは片手で数えるほどだったと記憶しています。その中の一つが「ワールドトリガー」です。

今でこそ深夜アニメの枠に収まっていますが、昔はニチアサ、すなわち日曜朝のテレ朝系列*11で放送されていました。正直当時の記憶はほとんどなく、ストーリーも漫画を読み返してようやくちゃんと認識したというレベルなのですが、主題歌だけはなぜか記憶の片隅に残っていました。それがこの曲です。

AAA自体は名前くらいは知っていて、有名な曲のフレーズくらいは覚えていたのですが、この曲がAAAによるものというのは高校に入った後くらいで初めて認知しました。「かっこいい」という認識だけで記憶に残っていたのですから恐ろしいものです。

当時はあまり意識していませんでしたが、この曲から、「曲が良いアニメばかり見る」というジンクスのようなものが形成されたように思います。

 

18. 風が吹く街/ ラックライフ

詞・曲:PON

「曲が良いアニメばかり見る」第二号、「文豪ストレイドッグス」の2期EDです。

自分と文ストとの出会いは、なんと東武動物公園でした。白虎に乗っている敦くん(中島敦、主人公)が可愛すぎて一目惚れしたのがきっかけです。名前くらいは知っていたのですが、全然どんな話か知らず、普通のバトルアニメだと思っていました。

ある日夜中にテレビを見ていると、偶然文スト2期の再放送にぶち当たりました。のちに自分の「推し」となる尾崎紅葉先生が、敦くんを滅多刺しにしているシーンです。あまりにもグロテスクすぎるシーンにドン引きし、「思ったよりえらいアニメやった……」と思ってしまいました。残念。

しかし、エンディングの曲はものすごく良かったんですね。のちにやる気を出して再履修することになるのですが、ストーリーにこのエンディングが映えること映えること。文ストの作画は結構「美麗」寄りだと思いますが、その華奢な絵にもよく即していながら、バトル漫画に必要な「アツさ」も有しているエンディングだと思っています。今でも2期がお気に入りです。

 

19. Catch the Moment/ LiSA

曲:田淵智也
詞:LiSA

アニソンといえばこの曲、というイメージがあります。勝手に。それぞれのジャンルに対して「代表曲」みたいな概念があると思っていて、例えば演歌なら『津軽海峡・冬景色』なんかが挙がると思いますが、アニソン代表といえばこれだと思っており、それくらい「典型的」な曲だと言えると思います。

この曲を聴いたのが先か、田淵さん繋がりで聴いたのが経緯か忘れましたが、田淵さんの曲とLiSAさんのパワフルな歌声が完璧にマッチしている名曲です。映画もちゃんと見ました。自分にしては珍しいことですが、「元ネタの履修」というものも回収しています。映画のストーリーにももちろん合った歌詞なので、より楽しめましたね。

この曲あたりから、「誰が曲を作っているか」みたいなところに目をやるようになったと思います。とくに田淵さんは最近色々な人に楽曲提供をしているので、共通の話題として上がることも結構多い気がします。さすがです。
ネット系のアーティストだと、これまで聴いていたボカロPと組んでいることがあるので、意外なところのつながりを楽しむこともできます。

 

20. あいつら全員同窓会/ ずっと真夜中でいいのに。

詞・曲:ACAね

自分がボカロを聴き出した2017年くらいからは、ネット発のアーティストが多数生まれた時代でもありました。ヨルシカやヒトリエ、米津玄師さんは既にデビューしていたのですが、ずとまよやYOASOBI、Adoさんあたりはデビューする瞬間を目の当たりにしてきました。これが「古参アピ」というやつです。

ずとまよは、初期の編曲にぬゆりさん(参照:62)をはじめとするボカロPが関わっていたことからちょっと聴いていましたが、腰を据えて聴き始めるのは大学に入ってからのことになります。特にこの楽曲は、YouTubeのCMに使われていたことで有名になりましたが、自分がちゃんと聴いて好きになるのは結構後のことでした。正直ずっと同じ曲をCMで流されると萎えちゃうので、後で落ち着いて聴くくらいがちょうど良いのです。

余談ですが綾辻行人さんがずとまよのファンなのが結構面白いなと思います。

 

21. 闇色の朝/ Maison Book Girl

詞・曲:サクライケンタ

アイドル曲、というのも全然聴いていませんでした。男子校にいた関係上、周りには坂道系を始め、アイドルのオタクも一定数いたのですが、自分はその曲調があまり合わず、有名な曲すらちゃんと聴いたことがない、くらいの状態でした。

そんな自分がなぜか齧っていた唯一のアイドルが、Maison Book Girlというアイドルでした。人数が少なく、歌い回しが多いというのと、曲調があまりアイドルっぽくないので、自分にもとっつきやすかったのだと思います*12。むしろ曲調はかなりプログレッシブで、よくこんな曲を当時から聴いていたなと思います。今聴いても全然カッコいいと思えるので、昔の自分に感謝しています。

ここの楽曲の好みも「ロック」と地続きなので、結局ジャンルの選り好みが激しいのかな、とも思わされますね。

 

22. ヒステリックナイトガール/ PSYQUI

詞・曲:PSYQUI

『ヒステリックナイトガール』は、平成後期以降のネット音楽の祖みたいな楽曲だと勝手に思っています。海外では「Gatcha Pop」と呼称されているそうですが、まさにその「Gatcha」感の始祖がこの曲にあるのではないかという考えです。

自分は「典型的」な曲が結構好きだという傾向があると思います。「当たり前のことをちゃんと(100点で)やる」ということは当然ですが結構難しくて、それをきちんとやっている楽曲は素直に好きになれる、ということだと思います。先に挙げた『Catch the Moment(19)』とかもそのクチかも。スタンダードな曲をこれからもしっかりと愛していきたい所存です。

 

23. Home Sweet Home/ KMNZ LIZ

詞・曲:Neko Hacker

上記したGatcha Popの中でも、「Kawaii Future Pop」というジャンルに分類される楽曲です。高校生の間にここまで手を出していたというのは中々慧眼だったと思います。おかげで、大学に入ってから音楽をちゃんと開拓する上で、音楽に対する見通しが良くなりました。

この曲は、本人を題した「Neko Hacker」というアルバムに入っていたのですが、アルバム丸々「Kawaii Future Pop」を体現した作品で、どれもすごく良い曲でした。
ここでは、収録曲の中でもロック寄りの楽曲を選んでいます。ギターイントロからしてカッコいいですよね。五本の指に入るくらい好きなイントロだと思います。一方で、左右に振っているのはEDMっぽくて、きっちりジャンルを越境している様な良さも出ています。

この辺のネット発アーティストは、ボカロを聴く中で副産物的に聴いていたものですが、コロナ以後そういうアーティストが注目されるようになり、他の人とも話題として共有しやすくなったと思います。そういう音楽の発端に触れられたのは貴重な経験だったのかもしれません。

 

24. フレンズ/ レベッカ

曲:土橋安騎夫
詞:NOKKO

かなり有名な曲で、自分世代では「親が聴いていて知ってた」みたいなクチの人が多いようです。自分はMステのスペシャルで聴いたのがきっかけで知りました。かなりクセのある声ながら、それがバッチリ活きた曲と、パンチが強めの歌詞にやられた記憶があります。「口づけを交わした日は/ママの顔さえも見れなかった」という歌い出しが特に。刺激的ですよね。

当時かなり気に入ったのはそうなのですが、それ以降繰り返し聴いて、カラオケでも歌えるくらいになったのだから驚くべきことです。こういう昔の曲はテレビでザッピングすることが多かったのですが、ここまでしっかり聴いたのはこの曲くらいかなと思います。

 

25. 群青日和/ 東京事変

曲:H是都M
詞:椎名林檎

高校の時の国語の授業で夏目漱石三四郎」を扱った際に、登場人物の心理描写に類似した楽曲として先生が引用していたのがきっかけで知りました。実際にラジカセを授業に持ち込んで曲まで聞いたのですが、「先生がこういう曲を聴くんだ」という衝撃と、音楽を仮借して心理描写について説明したという授業のカッコよさで今でも記憶に残っています。

群青日和』はある意味で「原点にして頂点」みたいな評価を一番よく受けている楽曲だとも言えるかもしれません。当時にしては短い楽曲ですが、その中に重厚な音楽が詰め込まれているのがすごく良いです。構成も結構割り切っていて、2004年の曲とは思えないくらい短いですが、ちゃんと満足させてくれる。伝説的な扱いを受けるのも納得の一曲です。

 

26. 死神/ 大森靖子

詞・曲:大森靖子
編:ZiNG

自分が大森靖子さんの曲を聴くというのが意外性を持って受け入れられるかというのは微妙なラインです。ギリ聴いてそう寄りかも。後で本人の歌唱が出てきますが、花譜さんというバーチャル・シンガーのカバーライブで聴いたのを端緒に、こういうアングラ寄りの楽曲の知識がかなりつきました。こういう選曲センスの良い歌い手さんは、いつも新しい世界を見せてくれるので感謝しています。

同じ大森靖子さんの『ミッドナイト清純異性交友』あたりも花譜さん繋がりで知ったのですが、その辺りの知識が大学に入った後の交友関係で有効になってくるとは思いませんでした。つくづく、音楽との出会いはわからないものです。

大学生編

27. 勿忘/ Awesome City Club

曲:atagi・永野亮
詞:atagi・PORIN

大学生になって初めて印象に乗った曲は、渋谷でひっきりなしに流れていた曲でした。未だにこの曲を聴くと、引っ越した当初の気持ちが思い出されます。

楽曲が特定の記憶や感情に紐づいていることは、結構あることだと思いますが、自分は大学入学以後その傾向が顕著だったように思えます。この曲はその中でも最初の記録ということになり、新生活への期待や不安が今でもありありと思い出されるのです。こう書いてみるとすごく月並みな感情ですが、本当にそういう感情になるんですね。新生活って。

楽曲自体が魅力的なのも当然ながらそうです。特に「ハモ」の美しさが際立っている。綺麗な声の女声と、少し厭世的な男声がよく噛み合って綺麗なハーモニーを生み出しているのは、Awesome City Club独自の魅力だと思います。「The First Take」でのライブも上手かったのが印象的でした。

 

28. 異邦人/ 笹川真生

詞・曲:笹川真生

笹川真生さんは、自分が愛してやまないクリエイターのうちの一人です。元々mao sasagawaという名義でボカロPとして活動をされていたのですが、いつしか自分で歌うようになり、こういう楽曲を出されるようになりました。割と良くあることです。

ボカロP時代から、ダウナーなサウンドを突き詰めて表現されていたクリエイターでしたが、自分で歌われるようになってからはより繊細な感情表現がミニマムに入れ込まれていることが多いイメージです。この楽曲も構成は非常にシンプルですが、メロディの運び方、ラスサビの展開など、好きなポイントが詰め込まれています。特に、昏めの曲調が多い同氏の楽曲の中で、最後が明るく開けているのが大好きです。

mao sasagawaさんとしての楽曲は高校生時代から聴いていたのですが、大学に入ってから本人が歌う楽曲を聴き、改めてその魅力に気づきました。今では、「好きなクリエイター」と言われてスッと名前が出てくるくらい大好きな音楽性をしていると感じています。

 

29. ルフラン/ 理芽

詞・曲:笹川真生

同じく笹川真生さんの提供曲。そして、自分が「狂おしいほど好きな曲」の一つでもあります。狂おしいほど好き、というのは、とんでもない感情を喚起する/された楽曲である、というのと大体同義です。

全体的な曲調としてはやはり昏いのですが、感情の禍々しさみたいなものがストレートに描写されていて、かなり効きました。理芽さんの、大人一歩手前みたいな声もこの音楽にばっちりとハマっていて、より身に迫って感じられます。最初にこの曲を聴いたとき、泣きながら爆笑する、みたいなものすごい感情になったことを覚えています。感情を揺さぶった曲は、特に重要なものとして記憶に残っています。

 

30. あなたのことをおしえて/ キタニタツヤ

詞・曲:キタニタツヤ

タニタツヤさんも笹川真生さんと同じような巡り合わせ、すなわち、ボカロPとしての「こんにちは谷田さん」の楽曲を高校生の頃に聴いており、後に本人の歌を聴き出した、というタイプです。

タニタツヤさんの武器はその歌詞だと思います。最近の曲は、ミニマムな出来事の心理描写を切り取ったものが多く、同氏の曲にもそういうテーマがよくみられますが、その写真の撮り方がうまく、いつもハッとさせられます。自分は楽曲を聴く上で、歌詞はあまり意識しないため、ここまで歌詞にフィーチャーするのはかなり例外的な事象と言えるかもしれません。

例えば、この曲の冒頭には「あなたのことをおしえて/好きな音楽とか/嫌いな人とか」という歌詞があります。かなり思想が出ていますね。ただ、自己開示における情報の切り取り方、というのをこう表現しているのがまず面白いと思いました。音楽という媒体を通してその内容が表現されている背景を踏まえると、尚更です。

 

31. HEART BEAT/ YOASOBI

詞・曲:Ayase

ずとまよの項に書いたように、YOASOBIは自分が古参ぶれる数少ないユニットの一つです。もはや周知の事実ですが、YOASOBIのコンポーザーをしているAyaseさんはボカロPとしても活動をされており、そちらの曲を先に聴いていたという背景があります。詳しくはAyaseさんの項で。

『夜に駆ける』を聴いた時の正直な感想は、「自分は好きだけどそんなに伸びないだろうな」というところでした。AyaseさんもボカロPとしての知名度はそこそこくらいでしたし、それこそずとまよやヨルシカが幅を利かせていた時代にそのニッチを取りに行けるとは思わなかったからです。しかし、この曲は爆発的に伸び、YOASOBI自体も。J-POPの中心を担うようなユニットへ成長していきます。
他のネット発ユニットに比べて、YOASOBIは「覇道」をいくイメージです。J-POP「らしい」メロディやコードを積み上げながら、少しの「YOASOBI節」を噛ませることで、キャッチーな楽曲を量産している、と認識しています。

『HEART BEAT』は、NHKが毎年やっている「18祭」というイベントの書き下ろし曲です。このイベントの曲では合唱が取り入れられることが多く、RADWIMPSの『正解』でもそれが効果的に用いられています。
YOASOBIも『群青』で用いたような合唱を取り入れて楽曲制作をしており、これが王道J-POPと奇跡的な噛み合いをしている、というだけでも凄いのですが、この楽曲の本領はやはりラスサビへの「タメ」にあると思います。最後の最後に解放する気持ち良さです。このタイプの名曲はこれまでいくつも作られてきたものの、最近は「バズ」志向により下火でした。その中で、こういう楽曲だからこそ「タメ」を取り入れてきたのは流石の才覚だと思います。

 

32. 雲外憧憬/ Fantastic Youth

曲:LowFat
詞:Onyu

ワールドトリガー」3期のエンディング曲です。ワートリ3期は大学に入ってから放映されたので、やっと腰を落ち着けて見ることができたと言えるかもしれません。大学に入ってからちゃんとアニメを(クール通して)見るのはこれが初めてだったので、これがなければ「アニメを見る」ということに対する姿勢は今とは違っていたかも。

Fantastic Youthさんは元々歌い手*13ですが、その頃から聴いていたので、「知っている人が好きなアニメの主題歌をやる」というなんとも幸せな巡り合わせでした。当時そんなにタイアップがついているアーティストでもなかったので、結構びっくりした覚えがあります。

アニメ外の事項として、この曲はやたらクリスマスに聴いていた覚えがあります。当時は夜景やイルミネーションをめぐるのが趣味で、クリスマス当日も一人で(一人で?)お台場やら東京タワーやら、ベタなイルミネーションを一通り廻っていました。その時の浮遊感と、寂しさを思い出す曲です。

 

33. 心予報/ Eve

詞・曲:Eve
編:TAKU INOUE

この辺の楽曲を「非ボカロ」に入れるのは少々卑怯かもしれません。歌い手さんの楽曲はやはりボカロとの強い紐付けがあるからです。なんなら『心予報』は初音ミク版をサブスクで聴けますし、ボカロを題材とした音ゲー「プロジェクトセカイ」にも収録されています。

Eveさんは『ドラマツルギー』なり『廻廻奇譚』なり、ダークな曲調がフィーチャーされがちですが、自分としてはこういう明るい楽曲が好み寄りです。MVを見ると結構ベタなラブコメなのが良いですよね。バレンタイン曲ですし。

 

34. Midnight Mission/ Midnight Grand Orchestra

詞・曲:TAKU INOUE

バーチャルYouTuberは、ボカロなどを趣味にしていると結構通りがちで、自分も掠める程度に通りました。特に星街すいせいは普通に歌が上手いのと、楽曲提供のセンスが尖っている*14こともあり、しばしば聴いていた覚えがあります。

中でも、TAKU INOUEと手を組んで結成された「Midnight Grand Orchestra」というユニットは革命的だったと思います。サウンドがカッコいい。自分はあまり存じ上げなかったのですが、界隈ではかなり有名なコンポーザーで、通ずる友人には一発で当てられたほど。実際これ以降あちらこちらでこの名前を見ることになります。

曲自体もかっこいいのですが、MVのセンスが(VTuberらしく)とても良い。ダンスがここまで明瞭に描かれていることにも驚きました。
音楽のMV効果に注目する、というのはボカロリスナー的な観点かもしれないですが、こういう滑らかなダンスの表現などは、「わかりやすくすごい」ので、自分も結構好きです。coalowlさんあたりが得意なイメージ。

 

35. 今夜はブギー・バック

詞・曲:小沢健二・光嶋誠・松本真介・松本洋介

J-POPのスタンダードとして長年親しまれている楽曲の一つ。大学に入ってから「こういうスタンダードっていいよな」という気持ちになった時期があり、昭和後期〜平成初期に流行った曲をちゃんと履修した時期がありました。

ここに挙げた動画はちょっと変わっていて、各時代の音楽・ファッショントレンドを追体験するというものなのですが、こういうメドレー的な動画も大好物です。さらっと初音ミクがいルことにも驚きましたが。上手いメドレーは「繋ぎ」が魅力で、こういう動画でかなり音楽をザッピングしていた覚えがあります。

 

36. いい日旅立ち・西へ/ 鬼束ちひろ

詞・曲:谷村新司
編:羽毛田丈史

関西出身の人間からすると、新幹線の車内チャイムとしてお馴染みの楽曲ですが、この曲の良さを理解したのは大学に入ってから(=東京に来てから)となりました。同じく谷村新司さんが手がけている『北陸ロマン』においてもそうですが、渋い魅力、というのを映し出せているのが凄いと思います。自分にとって西日本のイメージはこれ、とはっきり言えるくらいです。

「西へ」か本家かというのは結構宗派の分かれる問いですが、自分は鬼束ちひろさんの声がこの曲に合っていると思うのでこっちを入れさせてもらいました。忖度じゃないですよ

 

37. 空と君のあいだに/ 中島みゆき

詞・曲:中島みゆき
編:瀬尾一三

中島みゆきさんの歌詞には、真に迫る怖さというか、切実さというか、そういうものがこもっていて好きです。こういうことを言うと怒られそうですが、これを思いっきり「現代化」したのがキタニタツヤさんに通じているのではないか、と自分は考えています。
ともすれば「泥臭い」みたいな表現がつけられるような内容なのかもしれませんが、「気高さ」みたいなところが垣間見えるので、これも一種の美しさとして受容できる、というふうに捉えられるでしょうか。自分は中島みゆきさんの楽曲を美しいと思っているのです。

聴き出したのは実家にあったCDがきっかけなのですが、これも大学に入ってから色々と聴き直し、結局この曲が好きだな、に行き着きました。「君を泣かせたあいつの/正体を僕は知ってた」なんて歌詞どうやったら思いつくんでしょう。決してキャッチーではないのですが、印象に残る歌詞が多いイメージがあります。そういうところが「真に迫る」の正体なのかもしれませんね。

 

38. ゴーストキッス/ NOMELON NOLEMON

詞・曲:ツミキ

大学に入ってからしばらくして、敬愛するボカロPの一人であるツミキさんがユニットを組み、デビューされました。それがNOMELON NOLEMONというユニットです。ボカロを聴き始めてから、世間で流行っていたこともあり、ボカロPが自分で歌ったり、シンガーとユニットを組んだりしてボカロから離れる、という事象を多く見てきました。新しい音楽に触れられる嬉しさと、ボカロを聴けなくなることの寂しさでよく板挟みになっていたものです。

ノーメロがデビューして初めて出たアルバムがこの「POP」でした。半ば義務のように*15このCDを買い、とりあえず一通り聴きました。そこで、ツミキさんがやりたい音楽をみとめ、納得したことを覚えています。

ノーメロのアルバムは、アルバム一枚で成立しており、一連の流れがよく考えられているというのもその一因だったと言えるでしょう。実はこの部分についての感想noteが、自分が音楽ブログを始めたきっかけです。

フォニイ』以後、ツミキさんはかなりダンスミュージックを志向されていた気がします。ノーメロでも、また世間で流行した『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ』でもその意向が見られます。しかしながらその根幹はロックにあり、アルバムではロックサウンドを発揮した楽曲がしっかり入っています。この『ゴーストキッス』はその最たる例であり、スピード感のあるロックに乗って、感情が迫ってくるように吐露されます。ラスサビの展開もすごく好きで、ノーメロ・ロックで一番気に入っている曲は現時点ではこの楽曲となっています。

 

39. 春の嵐/ 私立恵比寿中学

open.spotify.com

詞・曲:照井順政

これまでの人生において、音楽の好みが他人の影響を受ける、という事象はあまり起こりませんでした。もちろん、親が聴いていた音楽から好きな曲を見つける、ということもありましたが、多くは成長してから好みを再構築しましたし、人から楽曲を紹介されることもかなりありましたが、それによって好みまで左右される、ということはあまりありませんでした。

数少ない例の一つがアイドルです。大学に入ってからアイドルを推している人と付き合うことになり、いろいろな音楽を聴くこととなりましたが、良い意味でそれまでの固定観念が崩され、アイドルの曲にも色々あるんだな、ということを知ることができました*16
特に私立恵比寿中学はその楽曲ジャンルが多岐にわたる印象です。最近は楽曲提供を受ける機会も結構あるので、楽曲の雰囲気が凝り固まっていないという点が良いですね。もちろん、さまざまなジャンルの提供を受けても、歌唱としてそれが実現できる、という技術あってこそのことだと思います。アイドルってすごい。

聴く楽曲の幅が広がり、好きな曲もいくつかできましたが、最近の好みとしてはこの『春の嵐』が一番だなと思います。ジャンルはオルタナティブ・ロック。最近の曲ではないのですが、今聴いても色褪せないくらい先進的な楽曲だと思います。歌詞で描かれているのは、ある意味で典型的な恋愛なのですが、リフレインが効果的に用いられていたり、間奏にめちゃくちゃカッコいいコードを置いていたり、ロックの良いところを凝縮したような曲になっています。メゾブ然り、前衛的アイドルソングってもっと掘るべきなんだろうなとも思いますね。

 

40. おもかげ/ Vaundy

詞・曲:Vaundy

大学に入って、人とカラオケに行くことがちょいちょいありました。自分の好きな歌を歌うのが大前提ですが、ある程度流行りの曲も知っておいた方が良いよな、ということで色々聴いていた時期がありました。

『おもかげ』はVaundyがmilet・Aimer・幾田りらのお三方に書き下ろした楽曲で、「The first take」の企画に用いられています。なかなか化け物トリオですね。紅白歌合戦でもこの3人が集結し、歌っていらっしゃいましたがなかなか壮観でした。Vaundyも来てたし。

提供曲のセルフカバーってかなり味があります。特にVaundyの場合は、原曲からちょっとアレンジが入っていて、「Vaundyっぽく」チューニングされているのがイカしています。カバーとかセルフカバーとか、苦手としている人は周りにも一定数いるのですが、自分は結構聴くタイプです。

 

41. 愛を伝えたいだとか/ あいみょん

詞・曲:あいみょん
編:近藤隆史・立崎優介・田中ユウスケ

カラオケお勉強曲その2です。この曲は歌ってて結構気持ち良いので、今でも結構歌っています。あいみょんはもうちょっと腐った感じの楽曲を書く人だと勝手に想像しており、「思ったより明るい感じやんけ」と感じて勝手に離れた過去がありましたが、この曲をもって吹っ切れました。マジでその節はごめんなさい。

マリーゴールド』然り、あいみょんの曲は結構年上の人も聴いていることがあるのでびっくりです。平成後期の国民的歌手といえばこの人だったのかもしれません。最近はこういう一般的で、おだやかな歌を書く人が減ってきているので、貴重な楽曲群なのだと思います。

 

42. ロングホープ・フィリア/ 菅田将暉

詞・曲:秋田ひろむ

ヒロアカは見ていません。すみません。

この曲はカラオケ対策ではなく、歌い手さんの動画を漁っていて見つけたものです。菅田将暉さんが歌っていたこともそれまでは知らなかったし、こんなに歌が上手いとも思っていませんでした。あと自分は菅田将暉さんの顔が結構好きです*17

自分のパーソナリティを知っている人からしたら、こういうメッセージ性の曲を聴くこと自体が意外に映るかもしれません。もちろん歌詞が良いのは認めるところですが、自分にとっての魅力はやはりその曲にあります。楽曲を制作しているのはAmazarashiというバンドのボーカルをされている秋田ひろむさんですが、この曲はAmazarashiらしい擦れたメロディをしています。そこに少年漫画的な強い歌詞が載っているので、そのギャップが魅力的なのです。あとそのギャップは菅田将暉さんのキャラクター性にも通ずるところがあると思ったり。

 

43. ミックスナッツ/ Official 髭男dism

詞・曲:藤原聡

SPY×FAMILYも見ていません。すみません。

高校の頃の友人に、ヒゲダンが人気になる前からその曲を追っていた人がいて、いざ流行り出したのを見ると慧眼だったんだなぁと思わされました。その人はマカロニえんぴつとかも聴いていた記憶があるので、本当に掘るのがうまかったのだと思います。

実はセカオワとヒゲダンは編成が似ているので、自分にとって親和性の高いバンドであることは間違いありません。特にピアノがいると、ジャズロック寄りの曲が強くなるので、自分の好みにハマるという算段です。

今回はとくみくすによるカバー版を入れました。この人はインフルエンサー的なバズを志向されている歌い手の一人ですが、歌がうまく、尚且つハモリの入れ方が結構綺麗なのでよく聴いています。むしろこういう人の歌を聴いていることに意外性があるのかもしれませんが。あと、こういう歌い手の曲を聴いていると、どういうボカロ曲が流行っているかみたいなところを知ることができるので地味に重宝していました。

 

44. POP STAR/ 平井堅

詞・曲:平井堅
編:亀田誠治

友人と話していた時のこの曲の評は、「ミレービスケットみたいな曲」。すなわち、素朴で安心する曲だということです。知り合いがカラオケで歌っていたのをきっかけに知ったのですが、「どこかで聴いたことがある気がするが聴いたことがない」みたいな言葉がしっくりくる曲だな、と思いました。

平井堅さんのあるあるとして「MVが変」というのがあります。この曲もみんな平井堅さんなんですよね。さすがポップスター。実際こういうベーシックな曲をバシッと出して来れるのですから、ポップスターを名乗るのも納得いくところでしょう。

ちなみにこの曲を知った経緯は、先述したアイドルオタクの知人がカラオケで歌っていたところによります。あの人はかなり音楽のセンスが良く、かなり勉強になりました。逆に自分は、花譜さんから仕入れたアングラな曲やボカロを布教していました。当時は頭が柔らかくフッ軽な時代だったので、ここまで音楽の影響を与え合うことができたのかな、と勝手に想像しています。

 

45. 赤いスイートピー/ 松田聖子

詞:松本隆
曲:呉田軽穂

みなさんご存知、アイドルソングの最高傑作と言える楽曲です。J-POPの中で最も有名な曲の一つと言えるでしょう。

これも『POP STAR』と同じく「素朴な曲」としてこれまで愛されてきたものと思います。最もシンプルなJ-POPというか、基本系というか、そういう美学すら感じます。逆にこの曲をもとに組み立てられてきたという見方もできるのかもしれませんが。

何より自分もパッと歌える、というのがすごいと思います。浸透力が高い。まあパッと歌えてしまったことであのような悲しい事象*18を引き起こしてしまったわけですが……

昔の曲を聴きたいな、という時にスッと取り出すと、「これがいいんだなぁ」と思わされる名曲です。

 

46. ひこうき雲/ 松任谷由実

詞・曲:荒井由美

映画『風立ちぬ』の主題歌として有名ですが、そのために書き下ろされた曲ではなく、リリース自体は1973年だったそうです。1973年!?めちゃくちゃ昔ですね。書き下ろし曲でなかったというのは大学に入ってから、知人*19に聞きました。トリビア

中島みゆきさんと同じく、美しい日本語詞を書く人というイメージですが、そのアプローチはだいぶ違って聞こえます。先に「真に迫る」と書きましたが、荒井由美さんは超然主義、という感じがします。

個人的に昔の歌声の方が好み、と思っています。NHKかどこかの企画で、昔の声をサンプリングして今の松任谷由美さんと歌う、というものがあり、こんなに声って変わるんやなぁと思ったものです。

 

47. どんなときも。/ 槇原敬之

詞・曲:槇原敬之

音楽技法としてのフェードアウトが嫌いです。終わりははっきりして欲しい。

自分は音楽においてかなり形式主義的な部分があります。これはロックなどをよく聴く中で育まれたものだと思いますが、いわゆる「J-POP」的な形式、すなわちAメロ→Bメロ→サビ→大サビ→アウトロ……みたいな形式を好みます。
また、初めと終わりはしっかり作って欲しい、すなわちイントロは欲しい、アウトロはきちっと止めて欲しい、そういう思想を持っています。もちろんそうでない曲が悪い曲ではないのですが、形式と違うなら、違うなりの理由が欲しいな、と思う派閥です。

この曲はフェードアウトで終わります。これくらいの時代の曲はやたらフェードアウトが多用されていて個人的にあんまり好きではないのですが、この曲は例外中の例外ということで。
フェードアウトに理由があるというよりも、純粋に曲の他の部分が良すぎて許せる、というパターンです。

温かみのあるメロディと歌詞、という点で言うと槇原敬之さんの右に出るものはいないでしょう。純粋に「よい歌詞」と言われれば、パッと出てくるのはこの人のイメージがあります。『POP STAR(参照:44)』では「ミレービスケット」という表現を使っていましたが、その極致みたいな人だと思います。体に良さそう。

 

48. 逆夢/ King Gnu

詞・曲:常田大希

King Gnuに出会ったのは高校生の頃、『Prayer X』という曲を聴いたのがきっかけでした。当時はMaison Book Girlみたいな感じ、前衛的で「藝術的」な感じのバンドと認識していました。『白日』が出る前だったのでそんなに流行ってもおらず「はえー」と言う感じで見ていたのを覚えています。

白日』で大ヒットし、「呪術廻戦」のテーマソングを歴任し、その名が轟くようになりました。VaundyとかPEOPLE1とかも同じような道を辿っていったような気がします。令和最初期のヒットメーカーといえばこの3組という印象です。

呪術廻戦は大学3年の夏に、精神に異常をきたしながら一気見しました。『青のすみか』『SPECIALZ』等々いい曲はたくさんあり、御多分に洩れず「曲が良いアニメは自分に合う」の一員となったわけですが、自分が気に入ったのは劇場版のエンディングのこの曲でした。
『Prayer X』や『白日』のような、前衛的で古典的な美しさを持つ楽曲が、King Gnuの十八番と認識している節があり、『逆夢』はその系譜を忠実になぞっている作品の一つです。上に形式主義についても書きましたが、歌先でイントロにかけて盛り上げていく感じとか、ドラムの四つ打ちの感じとか、このリストでは珍しくミディアムテンポな楽曲ですが、好きな部分がクリアに存在する一曲です。

 

49. ルバート/ ヨルシカ

詞・曲:n-buna

大学2〜3年の頃にヨルシカを気に入るようになりました。もちろん曲自体は高校生時分から聴いていたのですが、当時の曲調があまり合わず、そこまで聴かずに フェードアウトしました。当時のファストな心理表現よりも、最近寄りの繊細な日本語表現を使うヨルシカの方が好き、というイメージです。このブログには、ヨルシカをなぞって行われた目黒川でのお花見の顛末も載せておりますので、ぜひ併せてご一読ください。

ヨルシカはn-bunaさんとsuisさんの才能が見事に噛み合ったバンドです。n-bunaさんは上に書いたような繊細な日本語表現を武器としながら、音作りは大味・シンプルであることが結構多いイメージです。後で詳しく書くと思いますが、「ミニマム・ポップス」という概念はこのあたりから生まれていると思います。
『ルバート』も、コンセプト・音作りは結構シンプルな曲で、それでいてグルーブ感が効果的に発揮されている楽曲でもあります。

大味でありながら、繊細な表現を可能にしているのは、suisさんの歌唱能力の成せる技でもあります。この曲ではラスサビの「…?」の表現とか。suisさんの歌は「歌唱」にとどまらず「音声表現」というのが適切でしょう。声でできる表現を最大限出し切って、一つの音楽を成立させているのはすごいことです。

 

50. 陰謀論/ tofubeats

詞・曲:tofubeats

tofubeatsさんといえば『水星』。『今夜はブギー・バック(参照:35)』と同様、シティ・ポップの名作とされています。自分はこういうディスコ・クラブ・HIPHOP系の楽曲はあまり聴かないのですが、tofubeatsさんはこれらのジャンルの楽曲をメロディアスなポップスにうまく投影されているため、違和感なく聴くことができています。

この曲は大学の知人*20に教えてもらいました。こう見ると本当にその知人からの音楽的影響がでかいですね。歌詞はかなり少なく、EDMとして愉しむ作品ですが、それでも「良い曲だ」と思えた作品でした。こういう楽曲は単調になりがちなので、いかにフックを作るのかというところが問題になるのでしょうが、tofubeatsさんのそれが自分に合っている、ということだと思います。新しいジャンルを切り開いてくれる、自分のスタイルに合ったアーティストさんは本当に貴重です。

 

51. ミュージック/ サカナクション

詞・曲:山口一郎
編:サカナクション

サカナクションのことをちゃんと聴くようになったのは大学4年くらいと、かなり遅いスタートでした。当時音楽をよく一緒に聴いている友人がおり*21、その友人がサカナクションをめちゃくちゃ推していたのですが、有名どころすらおぼつかないくらいの状態で大学生活を進めることになっていました。

そろそろ聴くか……と重い腰を上げて聴くに至ったのが『ミュージック』でした。ある意味ではサカナクションで一番有名な曲、と言えるのかもしれません。自分はこの曲にまんまとハマり、100選に入れるまでになります。

この曲の魅力はやはり「カタルシス」でしょう。先ほどEDMは単調になりがち、と書きましたが、『ミュージック』はカタルシスでそれを打破しています。形式としては『HEART BEAT(参照:31)』に近いでしょうか。アングラなEDMの要素と、J-POPらしいフレーズを同様に高いレベルで掛け合わせた、一種の奇跡みたいな曲であると思います。「ミュージック」を名乗るのも頷ける一曲でしょう。

 

52. 透明人間/ Noah

曲:亀田誠治
詞:椎名林檎
編:東京事変

東京事変は『群青日和』も入れてしまっているのですが、このカバーが狂おしいほど好きなので泣きのもう一曲。椎名林檎名義の楽曲を入れていないので許してくださいませ。

大学の同期でカラオケに良くいく友人がいるのですが、彼の選曲がかなり自分の好みに近く、聴き出したのがこの楽曲です。『透明人間』はYouTubeにMVが上がっていないので、適当なカバーを聴いてみたのですが、それが大当たりだった、という顛末でした。
のちに原曲から結構アレンジが入っていることを知るのですが、このアレンジがめちゃくちゃ良い。確かに元々ドラムンベース的な要素がないではないのですが、そこをくっきり出して質の高いEDMトラックに変えていることにびっくりしました。

ちなみにこのNoahさんは『ミュージック』のアレンジもされており、自分がサカナクションに手を出す一因にもなります。元々ボカロを聴いていたためにこの辺のジャンルとは親和性が高いはずなのですが、人間のカバーからアプローチをした、というのはちょっと変わった因果なのかもしれませんね。

 

53. ナタリー/ さよならポニーテール

詞・曲:ふっくん

サカナクション大好き友人から教えてもらったのがこの「さよならポニーテール」というユニットです。その素性は謎に包まれています。ネット系のアーティストは色々と情報を隠していることが多いですが、ここまで謎が多く、かつ独立性が高いのも珍しい。知っている人からの曲提供なども全然なかったので、新鮮な気持ちで音楽を聴いた覚えがあります。

中でも自分の琴線に触れたのがこの曲。2011年の曲と、少し前の曲で、当時らしいノスタルジアを有しながらも、今聴いても全く見劣りしない洗練された楽曲になっています。『赤いスイートピー(参照:45)』『どんなときも。(参照:47)』にも共通する、J-POPに典型的なこの種のノスタルジアを、自分は結構愛しているのだと思います。

しかし全体的に音の進め方のカッコいいこと。コード進行の知識が全くないことが悔やまれます。この手の進行ってよく聴くはずなのですが、こうやって改めて真っ直ぐお出しされると、とてもカッコよく響きますね。「典型」の良さがここにも現れています。

 

54. 空と虚/ ササノマリイ

詞・曲:ササノマリイ

ササノマリイさん、ないしはボカロPとしてのねこぼーろさんの音楽は、これまでの人生の中で何度も登場してきました。ボカロ音楽としては、有名な『自傷無色』もそうですが、カバーアルバムに収録されていた『弾けないギターを片手に。』という曲をよく聴いていました。

私立恵比寿中学の楽曲も編曲しており*22、その編曲にササノマリイ節がとんでもなく効いていたことにもびっくりしました。仲間と作ったバンドであるDiosの楽曲にも少し触れ、そしてソロ活動にまで流れ着きました。あまり意識はしていなかったですが、人生の節目節目に立ち現れているので、印象に残っているクリエイターさんの一人です。

ササノマリイさんの音楽は、ミニマムな電子音が特徴的です。編曲でもその才は遺憾なく発揮されているのですが、ソロ曲でこういうカッコいい使い方をしている曲に出会ったときは嬉しい気持ちになりました。こういう優しい音楽も、もっと増えてほしいですね。

 

55. 次のページ/ 帰りの会

詞・曲:やまもとこうだい

最近は、ボカロPが組んだユニットや、歌い手出身のアーティストが、インディーズバンドと渾然一体となり、インターネットの海に多数漂っています。こういうアーティストの出自は、ボカロを代表的にかなり電子音楽に寄っているはずなのですが、最近はこういう「バンドやろう」みたいなユニットが多くて、個人的には嬉しいです。

このユニットは、歌い手の春原染さん由来で知りました。この方の素晴らしいカバーは、ボカロ編の最後の方で登場します。
インディーズバンドの魅力の一つは、この「やさぐれ感」にあると思います。曲がカッコいいことも重要で、この曲はそれもクリアしているのですが、厭世的なボーカルの声と、インディーズバンドならではのサウンドがマッチして、良い雰囲気を醸成していると感じます。

最近はボカロも前衛的な表現にフォーカスされてきている中で、こういうバンドサウンドを作ってくれるクリエイターは本当にありがたい存在だと思います。

 

56. Sparkle/ イルミネーションスターズ・ノクチル

曲:yoss(CoWRITE)・いのる(CoWRITE)
詞:秋浦智裕
編:清水"カルロス"宥人

2025年の音楽的一大事として、「シャニマスの導入」が挙げられます。高校時代からの友人がシャニマスに急にどハマりし、その勧誘(布教)を受けてシャニマスの曲を聴くようになりました*23

アイドルソングは最近あまり聴いていませんでしたし*24、とくにこういうソシャゲ的なアイドルソングはあまり好きではない、と思っていました。しかしそれは杞憂で、特にシャニマスは楽曲の振れ幅が大きく、自分が好むタイプの曲もいろいろ見つかりました。
特にどハマりしたのがこの曲です。2025年は、前衛ボカロの波に呑まれて、ロックが好きだという自分に原点回帰した時期で、そんな自分にドンピシャな曲であり、『ナタリー(参照:53)』のような退廃感に一気に引き込まれました。というかシャニマスってこんなオルタナティブ・ロックをやるんだ、という感動が来ました。すげえ。

形式もしっかりしていて、ギターソロもカッコよく、MVも良い、特にキャラクターの表情が良すぎる、という、奇跡の三本柱を達成し、現在シャニマス楽曲の中で圧倒的トップで好きな曲です。

ボカロ編

音楽を「聴く」という意識が芽生えたのは、UNISON SQUARE GARDENと、ボカロによるものが大きいです。特に、「聴いた音楽を収集する」みたいなコンセプトは、ボカロが元で生まれました。2018年以降、気に入った音楽を入れるプレイリスト*25を年毎に作っており、そこを見れば聴いていた曲を思い出して懐かしい気持ちに浸ることができます。

注:以下特に表記のない限り、作詞・作曲はアーティストとしてクレジットされているボカロPさんが担当しています。

アンセム

57. Tell Your World/ livetune

詞・曲:kz

ここから3曲は、ボカロにおける「アンセム」的立ち位置の楽曲を取り上げます。無論。自分としても愛してやまない曲です。

『Tell Your World』は、Google ChromeのCMソングとして書き下ろされた楽曲ですが、今でもボカロというカルチャーを代表する楽曲として親しまれています。特に「形のない気持ち忘れないように/決まりきったレイアウトを消した」という冒頭の歌詞は、ボカロのみならず、音楽という芸術そのものを表現したような歌詞でしょう。
一方その曲調も、4つ打ちエレクトロサウンドという、先進的な姿をしています。kzことlivetuneさん*26の十八番とも言えるこのサウンドは、ボカロを代表するサウンドの一つとして現在でも多数の楽曲が作られています。

ボカロを聴けば聴くほど、この曲の凄さがわかってきて、より好きになっていきます。まさにボカロを代表するにふさわしい名曲と言えるでしょう。

 

58. ray/ BUMP OF CHICKEN feat. 初音ミク

詞・曲:Motoo Fujiwara

ボカロと人が共に歌う、という楽曲は枚挙にいとまがありませんが、その代表作といえばやはり『ray』でしょう。まだボカロがアングラな雰囲気を纏っていた頃に、国民的バンドが共作する、という非常にセンセーショナルな出来事でありましたし、その楽曲も非常にクオリティの高いものだったからです。

初音ミクを一人のシンガーとして対等に扱う、というのは、楽曲を制作するという立場のボカロPにはできない視点ですが、このように本当の「歌手」と並び立つことでその構図が実現するという、地味に珍しい状況でもあります。ライブ映像を見れば特に顕著です。自分はライブで初音ミクが出てくる瞬間に藤原さんがスッと指をさすところがめちゃくちゃ好きでよくライブを見ていました。

形式論にとどまらず、その歌詞も素晴らしいものです。「理想で作った道を 現実が塗り替えていくよ/思い出はその軌跡の上で 輝きになって残っている」という部分が特に好きですね。アンセムと呼べる楽曲は、楽曲としてのクオリティはもちろん、その歌詞が一般性を持って受け入れられやすいというところも重要なのかなと思っています。

 

59. echo/ higma

この曲は、現代版『Tell Your World』だと勝手に思っています。もっと流行ってほしい。

自分は音楽のことを一種の祈りだと考えています。その考えはこの曲に影響を受けており、「祈るように繋いだ言葉は/今日もまた夜の隙間に溶けていく」という歌詞に由来するものです。『Tell Your World』は音楽について抽象的に描いている一方、この楽曲は音楽に対する心象みたいなものを描き出していて、そこが良いなと思わされました。自分が音楽を聴くという営みの中でも、間違いなくこの楽曲は大きな影響を与えてくれたと思います*27

higmaさんは、livetuneさんと同じくエレクトロサウンドを操る方ですが、最近のDJトレンドを背景に、より先鋭的な楽曲を書かれる方です。どちらもその時代におけるボカロトレンドの最先端を走っているわけですが、『echo』は重めのギターソロがあるなど、より音楽に対して融合的です。時代は変われど、「音楽」に対する言をボカロから紡いでいくというのは、実は結構重要なことなんじゃないかなと僕は思っています。

〜中学・高校生編

60. 初音ミクの消失 -劇場版- /cosMo@暴走P

自分はかつてボカロアンチでした。かつて、というのは小学校5年生くらいまでのことです。当時小学校の同期にボカロのオタクがおり、校内放送でボカロを流していました*28。その楽曲がいわゆる電波系的な楽曲で、自分には全くそれが合わず、嫌っているという状態でした。
学年が上がり、そのボカロオタクと仲良くなることで、その印象はやや緩和されました。特にその人々にボカロ曲を聴かされる、ということはなかったのですが、ゲーム「太鼓の達人」でやっと、自分の肌に合うボカロ曲が現れます。

この曲も大概と言えば大概です。曲の中身というよりかは、イントロのピアノソロがめちゃくちゃ好きでした。同じゲームに収録されていた『千本桜』と『マトリョシカ』、以上の3曲が、自分が当時好んで聴いていたボカロ曲と言えます。
なおこれ以後は、セカオワやユニゾンに傾倒していたため、「ボカロを聴く」ということは全く遡上に上がらないまま時が過ぎていきます。

 

61. 退紅トレイン /バルーン

詞・曲:有機

ボカロを「まともに」聴き出したきっかけは、バルーンの『シャルル』がYouTubeのおすすめに上がってきたことでした。この楽曲は当時べらぼうに流行っており、かなり最近まで「カラオケでよく歌われるボカロ曲」の1位を維持していたという化け物曲。それまでボカロには全く手をつけていなかったYouTubeアカウントにすら、レコメンドされるくらいはやっていたと言えます。

詳細な歴史的経緯は割愛しますが、当時はバンドサウンドがボカロの界隈に持ち込まれた頃で、その音楽にまんまとハマった結果、現在の生活に至ります。この人がいなければ自分はボカロオタクになることはなかったでしょう。

そのバルーンさんと仲が良かったのが、有機酸さんというボカロPです。バルーンさんの楽曲を聴き始めてから、これまたおすすめ欄に出現することになるのですが、音楽性は全く異なりつつ、そのおしゃれなサウンドに惹かれ、一気に聴く曲の幅が広がったというか、「ボカロ曲を聴く」ということへのハードルが下がりました。

どうしてこうもおすすめ欄に連合して流れてくるかというと、当時二人は「facsimile」というコラボアルバムを作っていたからなのでした。そしてこのアルバムが、人生で初めて手に入れたボカロのアルバム音源となりました*29

「facsimile」の中で一番気に入っているのがこの曲。有機酸さんの『退紅トレイン』をバルーンさんがアレンジしたバージョンです。音楽的にはかなり異なる二人ですが、このアレンジが綺麗にハマっている。flowerの退廃的な声とか、バンドの終止とか、非常にカッコいいアレンジに仕上がっていて大好きです。

 

62. 命ばっかり/ ぬゆり

もう一曲の恩人を挙げるとすればこの楽曲。この曲が自分にハマらなければさっさとボカロからフェードアウトしていただろう、という時ごろの作品です。この楽曲はあまりにもJ-POPで、もはや「ボカロってこんなにポップスしてていいんだ!」とすら思った覚えがあります。素直に感動しました。

ぬゆりさんはLanndoという名義で、自分の声や他のシンガーに歌ってもらう活動もされていますが、2023年ごろにボカロ界に戻ってきてくれました*30。一度ボカロを離れて、ボカロに戻ってきてくれる例自体が珍しい上に、Lanndo名義で磨いたサウンドを駆使し、より音楽が進化しているという、一番良い形での復帰であったことに賛辞を送りたいです。今のぬゆりさんの曲もめちゃくちゃ好きですね。

『命ばっかり』自体もじわっと人気がある曲だったのですが、プロセカ*31に収録されてから一気に人気が爆発したような気がします。最近になってボカコレ*32リミックスもされており、現代でも色褪せない名曲と言えるでしょう。

 

63. 仮定した夏/はるまきごはん

自分の敬愛するボカロPの一人*33。北海道出身で、まさに北海道の大きな大地のようなやさしく懐の広い楽曲、宇宙や夢を題材にしたSFチックな楽曲、心理的機微を描いた鋭い楽曲など、幅広い楽曲を扱っています。

普段は優しいサウンドをよく用いられており、流行っている楽曲にはもちろんそういう楽曲が多く入っているのですが、自分はアルバムに毎回一曲ぐらい収録されている、息の詰まるようなロックナンバーが大好きです。もはやこのためにアルバムを買っているまであります(過言)。そのアーティストが普段見せない表情を見せてくれるって、なんかいいじゃないですか……

この楽曲は息の詰まるロック楽曲の最たるものと言って良いでしょう。緊張感のあるギターのサウンドに、初音ミクの鋭いボーカルがよく映えています。こういう意味でロックと初音ミクの相性ってめちゃくちゃいいと思うんですよね。普段の曲調とはしっかり異なるのですが、これもこれではるまきごはんさんらしいというか、真摯な心理描写って感じがしてめちゃくちゃ好きです。

こういう楽曲の幅広さや、クオリティの高さから、「初心者に初めに薦めるべきボカロP」はこの人かなと思っています。アルバム一枚聴けばなんか好きな曲入っとるやろ、という感じです。自分からしても、アルバムで満足させてくれるという信頼感が一番高いボカロPでもあります。

 

64. サリシノハラ/みきとP

この曲は意外と知っている人が多いイメージがあります。みきとPさんの曲といえば『ロキ』が有名なはずなのですが、なんかこの曲でも話が通ることがあります。ありがたいことです。

みきとPさんは、『ロキ』や『少女レイ』がバズったことから、ポップス的なイメージがつきやすいのかもしれませんが、昔からロックをしっかりとやってきたイメージのあるボカロPです。この曲も、自分がかなり好みな擦れたロックが体現されているという意味で入れました。実は『ロキ』とか『少女レイ』とか有名な曲も、かなり擦れたロックではあり、一貫しているといえばそうなのかもしれません。

 

65. 帝国少女/Sou

詞・曲:R Sound Design

「歌ってみた」についての論争は昔から結構ありました。「カバー動画ばっか聴いているのはどうなのか」とか「カバー動画が伸びているのはどうなのか」とか、そういう意見はボカロを聴いている以上、避けては通れない道です。
自分は、この曲に当たったことで、カバーに対する抵抗感が薄れた気がします。自分の場合は結果として、聴く曲の幅がこれによって広がったので、音楽を聴くという目的においては、良いことだったなと思います。

カバーについては、「正解の人」みたいな存在があると思っていて、楽曲ごとに合う声質が、自分の中でかなりはっきり定まっているように感じます。この曲においては、浮遊感のあるSouさんの声が、正解だと思います。
『帝国少女』自体も、上の方にあげた『はじめての、東京。』と同様に、東京への憧れを増幅させた楽曲だったと思います。東京に来てからやたら夜景巡りをしていた*34のも、この楽曲の影響と言えると思います。そう考えると、自分の進路や生活にかなり直接的に影響している数少ない楽曲の一つと言えるのでしょう。

 

66. 曖昧劣情Lover/ ダズビー

詞・曲:koyori (電ポルP)

koyoriさんの楽曲は、一貫してポップ、だと思っています。ボカロ楽曲は、やはりアングラなものではあるので、ずっとポップス的な楽曲を作る方は珍しいです。『命ばっかり』然り、曲単位ではそういうことがあっても、です。なので、koyoriさんは安定して楽曲が好きなボカロPと言えると思います。

「歌ってみた」の文脈で言えば、「Resonance」というアルバムが自分にとって大きな存在です。これはkoyoriさんの歌い手トリビュートアルバム、すなわちカバーアルバムで、「ボカロPさんってこういうのもやるんだ」という気持ちになったのを覚えています*35。ボカロPと歌い手の関係に関する文脈を新しく増やすことができたという思い出です。

ダズビーさんは、このアルバムにも参加されている歌い手さんですが、知ったのはもう少し前のことだった気がします。声が好きな歌い手さんであり、ボカロを聴き始めた当時くらいからずっとカバーを聴いています。爽やかな声ながらこういう腐った感じの曲にも合うのがずるいですよね。

この曲は自分がカラオケでよく歌う曲でもあります。声が出しやすい。

 

67. グロウフライ/まじ娘

詞・曲:buzzG

ボカロを聴き始めてすぐ、「CONTRAST」というアルバムが出ました。これは、歌い手さん主催のアルバムで、既存曲だけでなく書き下ろし曲も入っているものだったのですが、そういう文化もあるんやなぁという勉強になりました。この辺のお勉強時代が、2017年だったように思えます。

『グロウフライ』は書き下ろしの中の一曲で、非ボカロ部門に含めても良かったのかもしれませんが、ボカロ版も上がっているのでこちらに入れさせてもらいました。この曲に惚れて上記アルバムを買ったと言っても過言ではありません。何気に『サリシノハラ』や『独りんぼエンヴィー』など、その後も長く聴くことになる曲がいろいろ入っていました。

歌い手さんをきっかけに曲を知ったり、素敵だなと思った曲が歌い手さんへの書き下ろしだったり、そういう意味でもボカロと歌い手との関係は切っても切れないものだと自分は思っています。自分が楽曲を知るための素地は、こうやって整っていったのでした。

 

68. 失敗作少女/稲葉曇

詞・曲:かいりきベア

もう一つ初期に印象に残ったアルバムをあげておきましょう。かいりきベアさんの「ベノマ」です。これは、数人のボカロPがかいりきベアさんの楽曲をアレンジしたトリビュートアルバムで、その後好んで聴くボカロPも多数収録されているアルバムでした。

アレンジのトリビュートアルバムというのは珍しいですが、これもかなり良いものです。ボカロP毎の個性を、同じ人が書いた曲のアレンジで聴くのは、ある程度「規格化」した形で観測することになるからです。個性を知る、という意味ではこれ以上のアルバムはないと思います。特に「ベノマ」は、楽曲が良い上に、集まったボカロPの方々の個性も強く、腕のある方だったので、全体としてとても良いアルバムに仕上がっていました。これも初期の頃に触れられて良かったコンテンツですね。
アルバム自体は今も売っているのをたまに見かけるくらい流通しているものなので、これも初心者の方にかなり薦めやすいアルバムと言えるかもしれません。

ツミキさんのアレンジとか、大沼パセリさんのアレンジとか、ピノキオピーさんのアレンジとかも好きなのですが、稲葉曇ロックも愛しているよ、という意味でこの曲を挙げさせていただきました。元々はかなり強めのロックなのですが、稲葉曇さんの燻んだ音作りにこれがまあマッチしており、とんでもなくカッコいいアレンジに昇華されています。なおかつ、はるまきごはんさん同様、普段ロックサウンドをあまり使われていない人のロック楽曲だったので、新鮮な良さがありました。

 

69. 君は大嫌いな8月に、涕のように落ちてゆく。/しじまかいせ

2019年以降、加速度的にボカロ曲を掘り出すようになりました、この「ディグ」という概念はボカロ音楽特有のものかもしれません。「ボカロ」という共通点だけで、いろいろなジャンルの名曲に出会えることは、ボカロを聴いていて良かったと思える点の一つです。しかしそのためには、能動的に音楽を聴きに行く必要があります。その中で特に気に入った楽曲を、ここからいくつか紹介したいと思います。

しじまかいせさんは、当時としてはかなり前衛的な楽曲ながら、バンドサウンドを駆使して音を作られているという珍しいスタイルのボカロPです。現在は引退されていますが、ボカロPのレジェンドの一人として名前が上がることがままある方でもあります。絵も上手い。
この楽曲は非常に長いのですが、その中にボカロを使ったさまざまな音声表現が用いられています。有機酸さんと同じく、芸術的なボカロサウンドを追求されている方で、この曲では高音の表現などが特に光っています。
そうでなくても曲としてめちゃくちゃ良い、サウンドもそうですし、歌詞もそうです。ボカロの中でも「聴かせる」楽曲の一つで、クセは強いですがボカロにハマるのであれば必聴と言える楽曲の一つだと思います。

 

70. サヨナラ深夜ちゃん/しゃべる帽子

しゃべる帽子さんの引退作。引退作でこれに勝るものはないと思います。歌詞の全てが引退という文脈に沿って殴ってくる、そういう作品です。

個人的にこういう昏い感じのEDMが結構好きだったので、引退されるのはとても惜しかった。それだけに、この楽曲に対する感慨も一入でした。その後NARUMI HELVETICAさんみたいな、その路線を継承してくれるクリエイターも出てきたのは救いでしたが。

「私の歌じゃなくても良い歌があるから/それを頼りに笑顔絶やさないで」

という歌詞が特に、自分の別れの美学みたいなところと非常によく噛み合っていて、グッとくるものがありました。当時はかなり病んでいて、こういう別れに対する薄らとした憧れみたいなものすらありました。

 

71. アベリアに代わる何かを/msy

『命ばっかり』から一歩踏み込んで、「こんなまっすぐなロックも良いのか!」と思った作品です。カバーが元で知った楽曲ですが、原曲もとてつもなく良いのでそちらで。
こういうインディーズ系のロックというのは、実はこれくらいの時代まではとても少なかった印象です。「ボカロを人間の音楽っぽくする」みたいなところは何度も試みられていましたが、バンド音楽に関しては『シャルル』まで一種の盲点だったきらいはあります。

この曲を聴いた当時、非常に仲が良かった友人との関係が拗れており、明るい曲ではありながらすごく屈折した気持ちで聴いていた覚えがあります。MVも雨が描写されているので、楽曲としても底なしの明るさを表現していたわけではないはずで、その辺りが自分の当時の気持ちとよく共鳴してしまったのだろうと思います。楽曲も好きで、自分の当時の心理状態にも寄り添った、二重の意味で大事な作品です。

 

72.  LIFE BAUTE/水槽

詞・曲:煮ル果実

2019年前後は自分が一番「病んでいた」時期だと思います。今考えてもあの時の心理状態は異常でした。そしてそういう時こそ、音楽が心によく響くものですから、印象深い楽曲も多々あることになります。この楽曲はその要素が典型的によく現れた曲でしょう。

この曲の特殊性は、「アルバム曲のカバー」という点にあります。一般にボカロのカバーは、動画サイトにMVが上がっているものを中心に行われます。そのような楽曲はoff vocal*36もよく整備されており、カバーのハードルが低いからです。一方、アルバムにしか収録されていない楽曲は、オケも公開されていないことが多いですから、カバーされることは稀です。なんなら一種の禁忌みたいなところがあります*37。きちんと許可を取ってカバーを成立さえている上、アレンジもかみがかっているのだから、見事なものです。

水槽さんは当時気に入ってよく聴いていた歌い手さんの一人です。ダウナーで中性的な声が特徴的ですが、自分はそういう声が好きなんだなと自覚するきっかけになりました。ただカバーするだけでなく、表現技法/歌い方も結構凝っていたので、めちゃくちゃハマるカバーもいろいろあったのが印象的でした。最近はトラックメイカーとしても活躍され、かなり名が売れた気がします。めでたい。

煮ル果実さんも当時から腐った良い雰囲気の楽曲を作られる方で、プロセカの楽曲提供あたりからめきめきと有名になっていったイメージがあります。DECO*27さんに詰められたエピソード*38Twitterでバズったため、ボカロを知らない人にもなぜか話が通じるという特異な方でもあります。

 

73. ローリンガール/wowaka

ボカロについて話す上で、wowakaさんの存在は欠かせません。さまざまなヒットソングを輩出したカリスマで、MVでの表現が発達したボカロ音楽に対して、白黒の一枚絵MVという個性を貫き通し、若くして亡くなってしまったという伝説的なボカロPだからです。

自分もボカロを聴く上で、wowakaさんの楽曲を何曲も聴いてきました。wowakaさんが率いていたバンド「ヒトリエ」も、自分が辿ってきたロックという文脈を考えるとシナジーがあるべきものなのですが、自分としてはwowakaさんのボカロ曲が好きだったイメージがあります。

ローリンガール』は、のちに詳しく述べる「2023マジカルミライ」で演奏された楽曲です。この曲がはじまった時に会場がすごい空気になったのを今でも覚えていますし、実際それだけの威力を持った名曲でもあると思います。手前味噌な感想ですが、wowakaさんの楽曲が今でも愛され、こうやってライブでも歌い継がれている、というのはすごく胸を打つ光景でした。

 

74. 垂直落下/傘村トータ

傘村トータさんは、ボカロシーンの中でもかなり特殊な立ち位置のボカロPです。その音楽的特徴は、落ち着いたピアノメインの楽曲、既存のジャンルで言うと合唱曲に近いイメージのものを多く書かれています。またその心理表現が巧みで人に寄り添う力があり、ボカロの他の楽曲とテイストは全く異なっていながら、コアなファンを多く持つボカロPの一人でもあります。

合唱、あるいはハモという要素を考えたときに、双子である鏡音リン・レンをボーカルに据えるというのはある意味自然な発想だとは思いますが、このクオリティのものを出されてしまっては手も足も出ないだろう、というくらいの作品だと思います。シンプルなオケで、ハモりをしっかり前面に押し出して、それでなお魅力的に聞こえるという、地力の強さが遺憾なく発揮された作品です。裏返せば、シンプルなオケだからこそ、このハモりが光っているという言い方もできるかもしれません。

 

75. スイサイ/アンブレラ/ロクガツ/ドライフラワ/ツミキ

さて、ついに敬愛するボカロP最後の一角、ツミキさんの登場です。ボカロックのレジェンドとも言うべき人で、wowakaさんをはじめとした、これまでのボカロックへのリスペクトを込めながら、リリースカットピアノをぶん回すソロがふんだんに効いた、重厚なボカロックを製作されている方です。この人の音楽はとにかくカッコいい、その一言に尽きます。

ツミキさんはリリースされている曲数が少なく、円盤が出るのもかなり遅かったように思えます。圧倒的円盤派だった自分にとってこれは非常にもどかしいことでした。しかし2020年、満を辞してアルバム「SAKKAC CRAFT」をリリースします。
そしてこのタイミングは、ちょうど自分が受験を終える時期に重なりました。幸いなことに第一志望から合格をいただくわけですが、それとほぼ同時に、このCDは自分の手にもたらされることになりました。よって、ツミキさんに関する思い出はかなり「喜」であり、思い出深い出来事の一つを形成することになったのです。

今回は中でも重たい一曲をチョイスしました。ツミキロックの頂点は、まさにこの場所にあります。本人も歌が上手いってカッコいい。変拍子がカッコいい。ラスサビの展開がカッコいい。そのカッコよさに圧倒される、素晴らしい一曲です。

大学生編

76. ロミオとシンデレラ/ 日野森雫

詞・曲:doriko

大学に入り、プロセカを始めました。プロセカ自体はもう少し前からリリースされていたのですが、受験生であったことから手を出せず、合格が決まってやっとスタートすることとなりました。

プロセカは書き下ろし、公募曲、既存曲のバランスが良く、さまざまな楽曲をザッピングできるという点で非常に良いコンテンツだと思っています。ストーリーや書き下ろし曲目当てで来た人も、古典的名曲を知ることができますし、自分のようにボカロの一コンテンツとして楽しんでいる人は、公募曲などを通して、まだ知らなかった才能に出会うことができます。

また、キャラクターによる歌唱もその魅力の一つです。特に近年は各声優さんがメキメキと力をつけており、クオリティの高い楽曲カバーを提供してくれています。とりあえずプロセカのカバーにアクセスしておけば良い、と言えるくらいです。

中でも、日野森雫は声がめちゃくちゃ良い。自分はアニメ等における「推し」を声で作るタイプですが*39、日野森雫の声は一歩抜きん出て好みです。
今でも覚えていますが、『天使のクローバー』という初期の書き下ろし曲における、「不器用な愛でも」という部分の歌唱がブッ刺さりました。プロセカの当該ユニットを代表するような一曲でもあるので、是非一度聞いてみてください。

『ロミオとシンデレラ』は、ボカロの古典的名作で、2009年リリースながら、今でも色褪せない芯の通ったロックナンバーです。歌詞においても、ラスサビでさまざまな童話の要素を繋いで制作するなど、面白い楽曲に仕上がっています。この楽曲の日野森雫カバーは、プロセカカバー界の最高傑作であると断言できます。是非そのお声を浴び、狂わされてください。

 

77. 炉心融解/ EMA

詞・曲:iroha

プロセカ収録で話題になった古典曲といえばこれでしょう。これを機にYouTubeに公式MVが上がり、カバーする人も増えたように思います。今思うとかなり時代を先取りしていたというか、2020年代のボカロシーンにむしろ合うような楽曲であるように聴こえます。

大学に入ってできたボカロを聴く友人*40がカラオケでたまに歌っており、「ええなー」と思って聴いておりました。本来であればその歌を載せたいところですがそうもいかないので、EMAさんのカバーを。
この方も中性的な声をお持ちな方で、ボカロPのMisumiさんと組んだユニット「DUSTCELL」と合わせ、昔からよく聴いている歌い手さんです。

 

78. アリスのマジカルハッピーワールド/ 夏山よつぎ

東京に住まうことで行きやすくなるもの、それはイベントです。関西圏に住んでいたので、ライブ等にはちょくちょくいける環境ではあったのですが、ボカロのCD即売会についてはそうはいかない。例えば、ボカロで最も大きい即売会であるところの「The VOCALOID M@STER」は、東京でしか開催されていないのです。

よって、上記ボカロを聴く友人と連れ立ち、ボーマスに参戦することとしました。そしてその際に初めて手渡しでCDを購入させていただいたボカロPが夏山よつぎさんです。当時のことはよく覚えています。ボカロ用のTwitterアカウントを有していなかったので、大学用のアカウントでDMをさせてもらったこと。CDを手渡ししていただいた時に「かわいいハンドルネームですね」と誉めていただいたこと、行きしなに買ったコアラのマーチを差し入れしたこと、などなど……それから何度か即売会に参加し、直接CDを購入することがありましたが、やはり手渡しでCDをいただくというのはいい経験ですね。その一つ一つが思い出となって残っています。

夏山よつぎさんは、エレクトロスウィングというジャンルをボカロで知ったきっかけでもありました。ゲーム音楽等々でそういうのが先に流行っていたそうなのですが、自分はボカロ由来での受容でしたね。特にこの曲は、がっつりジャズ、がっつりボカロック、という塩梅が自分にとって絶妙で、長いこと聴いている曲です。

 

79. Snow Song Show/ Ado

曲:sasakure.UK
詞:DECO*27
編:sasakure.UK・DECO*27

『雲外憧憬』と同様、クリスマス期に聴いていた思い出の曲です。『雲外憧憬』はその頃にリリースされただけなのですが、こっちはちゃんとクリスマスの曲なのでセーフ。

この曲については、『39』というsasakureさんとDECO*27さんのコラボ曲が下敷きにあり、それの続編的な曲なので、聴く際は前編から聴くと良いと思います。初音ミク「39」と、"Thank You"の掛け合わせは、DECO*27さんが多用しているイメージがあったのですが、ここにルーツがあるんだ、ということはこの辺りに知った覚えがあります。何なら『39』はプロセカに実装されてから真面目に聴いたので、この辺りの古典の履修は結構遅かったですね。

そしてこれはAdoさんのカバー。Adoさんはとにかく同い年の星、というイメージです。ギリギリ歌い手をされていた頃から知っているので古参といえば古参なのでしょうか。デビュー作には度肝を抜かれましたが、カバーのクオリティは元から高かったので、後々歌唱力でシーンをねじ伏せていく様は「さもありなんだなぁ」と思って見ていました。歌が上手いのはもちろんのことですが、「必要とされている歌い方」をきっちりお出しできているのがAdoさんの強みだと思っています。今でも歌ってみたを投稿してくれているのが嬉しいね。

 

80. キメラ/ DECO*27

DECO*27さんは長年にわたってヒット作を量産されており、「DECO*27さんの曲のどれが好きか」というのはよくある論争の種の一つです。

自分としては、2016年前後のロックテイストと、2020年代以降のポップテイストの間に存在する、この楽曲を一推しとしています。「ズームイン!!サタデー」のテーマソングに採用されていたので、多くの人に聞かれているはずなのですが、知名度と好感度が思ったより低いのが残念なところです。

ボカロ曲がテレビで流れる機会はかなり少ないので、聴いた時は「おっ」となりがちですが、特にこの曲についてはよく覚えています。一人で参戦した合宿免許の途中、朝ご飯を食べながら見ていたテレビで流れていたのです。「ほんまに原曲のまま流れとるんやなぁ」という不思議な感慨がありました。
合成音声の楽曲はどうしても癖が強いので、公共の電波に乗せることはやや難がありますが、それでも「乗っていることに違和感を感じない」世の中がいつか来るのでしょうか。

 

81. MOGARI/ かいゑ

同じく合宿免許の途中によく聴いていた曲です。車の免許をとっている途中によくこんな歌詞の曲を聴いていたなと思います。上記の通り合宿免許は一人で行っており、かなり孤独感に苛まれていた二週間だったので、この頃に聴いていた曲は自分にとって大事なお守りみたいな存在でした。

この楽曲は、まず質の高いジャズナンバーと言えます。かなり言葉数は多いですが、ピアノを基調としたお洒落な雰囲気については、この曲の右に出ることはまず難しいのではないかと思います。
もう一点、ボカロの声を「シンセサイザー」として用いている珍しい楽曲でもあります。かいゑさんは合成音声を用いて色々と実験的なことをしている方なのですが、この曲の間奏では、ボカロを楽器として用いる面白い試みをされています。そもそもボカロは「ボーカル・シンセサイザー」とも表現されるので、こういう使い方はむしろ正しいのかもしれません。もっとこういう曲が増えてほしいとも思います。

かいゑさん自体は「十五少女」というユニットの楽曲を制作している縁で知りました。「十五少女」は水槽さんが参加されていたことで知ったので、こうやって自分の知っている人がリンクしていく感覚が楽しいですね。

 

82. 月がない街/ Guiano

まず、この楽曲を収録しているアルバムについて説明する必要があります。これは「雪ミク」というイベントの書き下ろしアルバムで、その年のテーマソングを筆頭に、様々なボカロPの楽曲が収録されたコンピレーションです。このアルバムでのテーマソングは、はるまきごはんさんの『ぽかぽかの星』。北海道出身のはるまきごはんさんが、その冬を温かく描いた、という名作なのです。そして、これと同じアルバムに収録されていたのが『月がない街』でした。

Guianoさん自体はアルバム前から知っており、EDMをされている方で、神椿の一員だ、というイメージがありました。『死んでしまったのだろうか』が好きでたまに聴いていましたが、正直その程度の知識、本人が有名な割にノーマーク、といった感じでした。

しかし、この曲に度肝を抜かれることとなります。『MOGARI』とは逆に、言葉数を減らしたラップ調で、冬の寂しさを描き出しているのが本当に見事で、一発で惚れました。ここまでシンプルな楽曲で、ここまで聴かせる楽曲というのはそうそう知りません。EDMの名手ならではの表現だなと感服しました。

ちなみに同じアルバムには蜂屋ななしさんの『WHITE NIGHT PARADE』も収録されており、こちらも大好きな一曲です。こちらはショーミュージックですが、同じく心温まる一曲となっています。アルバム全体として完成度の高い名盤だと改めて思います。

 

83. アイニーブルー/ ZLMS

詞・曲:ジグ
編:ZLMS

ボカロはコラボをしやすい土壌だ、とよく言われます。実際、TwitterのDMをきっかけにコラボを行う、みたいな事例もあるそうで、わりと複数人で作った楽曲がポンポン飛び交っています。幸せなことです。

その中でも特に好きな楽曲の一つがこの曲。ジグさん・ルワンさん・はるまきごはんさん・雄之助さんが組んだユニット「ZLMS」の『アイニーブルー』です。この曲は2022年8月31日、すなわち初音ミクのリリース15周年にあたって投稿された楽曲でもあり、初音ミクに対する想いが詰まった曲でもあると言えるでしょう。

全員が初音ミクを使っているので、それぞれの歌い方の癖がよく出ており、それだけでも楽しい楽曲なのですが、その中身もめちゃくちゃ良い。「覚えてる?あの日のあのこと」という歌い出しは、全ての楽曲の中で最も好きな歌い出しと言っても過言ではないと思います。普段あまり歌詞を気にしていない自分ですが、この歌詞にはグッと来るものがありました。

 

84. ロールレスウエポン/ 稲葉曇×Neru

同じくコラボ楽曲をもう一つ。これは、実力派ボカロPが12人集まり、あみだくじで組み合わせを決定して楽曲を制作するという、ものすごい試みで作られたアルバム「キメラ」からの一曲です。組み合わせを指定するのではなく、ランダムに組み合わせを決定することで、思いがけないテイストの楽曲が出てくるので非常に面白いアルバムでした。

この楽曲は、上でも出てきた「擦れたロック・EDM」を武器とする稲葉曇さん、そしてジャズからロックまで何でもござれ、のヒットメイカー・Neruさんのコラボ楽曲で、キャッチーながら、ダークなロックに仕上がっていてめちゃくちゃかっこいいです。

プロセカの企画で行われた即売会で、「キメラ」制作メンバーがかなり集まっていたので、キメラの円盤にサインを集めていた人がいました。かしこい。

 

85. METEOR/ DIVELA

ここから数曲、「マジカルミライ」関連の楽曲について書こうと思います。「マジカルミライ」は、ボカロ最大のライブイベントで、同時にCD即売会や企業の展示会なども行われる、「ボカロ最大のお祭り」とも言えるイベントです。毎年東京と大阪で行われており、近年は仙台や福岡など、もう一ヶ所追加で行われることも多く、地方在住でも参加ハードルが少し低いイベントになっています。
そしてそのライブでは、「テーマソング」と「コンテストグランプリ曲」が演奏される決まりとなっています。前者はライブのために運営が依頼したクリエイターにより書き下ろされた楽曲、後者は公募楽曲となっています。

この楽曲は2018年のコンテストグランプリ曲です。同年のテーマソングは、Omoiさんの『グリーンライツ・セレナーデ』という楽曲だったのですが、自分はこの2曲が、マジカルミライ史上最高の組み合わせであったと思っています*41。2曲ともパワーがあるので、ライブで盛り上がれそうなのが強い。是非、生でこれを浴びたいと思っていました。

そうして2018年、マジカルミライに初めて応募し、抽選に落ちました。

ライブの抽選に落ちるのは初めてのことで、落ちたというだけのことなのですが、期待が大きかったためにショックも大きく、しばらくマジカルミライから足が遠のいてしまいました。特にグランプリの曲は、後年のマジカルミライでもあまり演奏されないため、この曲は自分にとって「幻の一曲」みたいなイメージが勝手についています。とても大好きな曲というのには変わりないのですが。

 

86. ブレス・ユア・ブレス/ 和田たけあき

翌年、2019年のマジカルミライテーマソングです。初めて聴いた時はそこまで惹かれなかったのですが、後々になって歌詞にやられた一曲です。

『グリーンライツ・セレナーデ』以降、ボカロと人間、特にリスナーとの関係が描かれるようになったイメージですが、この曲は、「ボカロとクリエイター」という、原点の構図に戻り、その新しい関係性を描いています。「ボカロ讃歌」「人間讃歌」ではなく、その関係性をシビアに捉え、ボカロへの願いを歌詞にしているのが新しいな、と思いました。

「ボカロってなんだろう」みたいなことは、2023年ごろから自分もかなり考えるようになりました。もちろんさまざまな説明ができるのですが、2017年以降、「ボカロとクリエイターが対等に立った」頃からの空気感は、この楽曲が最も良く説明できているように思えます。しかも、それを和田たけあきさんという、まさに「対等に立った」クリエイターの第一人者が描き切ったというところにグッと来ました。自分はクリエイターではないですが、それでも初音ミクの「リアル」をここまで浮き彫りにしていただけて本当にありがたい、という気持ちです。

 

87. HERO/ Ayase

悲劇から5年、2023年になって、ようやくマジカルミライに参戦しました。参戦の様子はこちらこちらなどに詳しいですが、やっとこさライブが見れた、という感慨が強かったです。
ここまで参戦が後ろになった要因には、「ボカロにちゃんと向き合ってから行きたい」みたいな意地も正直ありました。なんとなく「マジカルミライはガチ勢のためのお祭り」というイメージがあり、自分はそれに達していない、みたいな心持ちもあったように思いました。実際行ってみたらめちゃくちゃ楽しかった。

さて、その参加を後押ししたのがテーマソングであるのは言うまでもありません。2023年は、初音ミク16周年、16歳設定である初音ミクにとってはアニバーサリーイヤーでした。その年のテーマソングを、YOASOBIとしても既に名が通っていた令和のポップモンスター・Ayaseさんが担当されたということで、否応なくバイブスは高まりました。

そして楽曲が公開され、実際に聴いてみると、これがとんでもなく良い曲でした。前項でも書いたように、テーマソングでは初音ミクと人間との関わりがよく描写されるのですが、「初音ミクと人間がお互いをリードし合う」という関係性はまた初めて描かれたもので、とても驚き、嬉しくなりました。
実際ボカロシーンとしても、2023年前後は「ボカロ文化をボカロ文化として盛り上げていこう」という取り組みが盛んだったので、これもまた時勢をよく映した楽曲とも言えます。そこに描かれた人間・初音ミクの「存在」が自分にとって理想的で、カチッとはまったような感覚になりました。

楽曲を何度か聴きかえすうちに、自然と泣いたのを覚えています。理屈ではなく、感覚として「泣く」という経験は人生の中でもとても少なくて、それだけに自分にとって非常に尊い経験になりました。それだけにこの楽曲に込める想いも一入です。初音ミクは改めて、自分の恩人とも言える存在であり、それを歌ったこの楽曲もまた恩人のような存在だろうと再確認しました。

 

88. フューチャーノーツ/ shikisai

マジカルミライには「0曲目」という概念があります。ライブ開演前、会場ではコンテストの準グランプリ曲が流されているのですが、その中でも「アガる」曲が開演一個前に置かれ、途中で暗転、ステージへ移行する、というのが定番の流れになっています。
自分が参戦した時の0曲目は『ネオンライトの空を往く』という楽曲で、ここの暗転がめちゃくちゃ気持ちよかった。それ以降、各年度の「0曲目」に目がいくようになりました。

この曲は2025年マジカルミライの0曲目でした。shikisaiさんは、現代的なEDMを制作されているボカロPで、全体的に楽曲が「気持ち良い」のですが、この曲もまたそうです。これが0曲目なのは羨ましい。是非現場で浴びたかったです。

最近はボカロ界隈でDJ文化も発展しているので、そういうところでも良く用いられているイメージがあります。そういう現場も一回行ってみたいな。何なら自分もボカロDJをやってみたいという欲があります。

 

89. ストックホルムワルツ/ イマニシ

ストックホルムワルツという音楽ジャンルは存在しません。ウインナワルツみたいな感じなのでしょうか。『MOGARI(参照:81)』同様、ピアノを効果的に用いたお洒落な楽曲なのですが、ボカロックを主軸としているボカロPの作品であるために、途中からロック的な要素がうまく同居されていて、その巧みなバランス感に惚れる楽曲です。

イマニシさんはプロセカの企画である「プロセカアカデミー」の参加者でした。その参加者解禁ビデオでこの曲が流れた時はニンマリしました。何と顔出しもされていましたし、「僕が新時代のボカロロックの象徴になります」という発言にもびっくりしました。しかしそのコメントに見合うような、カッコいいロックナンバーを次々とリリースしています。

ツミキさんのアルバムでもそうですが、ちゃんと「聴かせる」ためのフックが最後に用意されているのが、イマニシさんの音楽のすごいところだと思います。この辺の方々は哲学が共通しているのかもしれません。そういうドキドキを味わうために自分はボカロロックを、ひいては音楽を聴いているとも言えると思います。今後のリリースも楽しみなボカロPさんです。

 

90. A rainy dancer/ yama

詞・曲:r-906

自分にとって「人と音楽を聴く」という体験は特殊なものでした。特にボカロにおいては、周りにボカロオタクがいなかったために、一緒に音楽を聴く、ということはほとんどありませんでした。私は今でも、一緒にボカロ音楽を聴いてくれる友人を募集しています。

大学に入ってできた、ボカロを聴く友人君が、数少ない「一緒に音楽を聴く」相手でした。特に大学3年生ごろには、能動的に「集まって音楽を聴く」という会を数回開くほど、本気で音楽に向き合う時間ができていました。
そんな中で魅力を共有したボカロPが、r-906さんでした。その友人は、サカナクションが好きだったこともあり、こういうEDMに対する親和性が高い人でした。よって、この手の曲を結構聴いていた覚えがあります。

r-906さんの楽曲も色々好きなのですが、一番昔に好きになった楽曲ということでこれを挙げておきます。昔というのは高校生の自分だったと記憶していますが、よくそんな時期からこの人の曲を聴いていたなと。「in my hands」というちょっと珍しいCDも持っているので、ちゃんと昔から好きだったということにはなると思います。

yamaさんといえば『春を告げる』ですね。『夜に駆ける』と同時期に流行ったので、ごっちゃになった人も多いと思います。この人の声もかなり自分好みで、カバーを昔から色々聴きあさっていました。声がいい人がちゃんと表に出るようになったのは良い話ですよね。

 

91. Leon/ Project Lumina

「音楽的同位体」という合成音声がリリースされました。花譜さんをはじめとした、神椿のバーチャル・シンガーを合成音声にした、というもので、「人っぽい」声を有したボカロの走りみたいな存在です。
ボカロシーンにおいてこれは革命的だったのですが、同時に「声同士の区別がつきづらい」という欠点を抱えていました。「人っぽい」という点にフィーチャーし、個々人を区別するわずかな要素が平滑化されているために、かなり聞き分けが悪いのです。

それを「コーラス」という要素で克服したのがこの楽曲です。音を重ねれば、微細な違いは際立ちますし、あるいは微細な違いを気にする必要がなくなります。「この使い方はいいな」と思わされる楽曲です。

また、曲としても良い点が詰まっています。有機酸さんをはじめとする、抽象的で美しいボカロ楽曲としてとても質が高いですし、この時代に5分近くの楽曲を、中身をぎっちり詰めて勝負してきていることにも好感が持てます。何気にこの100選には珍しいミドルテンポの曲ですが、それだけにめちゃくちゃ良い曲だと思っています。

 

92. ミットシュルディガーは恋人/ 花譜

詞・曲:メル

ちょいちょい話題に出てきている花譜さんです。この人は本当に色々なジャンルから、全然知らない曲を引っ張り出してカバーをされているイメージがあり、自分もかなり知識を仕入れさせていただきました。本当にありがたいことです。
この楽曲も、メルさんというボカロP自体は知っていたのですが、この曲は聴いたことがなく、このカバーがめちゃくちゃ良くて知りました。まさにハマり役でしょう。

メルさんのビンテージなポップスもめちゃくちゃ好きです。こういう楽曲がもっと流行ってほしい。古いロックとかを特に聴くわけでもないのですが、琴線に触れる何かがあります。はるまきごはんさんの『回覧板』という曲*42も同様のテイストでめちゃくちゃ刺さった楽曲です。合わせて是非。

 

93. ナイトシーランドリー/ SEE

同じくビンテージロック。SEEさんは2023年ごろからはまっているボカロPさんで、ちょっと不安定なロック楽曲が、笹川真生さんなんかと重なってとても好みです。ポップス、ロック、ジャズ、なんでもござれな方であり、エレクトロサウンドとアコースティックサウンドのバランスも絶妙、というすごい方でもあります。

こういう浮遊感のある楽曲は、むしろメインストリームのポップスでかなり使われてきたイメージですが、初音ミクにも良く合っていると思います。ロックもできるし、ポップスもできる、やはり万能なボカロですね……。

ヨルシカ、笹川真生さん、そしてSEEさんあたりの、「しなのある」楽曲を好きで聴き出したのは今思うと同じくらいだった気がします。何か琴線に触れることがあったのでしょうか。こうやって「聴ける音楽」が拡張されていく感じもまた良いですよね。

 

94. 餞に愛を/ sabio

初めて聴いた時とんでもない気持ちになりました。「すげえ!」みたいな叫びをした覚えがあります。音楽ジャンルとしては確立されており、かつよく聴くものではあるはずなのですが、確かにこれをボカロでやる人はいなかったな……と思いました。

「人っぽい」ボカロが流行るに従って、逆にボカロが歌う音楽も広がっていきました。実験的にこういうジャンルを試みていた人も、自分が見ていなかっただけで存在していたのでしょうが、やはりボカロの声がそちらに合うことで、よりそのジャンルに適するようになった、ということでしょう。これまでのボカロが「声の表現の限界を拡張する」みたいな発展の仕方をしていたのと逆の動きなのかもしれませんが、これもこれで模倣/進化の新しい形と言えるでしょう。

聴いて純粋に衝撃を受けた曲、というのもそう多くありません。『HERO』と同様に、自分に新しい感情を湧き出させてくれた楽曲として感謝している一曲です。

 

95. *ハロー・プラネット/ 宮守文学

詞・曲:sasakure.UK

2024年頃から、「リミックス」というものが盛んになり始めました。特にボカロ楽曲のコンテストである「ボカコレ」において「リミックス部門」が設立されており、そこで質の高いリミックスが結構投稿されるようになりました。

宮守文学さんは、2023年のマジカルミライのグランプリ曲で有名になったボカロPですが、リミックスもめちゃくちゃ上手いことで有名です。グランプリも「考えて」獲得したようなことをブログで仰っていたので、かなり理論派なボカロPなのかもしれません。そういう思考回路を覗かせてもらうことは稀な機会でした。

ミックスでは、かなりメインストリーム的なポップの表現を追求されているように思います。いかに原曲の良さを引き出し、いかに自分らしくやるか、というのがリミックスの課題ですが、宮守文学さんはその両方を高いレベルで実現されています。
この楽曲はボカロの古典的な楽曲であり、ファンも根強いものですが、そのピコピコ感や間奏のコーラス、楽曲全体の退廃的な雰囲気を維持しつつ、現代的なEDMに整え、ポップス感を強めるというリミックスに仕上がっています。

自分はあまりリミックスを聴いてこなかったのですが、こういう質の高く、面白いリミックスに出会えるとやはり嬉しいですね。昔の楽曲は声の調整が自分に合わないこともままあるので、そういう意味でもリミックスは有難い存在と言えます。

 

96. しんかしんかしんか/ 原口沙輔

原口沙輔さんは、ボカロにおける黒船的な存在でした。『人マニア』が大バズりすると、コラージュやDJ文化、EDMなどを巻き込み、環境自体を大きく変えてしまった存在とも言えます。2023年以降のボカロは、このクリエイターによって定義づけられたと言えます。

『人マニア』以降あまり楽曲は聴いていなかったのですが、ポケモン初音ミクとのコラボ「ポケミク」に曲を出されたということで聴いてみたところ、これがハマりました。本人の武器であるサンプリングの上手さを遺憾なく発揮しながら、EDMでありつつメロディアスな表現になっており、ちょっとマイルドな仕上がりながら、聴きやすい楽曲になっていました。
聴きやすさをとったことで、r-906さんにテイストが似ているように思えるのですが、これに関してはあまり同意を得られていません。残念。
また、サカナクション的なカタルシスもこの楽曲の魅力です。サカナクションがボカロ文化に与えた影響も非常に大きいと思います。

自分はポケモンをあまりプレイしていないのですが、ポケミクはやっぱりよかったですね。ボカロPのポケモンへの思い入れとか、物語の作りとか、そういうところが垣間見えてすごく良いコンテンツです。ちなみに原口沙輔さんがボカロデビューしたのは「ポケミク」プロジェクトの始まる数ヶ月前くらいなので、すでに別分野で鍛えていたとは言え、一気に名が売れたその手腕には目を見張るものがあります。

 

97. Synth8se/ 奏

原口沙輔以後、ボカロはかなり「前衛的」になりました。そしてその動きに、自分はついていけなくなりました。もちろん、それ以前にゴリゴリのEDMや、DJ音楽、実験的な音楽を聴いていなかったわけではありませんが、まさかそういうジャンルがシーンを席巻し、そしてその音楽で飽和されるとは思っても見なかったのです。

一方で、実験的だからと言って全ての音楽を敬遠しているわけではありません。エレクトロ的な心地よさを有しながら、メロディをしっかりと通している楽曲はやはり良さがあるものです。例えば『しんかしんかしんか』がそうですし、そしてこの曲もそうです。

『Synth8se』は、音割れを音楽に導入するという、これまた新しい試みがなされている楽曲です。ボカロ音楽を聴いていると、こういう音声表現の拡張を間近で見ることができて、退屈しません。一方、音楽を「破壊」していながら、一貫した美しいメロディラインや、良いドロップを有していることもこの楽曲の魅力です。ゆえに、自分はこの楽曲が好きなのです。

2024年以降のボカロシーンはこういう楽曲で満たされていき、ロックを主食とする自分にとってはやや息苦しい時代でした。しかしこういう楽曲の登場により、ジャンルを再整理し、自分の好みに合った方向へ、細々ではあるものの伸びていけた時代だと思います。

 

98. 警報のあった日/ 春原染

詞・曲:世界電力

ボカロ・ロックの芽は、実験的音楽の中で潰えたわけではありません。むしろ、その最高傑作は、実験的音楽の中で生まれました。それが、『警報のあった日』です。

自分がオルタナティブ・ロックという単語を知ったのはこの楽曲がきっかけです。『春の嵐(参照:39)』や『Sparkle(参照:56)』にも同様の血が流れていると思いますが、自分の体験にとって、その源流となるのは『警報のあった日』でした。
この楽曲は同時に、自分とロックの立ち位置を見直すきっかけにもなりました。ユニゾンのファンをしていたこともあり、ロックに対する親和性が高いことは早くから理解していましたが、この曲を好きになる中で、明らかに「ロック」というジャンルに対して特別な思いを有していることに気がつきました。それが上に挙げたアイドル・ソング2曲の評価・再評価につながり、このボカロシーンで自分を貫く一つの「芯」となってくれているように思います。

この楽曲は、ヒリヒリするような、あるいは手に汗握るような感覚にさせてくれるのがすごいところです。言葉を超えて感情を喚起することは、まさに音楽という芸術の形態によって行われるべきことの一つですが、それをしっかりと見せつけてくれました。全体のじっとりとした雰囲気、あるいはその声が、そういった気持ちを昂めるのに貢献してくれていると思います。

また、この楽曲に見られるリフレインがかなり好きです。サビの裏でイントロのフレーズが鳴ってるのってカッコよくないですか!?自分はリフレイン大好き人間を自称しているので、こういうフレーズをもつけるとニンマリしちゃいます(にんまり)。

そして今回は、春原染さんのカバーを挙げさせていただきました。バンド「帰りの会」のボーカルですね。覚えておいででしょうか(参照:55)。この方は、『警報のあった日』の「手に汗握る」部分をしっかりと抽出して歌に反映されているのがめちゃくちゃいいです。後単純に声が好み。
カバーにおけるキーの上げ下げ論争みたいなものもありますが、自分は上げ下げ歓迎派です。特にこういう楽曲でキーが違うイントロを聴くと特別感があって嬉しいですね。これもまたカッコいい。センスの良いカバーだと思います。

 

99. / TakoyakiKZY

2025年前後のボカロポップスで注目しているのはズバリこの人です。ポップなサウンドをしっかりとボカロに埋め込んでくるのがうまくて、いつも楽しく聴かせてもらっています。

ボカロのクリエイター色というのは、調声、すなわちボカロの「声色」と、その世界観にでがちですが、この人は「音」でわかりやすい、というちょっと珍しい方です。楽曲によって雰囲気はかなり違いますが、TakoyakiKZYさんがよく用いている跳躍の仕方、みたいなのがあり聴くとこの人だとわかります。結構不思議。

『悶』では、いつものTakoyakiKZYポップスだけではなく、色々と面白い試みがされています。イントロや感想では、「悶」という感情を音で表現するという、音声表現の拡張が見られたり、あまり他の楽曲では聴けないゴリゴリのドロップが聴けたり。同氏の楽曲は結構聴いていく中で、どれも好きながら「ズバリこの曲」というのがなかなか決まらなかったのですが、『悶』を聴いた瞬間ビビッときました。そういう魔力のある曲です。

ちなみにR Sound Designさんと大学が同じらしい。不思議な縁もあったものですね。

 

100. マジックアワー/ ways

上にも書きましたが、良い音楽との出会いはあったものの、実験的音楽で飽和した近年のボカロ界隈は、自分にとって手放しで居心地が良いと言えるものではありませんでした。その傾向が顕著に現れたのが2025年で、明らかに聴くボカロの楽曲数が減りました。

その中で、メインストリーム的なロックナンバーとして燦然と輝いていたのがこの曲です。バルーンさんや『命ばっかり』の出会いから、すなわちボカロとの出会いから、自分はこういうロックナンバーに支えられてきたのだと思います。ここに挙げた曲だけでも、『ロミオとシンデレラ』『スイサイ/アンブレラ/ロクガツ/ドライフラワ』『HERO』などなど、一貫してこういうロックは自分の軸にあった気がします。そしてその広がりの中から、様々なお気に入りを見つけ、このように羅列できるまでに至ったのでした。

この曲単体の素晴らしさをとっても、この曲をはじめ、様々な素晴らしいロックナンバーとの出会いをとっても、そしてそこから始まったボカロ音楽の冒険をとっても、やはり自分にとって救いであったことは間違いありません。そしてその根源として、『マジックアワー』は、2025年の自分にとって恩人というべき楽曲だったでしょう。こういう輝きを探して、自分はこれからも音楽を聴いていくのだと思います。

最後に

非常に膨大な文章となってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。

これからも色々な音楽との出会いがあるのでしょうが、一つの区切りとして、こういうものを書かせていただきました。自分にとって2025年は「ボカロの飽和」もあり、音楽的にはちょっとおとなしめの年で、故にこれまでの音楽生活について振り返る機会も多かった様に思います。その結果の一つを、これとして提出している、という感じです。

自分の人生は間違いなく音楽と共にありました。まさに笑いあり涙あり。様々な感情を引き起こしてくれたり、紐づいていたり、思い出になっていたり、様々な誘因がありますが、どれも自分にとって大切なものであることには変わりありません。ある程度「語れる曲」を羅列しましたが、100曲に対してこれだけのコメントが書けたのも、一つの証左として良いでしょう。

そして、『あなたのことをおしえて』ではないですが、是非あなたの好きな音楽を、思い出の音楽を教えてください。あるいはオープンにしなくとも、自分の中で錨となる楽曲を選んでみるというのは楽しい試みだと思います。

私、そして読者の皆様に、今後も良い音楽との出会いがあることを祈念して、筆を置かせていただきます。

*1:英:ハープシコード・独:チェンバロ

*2:映像が抽象的でやや怖いので閲覧する場合は注意

*3:母親は邦楽をやっており、自分はバイオリンを習っていた。変な音楽一家。

*4:通っていた高校には吹奏楽部すらなかった

*5:PCでプレイできる弾幕シューティングゲーム

*6:ここでの「ディズニー」はテーマパークのことを指します

*7:カンガルーはどこに行ったのか』。楽曲人気投票で上位を取っており、幼児も先鋭化している。

*8:ニゾンのベース担当、作詞作曲もほとんどこの人がやっている

*9:こういう時にアルバム収録曲を挙げるべきではない、という教訓を得た

*10:原曲はアルバム「全知全能」に収録

*11:仮面ライダーや戦隊モノらへんの枠

*12:当時は男女問わず「集団でユニゾンする」みたいな歌唱が苦手だったと認識していました。今は後述の事情によりかなり脱却しつつありますが、「アイドルっぽい」曲は苦手なままかも

*13:ネットでカバーを中心に活動するアーティストの総称。特にボカロ楽曲のカバーを行うことが多い。

*14:例:『天球、彗星は夜を跨いで/キタニタツヤ』『灼熱にて純情/田淵智也』『ビビデバ/ツミキ』

*15:上記のように(参照:15)、筆者にはCDを買うことが重要だという価値観が内面化されているため

*16:一晩かけてその人の推し曲を全部聞いてコメントをつける、というイベントなどがあり、かなり熱烈な布教を受けていた

*17:特に『さよならエレジー』のMVにおける長髪の姿がお気に入り

*18:友人が「五文字の花の名前を10個言う」というミッションにチャレンジしている横で自分が『赤いスイートピー』の一節を歌い、「スイートピー」まで思い出したものの6文字であったため膝から崩れ落ちた事件

*19:アイドルの人

*20:アイドルの人

*21:合唱の項で出てきた友人

*22:ヘロー』、イントロのシンセがあまりにもササノマリイさんで愛おしい。

*23:最初は「音楽聞くだけだからね!」的な契約でシャニソンを始めた。キャラもちゃんと追ってます。浅倉透と大崎甜花が好き。

*24:先述のアイドル知人と別れたため

*25:2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025

*26:ボカロPとしての名義は「kz」だったが、引退後「livetune」の名義を使うようになった。『Tell Your World』は「livetune feat. 初音ミク」、すなわちlivetune(非ボカロP)による初音ミクへの提供曲という体裁をとっている。

*27:長文noteを生成している

*28:今考えるとなかなか寛容な小学校である、あとその時代にボカロのCDを持っているのはすごいかも

*29:当時はWALKMANユーザーだったので、moraというストアで購入した。ちなみに初めて手に入れたボカロのCDは、同じくバルーンさんの「Corridor」

*30:しかも『ロウワー』というヒット作を引っ提げて

*31:ボカロ楽曲を題材とした音ゲー

*32:ボカロ楽曲のコンテストイベント。最近はオリジナル曲だけでなく、リミックス部門も設けられている。

*33:敬愛するボカロP:バルーン、有機酸、ぬゆり、はるまきごはん、ツミキ

*34:割に、PVのモデルになっている六本木にはまだ行けていない

*35:もちろんこの前にもこういうアルバムはいくつも出ているが、このアルバムが初めて見たものだった

*36:楽曲のオケ部分。カラオケ音源みたいなもの、instrumental版

*37:「表立って公開していない=CDを買った人しか聴けない」という優位性を潰してしまうことになるため

*38:プロセカ劇場版への書き下ろし楽曲『スマイル*シンフォニー』製作時に、適当に入れた一音をDECO*27に見咎められ、「この音はなんで入れたのですか」と訊かれた話

*39:例:「ワールドトリガー」犬飼澄晴、「文豪ストレイドッグス尾崎紅葉、「シャニマス」浅倉透

*40:サカナクションが好きな人

*41:ちなみに2017年のテーマソングが『砂の惑星』だったので、これに対してボカロの復興を象徴する様に力強い2曲が出てきたという背景を鑑みても感慨深い

*42:アルバム「おとぎの銀河団」収録

薬学という、複雑で混沌で、それでいて愛すべき学問について。

はじめに

私は、薬学部という学部に所属しています。

薬学部は、ご承知の通り薬学という学問を学ぶ場所で、自分は色々と策略があって薬学部に入ったわけですが、最近になって、薬学というのはやはりごちゃごちゃしていて、でもそれが素晴らしい学問なのだな、と思うようになりました。

一方で、この感覚がどれだけ他の人と、特に薬学部の外の人と共有できているか、というのは未知数であり、少なくとも薬学に興味がない人が一定数いることもまた理解しています。特に薬学に振り向いてくれる必要はないのかもしれませんが、ただ、自分の感じた薬学の「ありのまま」を明文化しておく、というのは、意義ある試みであるか、あるいは愉快な試みであろうと考え、この文を執筆している次第であります。

 

と、仰々しい大義名分を並べ立てたところで、もう少し個人的な動機について書き連ねておきましょう。

1.薬学を通して、自分の好きなものを理解する

表題の通り、私は薬学という学問がそれなりに好きなわけですが、これには自分が薬学というものをどのように捉えているか、という要素が少なからず絡んでくるはずです。そのために、「何故薬学が好きなのか」を理解するためには、「薬学をどのように捉えているか」を議論する必要があると感じました。

本稿では、薬学についての認識を整理した上で、自分が何故この学問を好いているのか、という点について取り上げます。

2.薬学を通して、自分の(暫定的)科学観を整理する

詳しくは後述しますが、薬学というのは結構色々な学問分野が含まれていて、それについて分析したら科学に対する見方を表明することにならないだろうか、という試みです。自分が科学を好きかどうかは定かではないですが、もしそうであれば1=2かもしれません。

こういう解釈もあるよ、という紹介程度にご覧いただければと思います。

3.薬学に対する幻想を遺しておく

私はまだ学生の身ですから、薬学に対する視点には大いなる誤解が含まれています。そもそも、個人の感想とも言えるこの視点に対して、客観的な価値を付随させることは不可能です。そのため、ここに挙げた内容には「幻想」とも言える事項が含まれていることでしょう。しかし、幻想を残しておくということもまた自分にとっては意義あることです。

薬学という、それなりに社会との接点を持つ学問をしている以上、そこに多かれ少なかれ責任が付随するのは当然のことです。まだ学生身分であることからある程度の免責があるわけですが、今後歳を重ねるに従って、その要請は荷重を増していくことでしょう。その責任を背負うかどうかは個人に委ねられるものであり、また自分がどれほどその責を負うことになる/負おうとするかは現状不明瞭ですが、とりあえずそういうことにしておきましょう。

ここに遺すのは、そのような立場に立った時には表明できないかもしれない「夢」のようなものです。もちろん、責任ある立場に立った時にその「夢」を実現できる可能性もありますが、突拍子もないような、あるいは現実味に欠けるような、あるいは抽象的な事象をあげつらって悦んでいられるのは恐らく今だけです。

そのため、描かれているそれは自分の「薬学の理想像」と読んでいただいても差し支えありません。むしろそれが自分の望む視点かもしれません。全部が全部鵜呑みにできるものではない、ということは言い添えておきます。

 

ここまでお読みいただけていればわかるように、この文は非常に冗長で、かつ個人的なものになる予定です。説明に関してはできるだけ平易になるよう心がけますが、外部の方が読んで愉快なものになるかは正直分かりません。おもろいな、と思ったら最後まで読んでいただけると幸いです。

 

1.薬学部のシステムについて

1.1. 薬学部の概要

薬学について扱う前に、アカデミア薬学の中枢たる、薬学部について少し説明します。

「薬学部です」と言って返ってくる反応として多いのが、「薬剤師になるんですか/ね」というものです。恐らく、特に薬学部に興味がない人にとって、薬学部とは薬剤師を育成する学部であると思います。

しかしながら、必ずしもそうと言うわけではありません。具体的には、薬学部は二つの学科に分かれています。それが下の二つです。

  • 薬学科(6年制・主に薬剤師になるための勉強をする)
  • 薬科学科(4年制・主に創薬研究をする)

基本的に、薬剤師になるためには薬学科に行く必要があります*1。ただ、二つの学科にはこの話だけでは括れないもう少し本質的な違いがあるので、まず二学科の相違について次節から扱うことにします。

1.2. 薬学科

薬学科は、学部課程6年+薬学博士課程4年で構成される学科です。

大学によってはこの学科しか設置されていないところもあり、いわゆるイメージ通りの「薬学部」、すなわち薬剤師を育成する学部ということになります。薬剤師、というのは医療従事者で、それなりに数がいないと困るので*2、薬学科しか設置されていないところも諸々ある、という解釈であると思います。

大学の機関であることから、研究活動も行われているのですが、その範囲は非常に多岐に渡ります。ここでは、「薬科学科」と対比する形でその内容を挙げてみましょう。

「薬学」という学問を俯瞰すると、「科学」でない領域がそれなりに存在します。公衆衛生や法整備、医療統計などがそれにあたります。いわゆる「社会学」なんかに分類されるものです。そもそも、薬剤師が行う「処方」という行為自体も、その根拠は科学に立脚しているにせよ、方法については「科学」に分類されない、という意味でそこに当てはまるのかもしれません。

先ほど、薬学のことを「社会との接点がある学問」と表現しましたが、その「社会との接点」部分を担っているのがこの学科とも言えるでしょう。言うなれば薬学の「外堀」です。当然、医療行為は社会的な行為ですから、そのシステムや現状を分析・整備することは非常に重要なことで、そう簡単に埋めてはいけない領域であることは言うまでもないでしょう。

1.3. 薬科学科

薬科学科は、学部課程4年+修士課程2年+博士課程3年で構成される学科です。

創薬科学科、と呼ばれることもあります。こちらの方が意味の通りが良いですね。「創薬」に関する「科学」について勉強・研究する学科です。「薬を作る学科」と言っても差し支えないでしょう。

しかし、その内実はとても複雑で、薬に関わる化学・生物・物理などの分野が幅広く、かつ横断的に扱われているのが特徴です。基礎から応用まで、すなわち薬に直接関わらないような内容を研究しているところもあり、一つの学科ですが振れ幅は一つの学部並みです。

薬はないと処方できないので、薬学界の根幹を支える学科ということができるでしょう。学部内外を問わず共同研究が盛んで、人体に関わる事象の発見や、問題の解決など様々な分野に手を伸ばしています。人体に係る化学物質繋がりで、化粧品なども薬科学の守備範囲です*3

まさに振れ幅最強学科と言えるかもしれません。

2.薬科学とは

さて、ここからは薬学について詳らかにしようと思います。

学科説明で軽く述べたように、薬学には「薬科学」と「薬科学でない部分」があり、今回はこの2つに分けて説明します。まずは、比較的掴みやすい薬科学から。

2.1. 総論

薬科学は「薬に関わる科学」であり、馴染み深い高校理科の4科目を用いると、主に化学と生物、そしてそれに付随する物理分野が含まれます*4

化学と生物についてはじっくり扱うことにして、物理についてここで軽く述べておきましょう。物理は、主に「見る」ために用いられます。具体的には、電子顕微鏡や蛍光顕微鏡などの顕微鏡関係、NMRなどの化学分析機器関係、そしてタンパク質結晶構造解析などの、解析方法の開拓・更新が研究されています。

また、薬学における分析手法として、統計学も用いられています。どちらかというと社会薬学の文脈で用いられるため、薬科学の領域に含まれることは少ないですが、科学の一分野として挙げておきます。

2.2. 化学と生物ー遍在性と階層性

さて、化学と生物について、どのような「構造」を持っているかを最初に述べたいと思います。

まず、薬学という文脈において重要なのは、「基礎研究」と「臨床」です。ここでは、このまま「基礎研究」と「応用」と読み替えてもらっても構いません。これを用いると、薬科学で扱う諸分野は、生物ー化学と基礎ー臨床という2軸に従って分類することができます。

当然各分野に関しても、軸を跨いで研究が行われることがザラです。例えば、免疫学は薬学における主要なトピックの一つですが、「免疫システムについて解明する」という意味では基礎研究よりですし、「解明した免疫システムを用いて薬を作る」という意味では臨床寄りととることもできます。また、免疫は生命科学的事象*5であるわけですが、免疫がどのように成立しているか、ということを考えるには化学的な視点が必要です。そのために、化学ー生物という軸も容易に飛び越えられるものである、ということも言えるはずでしょう。

 

ここでは、簡単にそれぞれのエクストリームな例を紹介したいと思います。

生物+臨床

臨床寄りの生物としては、「生理学」と「病理学」が二本柱になっています。薬学部ではあまり扱いませんが、ここに「解剖学」が加わることもあります。

「生理学」は主に健康な人の体内システムについて*6、「病理学」は主に病気の人の体内システムについて扱うもので、理論上この二つを合わせれば全ての人について網羅できるということです。

生物+基礎

基礎寄りの生物は、「細かいもの」と「抽象性が高いもの」の二つに分けることができます。

「細かいもの」としては、体内システムの一部を切り出して考える「免疫学」や「遺伝学」「発生学」などなどが挙げられます。これは先ほど述べたように、臨床寄りの志向を有する学問であると言えます。

「抽象性が高いもの」としては、いわゆる「生命科学」で、「分子生物学」などと呼ばれるものです。一般的な細胞の働きや、体内での活動について扱うのがこの分野だと言えます。

化学+臨床

ここは薬学における非常に特徴的な部分でしょう。「薬理学」「薬物動態学」「薬力学」などがここにあたります。

「薬理学」は薬がどのようなメカニズムで効くか、という内容であり、生物にも化学にも係る学問領域ですが、その内容には化学構造が非常に重要になるので、便宜的に化学ということにしましょう。

「薬物動態学」や「薬力学」は、薬がどの程度効くか、という内容です。化学反応の速度などを用いて、薬物を投与した際に体の中でどのような動きをするか、ということについて学びます。

化学+基礎

基本的には「有機化学」が扱われます。薬の多くは有機物であり、それを作るには有機化学の知識が必要不可欠だからです。また、人体も一種の有機物なので、上に挙げた「薬がどのようにして効くか」を考えるには有機化学的な視野が必要になります。

少し特殊な例としては「分析化学」と「放射化学」でしょうか。前者は化学物質をどのように「分析」するかを扱い、作った化合物を分析したり、薬物が適切に作成されているかを分析する、といった内容に寄与しています。後者は、放射線治療や、生命科学放射性同位体を用いた分析などに役立てられています。

 

以上の内容を図にまとめると下のようになります。もちろんこれらは薬科学で扱われる諸学問のうちの数例に過ぎず、薬学はもっと広く、細かく広がっています。

だいたいこんな感じ。

ところで、上の図を見ると

  • 生物は基礎が化学寄り/臨床が生物に振り切れている
  • 化学は臨床が生物寄り/基礎が化学に振り切れている

というトレンドが見えてくると思います。もちろんこれは恣意的に図を作っているわけですが、このトレンドが発生する裏側には、生物・化学という学問領域が持つそもそもの階層性が存在します。

基本的に、科学の諸学問において「完全に独立した領域」というのは存在しません。「大学に入ると、生物は化学に、化学は物理に、物理は数学に、数学は哲学になる」とはよく言ったものですが、実際これらの学問は、相互に持ちつ持たれつで成立しています*7。))。

科学全体の話をするとこれまた長く、煩雑になってしまうので、化学と生物の関係性だけ抜き出して考えましょう。ざっくりと、以下のようなことが言えるでしょうか。

  • 生物は分子でできているから、生物の作用について理解するには化学が必要
  • 逆に、化学を生命現象に応用するには、生物の観念が必要
  • 生物の中にも、化学では説明できない領域が存在する

前の二つについては、生物と化学との直接的な関係性に言及したものです。「生物」というのは、この世に存在する/したもののうち、「生きている」ものを扱う学問です。一方「化学」はより一般に、世の中に存在する物質について考証するものですから、この時点で化学→生物の具体化が見えるかと思います*8

我々人類を含め、生物とは化学物質の集合です。よって、生命現象について理解するためには、化学反応や化学的性質について理解する必要があるわけです。例えば、我々が物を食べ、それを消化し、体の中で栄養として利用する過程には、無数の化学反応が関係しており、それについて正しく理解するには、それぞれの「化学」反応について「化学的な」分析を加える必要があるということです。

逆に、薬などの形で化学を体に作用させたい場合は、生命科学の知識が必要となるわけです。生命は非常に複雑であり、その理論体系について整理しているものが生物学と言えるでしょうか。

なお、最後の点で述べたように、生物の中でも化学が直接は関係のない領域が存在します。例えば「生態学」、そして「進化学」です。これらは系がマクロであることと、化学物質による寄与ではないことから、あまり化学が立ち入ることはありません。しかし、生態学に出てくるフェロモンには化学の知識が応用されていたり、進化学について化学的に遺伝子を分析したりするなど、連関が全くないということもありません。

 

このようなトレンドを基に、もう一度上の図に立ち戻ってみましょう。

そもそも、化学は「基礎寄り」、生物は「臨床寄り」という学問領域であることから、化学における「臨床より=生物寄り」、生物における「基礎寄り=化学寄り」ということが理解できると思います。

また、「分子生物学」について、生命科学のうち「一般的なもの」と書きましたが、これは化学の知識を「あからさまに」用いているということです。名前に「分子」と入っているように、化学物質の動きとして生物の作用を一般的に捉える、といった内容を学ぶわけです。

「薬理学」や「薬物動態学」は、先ほど話した「化学を生物に適用する」領域です。薬が志向していることの根源はここであり、これは薬学が生物・化学を幅広く、深く扱っている理由でもあります。

一方で、「生理学」「病理学」という分野は、生態学ほどではないですがマクロな分野であり、そろそろ化学では手が届かなくなってきます。もちろん、生理的な作用・病理的な作用も化学反応によってもたらされますから、完全に無関係であるわけではありません。

有機化学」についても同様に、こちらは一般的であるあまりに、生物とは関係ない部分や、より基礎的な部分をも扱います。このうちの一部が生物に適用されて、様々な事象の理解や薬の製造に役立っているわけです。

 

以上が生物と化学についての概観であり、次節からはそれぞれについてもう少し深掘りしていくことにしましょう。

2.3. 薬学における化学

再三述べてきた通り、薬科学の中での化学は、専ら有機化学と言って差し支えありません。

化学の中には、炭素を含む化合物を扱う「有機化学」と、炭素を含まない化合物を扱う「無機化学」があるわけですが、生体内に存在する物質は、一部のイオンを除いてほとんどが有機化合物です。そのために、有機化学について学ぶことが重要になってきます。

反応と性質

化学、というと化学構造式や、華やかな化学反応を思い浮かべる方が多いでしょうが、化学には「反応」に加えて「性質」を知る、という重要な役目があります。

「反応」についてはこれまでに色々と書いてきたので良いでしょう。日々の生命活動は化学反応であり、病気も化学反応であり、それを治す薬もまた化学反応です。

対する「性質」もまた薬において重要な要素となります。「性質」とは、その分子がどのような形をしているか、周りの分子とどのように相互作用しているか、水に溶けやすいか、などなどについてを指します。

有名な事例が、「サリドマイド薬害」*9で、直接的な原因は当時の薬をめぐる社会システムにあるわけですが、その化学的な要因は、サリドマイドという薬には2種類の立体構造を持つ分子が混ざっていたことにありました。このように、安全な薬を作成するためには、その薬に対する化学的な知見の集積もまた必要である、ということです。

薬理学

薬理学は、薬学を代表する学問領域の一つですが、この分野は化学と生物がまさに混じり合った学問領域であると言えるでしょう。であるにも関わらず、今回この領域を化学の一分野として扱っているのは、「構造活性相関」という重要な概念が存在するからです。

薬がどのような効果を発揮するかは、その構造によって決まります。薬が体内のなんらかの分子と反応することで、薬効が生じるからです。これは、例えば「似たような構造を持つ分子は似たような効果を持つ」などということが言えるわけで、このことを「構造活性相関」と言います。

この性質を用いると、「似たような構造の分子を色々作ることで、似た効果を示す分子のレパートリーが増える」ということを意味します。構造が似ていても、違いがあればその薬効や副作用に違いが出ますから、より効きやすく、かつ副作用が少ない薬を作成する上で、構造活性相関や、それを応用した有機化学が重要になってきます。

現在用いられている薬のうちの多くは、天然物、すなわち他の生物が産生する化合物や、その構造を少し変えたものです。このような探索ができるのも構造活性相関という性質の賜物であり、かつそれについて分析できる有機化学という学問の賜物というわけです。

天然物化学

ここで「天然物」というワードが出てきたので、それについてもう少し補足をしておきましょう。

これまで多くの薬の種になってきた、という意味で、天然物は薬科学にとって非常に大きな存在です。生物と化学の関係について散々述べましたが、この意味でも生物と化学は、薬学の文脈で絡むことになります。生物由来の薬を、化学の力を用いて分析し、さらに使いやすいようにカスタマイズしていく、という考え方です。

先ほどは、「生物を化学で説明する」あるいは「化学を生物で応用する」と言ったことを書きましたが、ここでは逆に、「生物を化学で拡張する」と言った営みになるでしょうか。このような視点は薬学ならではであり、かつ薬学の面白い部分の一つでもあります。

そのため、薬学部は天然物化学の最前線の一つであり、日夜天然物に関する様々な研究が行われています。

天然物化学では、以下のような3サイクルで物事が進行していきます。

  • 天然物を「取ってくる」
  • 天然物を「合成する」
  • 天然物を「応用する」

「取ってくる」は生物寄りの領域で、植物や動物、菌類から活性のある物質を取ってきます。生物の体から化合物を抜き出す際には、化学的な操作を必要とすることもあります。

「合成する」は、生物の力なしに、あるいは力を借りて、人力でその化合物を作ろうとする試みです。そもそも、作ろうとする物質の化学構造を調べるところから話が始まり、どのように合成するかを考え、より効率の良い合成ルートを探索していきます。非常に手間のかかる部分である一方、「有機化学の花形」とも呼ばれる領域です。

「応用する」は、上に述べたように化合物の形を変え、より「都合の良い」ものを作ろうとする試みです。薬として働く部分を残しつつ構造を変える必要があるので、この段階も繊細かつ難易度の高いものとなっています。

この部分については、生物が絡みながらも有機化学色が非常に強く、そのために薬学部の中には有機化学の先進的な研究をされている先生が所属されていることも多いです。

薬物動態学

最後に薬物動態学について。この分野はこれまでと少し毛色が違い、いわゆる「物理化学」と呼ばれる領域に属します。

物理化学は、化学反応や化学的な状態を、物理を使って表し、一般化しようという学問領域で、薬物動態学では、薬物が効く速さや、薬物の効果がなくなる速さなどを、化学反応の一種として分析し、効き目について考えることを目的としています。生物に係る物理化学分野であることから、「生物物理化学」と呼ばれることもあります。全部乗せみたいでかっこいい。

内容としては計算することが多い物ですが、実は化学の中では臨床で最も良く用いられる分野で、「副作用を出さないように薬品の効き目を保つ」ために、薬物動態の分析は必須の作業になっています。ここを間違えると毒性によって体を壊したり、命に関わることもあるので重要な分野の一つとして数えられます。

ちなみにとっても難しい。

まとめ

では、この節をざっくりとまとめておきましょう。

ゴテゴテしててごめんね

大前提として、化学を「応用」したのが生物です。すなわち、この図のさらに上部に「生命科学」があると思ってください。

 

上の図は見ての通り、下が基礎、上が応用といったふうになっているのですが、薬学における化学は全体的に階層性がわかりやすく、まさに「積み重ねられて」できているんだなということがよくわかります。

2.4. 薬学における生物学

薬の対象は生物であるので、薬科学においても生物は中心的な役割を果たしています。同時に、薬学について学ぶことは、生物学について様々な側面から学ぶことになるのです。

薬科学は生物で"満たされている"

生物学の「大きさ」スケール

生物学を分類する方法は多々ありますが、最もわかりやすいのが大きさです。生物の構成は、ざっくりと下のようなスケール感になっています。

生物群>個体>器官・臓器>組織>細胞>タンパク質・分子>原子

このうち薬学で扱うのは大体個体〜分子くらいのサイズです。

先ほど「分子生物学」というワードが出てきましたが、生物学には、これらの大きさに対応した学問分野が存在していて、

生態学>生理学>形態学>細胞生物学>分子生物学

のように分類することができます。

先ほどの図に立ち返ると、小さい方が基礎寄りで、大きい方が臨床寄りであることがわかると思います。これは大きいと化学で扱いづらく、小さいと化学で扱いやすいというトレンドと地続きであり、話の一貫性を見ることができます。

また、このトレンドは一般性の議論にも見ることができます。分子的な構造や、体内での反応については生物種間で共通しているものもままありますが、臓器レベルになってくると、生物によってまちまちとなることが多いです。そのため、人を主な対象とする薬学部では、ヒトに絞った生物学を学ぶことが増えてきます*10

薬学における生物の「機能」スケール

もう一つ、「細かいもの」という指標についても書いておきましょう。免疫学や遺伝学は、体内システムの内一部を切り出したもの、と書きました。体内で起こることは、多くはその分子的メカニズムが原因になりますが、病気などの形で問題になるのは、臓器や個体レベルでその影響が出てきたときです。

そこで、分子レベル〜臓器レベルにわたって、幅広く事象を整理する必要があるのですが、そのためには個体の中での「機能」を中心に物事を整理するのが効果的です。免疫などに顕著ですが、このような例には、物質そのものの性質や、単独での反応ではなく、物質同士の相互作用を見たり、物質から成り立つシステムを俯瞰したりするものが多いです。

この視点は、薬学の中では生物ならではと言えるでしょう。化学では、もちろん溶媒との相互作用などがありますが、基本的には要らぬ相互作用がない方が良いという実験系を用いています。ところが、生物における相互作用はすでに「ある」ものなので、それについて考える、というのが生物の面白いところでもあるわけです。

病理学や生理学といったものも、免疫学や遺伝学とはスケールが異なりますが、概ね同じような放言をすることができるでしょう。すなわち、病理学や生理学は組織同士、器官同士、臓器同士などといった、体の中の「各パーツ」をシステム的に捉え、その正常性の定義や異常性の定義をするのがそれらの学問の役目です。

生命科学における「正常性」は、「恒常性」という学術用語*11で解されますが、薬学における生命科学はまさに恒常性の学問と言えるかもしれません。なぜならば、薬とは恒常性を取り戻したり、あるいは必要に応じて恒常性を「崩したり」するものだからです。

「薬」と生命科学

生命科学的な知見は、薬の効果や、薬が対象としている疾病、体内の機構に関しての知識を深めることに必要であることはもちろんですが、より直接的に医薬品へ適用されることもあります。

「医薬品」と聞いて想起されるものは、錠剤や粉薬といったものであると思われます。これらは、一般的に低分子化合物、すなわち構造が比較的単純な化学物質から成ります。ざっくり、化学構造を紙に書いてください、と言われた時に書けるレベルのものです。
ところが、医薬品にはもっと「大きい」化合物から成るものもあります。

細胞>抗体>タンパク質>分子

これは先に挙げた「生物におけるオーダー」を少しいじったものですが、ここに挙げたものは医薬品として使われるものでもあります。

タンパク質、は最もわかりやすい例です。タンパク質はアミノ酸がたくさんつながって形成される化合物であり、アミノ酸の構造を用いて化学構造を確かに示すことができます。しかし、つながっているアミノ酸の数が100個や200個や、さらに多い化合物もままあるので、この構造を紙に書き起こすことは現実的ではありません。このようなでかい化合物のことを「高分子化合物」と呼びます*12

低分子化合物は、構造も比較的容易であることから、その作成や、反応についての解析は化学が主戦場となります。しかし、高分子ともなると化学的な作用だけでは解析が難しくなるため、生命科学的な知見が重要になってきます。特にタンパク質については、生体内の物質をそのまま取り出したり、そのお仲間を使っている関係から、生命科学の視点が重要になることは言うまでもないでしょう。

さらにオーダーの大きいものとして「抗体」が挙げられます。最近は抗体医薬がなかなかhotなのですが、これはタンパク質がいくつかつながったものであり、タンパク質よりさらに大きい物質です。これは、免疫学の分野で学ばれるものであり、我々の体の中で日々がんばっている物質なわけですが、病気から我々を守る免疫それ自体を薬に使おう、というのが抗体医薬です*13
さらにさらに「細胞」自体を薬につかおう、という例もあり、ここまでくると本当に「生命科学」というフィールドです。実際、抗体を用いた薬や細胞を用いた薬などを「生物学的製剤」と呼称することもあります。

まとめ

生命科学は、薬学の根幹をなす学問であり、薬科学あるいは薬学をする以上、生命科学的な知見や解釈、表現は必要不可欠であると言えます。

これは、医薬品の開発や運用にも必要な知識ですが、医薬品それ自体にも生命科学が用いられています。生命科学については幅広いオーダーや分野について知識を得ることが必要です。

3.薬学とは

薬学というのは、これまで述べてきた薬科学という観念よりさらに抽象的な概念です。ここでは、ざっくりとその解釈を述べるに留めますが、概念としてはもっと掴みどころのない、雲のようなものであると認識しています。

3.1. 薬を「使う」ということ

薬学は、薬を使うための学問である、と僕は考えています。薬を使うには、だいたい以下のようなステップが介在しています。

  1. 病気についての知見を収集する
  2. 薬を開発する
  3. 薬を生産する、流通させる
  4. 薬を処方する
  5. 患者が薬を飲む

1に関しては医学、病理学が、2はもろに創薬科学がその役を担っており、薬学の中でも「薬科学」という分野に集約されるものであるでしょう。

ここで本題となる、「薬学であって薬科学でない部分」は3以降のステップということになります。これらのスキームを回すためには、化学・生命科学だけでなく、社会科学的な発想も必要となります。以降では、これらのスキームごとに薬学について具体的に参照することとします。

3.2. 薬の生産と流通

薬を「製造」する

どこまでを薬の「生産」とするか、というのもまた難しい問いなのですが、とりあえず開発段階でそれなりに作るべきものは決まっていることとしましょう*14。医薬品とて工業製品なので、基本的には工場で機械を用いて製造することになります。しかし、一般的な工業製品とは異なる点が二つあります。

製造にかかる点としてはそのうちの一つ、「衛生管理が重要」という点が挙げられます。身体の中に入るどころか、身体の中で何らかの作用を及ぼすことになる物質ですから、その品質管理には万全を期す必要があります。先のコロナワクチンでは、一部のロットのみに不純物が見つかった、みたいな騒ぎもありましたが、多くの量を生産する中では、そういうことにも気を配らなければならない、ということでもあります。

先に挙げた生物学的製剤、コロナワクチンもそうでしたが、このような刺激に対して弱い物質は、温度管理など気を配らなければならない事項も増えます。製造過程では様々な事項について考えつつ生産をしなければならないということです。

薬を流通させる

医薬品が他の工業製品と異なる点のもう一つは、「価格を企業が決められない」という点です*15。薬には「薬価」というものが国により定められており、その値段で販売を行う必要があります。一方で企業は企業であるために、開発費の回収*16をしなければなりませんし、企業が立ち行くように利益も出さねばなりません。その辺りのバランスを考えつつ薬価というものは定められるのであり、ここで薬は社会と接点を持つこととなります。

一方で、薬が用いられるのは病院であり、また薬局です。薬というのは使用期限があるために、必要以上に入荷をするわけにもいかず、逆に必要になった時に薬が無い、という事象が発生しないように常備を必要とするものもあります。その辺りのバランスを考えるのは病院や薬局にいる薬剤師の役割であり、また「どの薬を入れるか」というのは、企業や行政、研究機関の出す資料から、これまた現場の人間が判断することとなります。

(これが非常に難しい問題で、要するに「患者にとって最も良い選択肢」を取れるように現場の薬剤師はどの薬を用いるか決定する必要があり、一方で企業は自社の利益が必要であるために、薬を「売り込まなければならない」というジレンマが生じます。当然ここでややこしいことになっては医療倫理に反するので、第三者的にイーブンに判定しましょうね、という観念が存在します。これを「利益相反」と呼びます。医学・薬学に特有な捉えづらい概念です。)

この時点で、薬学には「社会学」の観点が取り込まれることになります。

3.3. 薬を処方する

「薬学」のメイントピックの一つはここでしょう。日本においては処方箋を出す、すなわち薬の処方に対しては医師が権限を有しますが、薬剤師もまた、薬の処方を実際に行うものとして同様かそれ以上の権限を有しています。

薬を処方する、という行為は、薬学において最も「臨床的」な行為です。基本的な観点は、「患者にとって最良の選択をする」というものであり、これに従って薬の処方をすることが必要不可欠となります。

そもそも薬を処方するべきか否か、という分岐も発生しますが、一度それは脇に置くとして、薬を処方するためにはどれだけのことを考えなければならないのでしょうか。

「薬がどれくらいよく効くか」というのはもちろん重要です。これは生物学的・化学的知見、あるいはこれまでに上がってきた臨床例をもとに判断され、また処方されたのちもきちんと経過を観察することが必要となります。これと同じくらい重要なのは「薬がどのように効くか」という点です。わかりやすい例は副作用であり、同じくらい効く薬であれば副作用が少ない方が良いわけです。同様に、患者に合併症がある場合は、その病気を悪くしないかにも注意が必要となります。すなわち、薬を処方するには、その薬の効果、作用機序について包括的に理解をすることが必要となります。

「薬の投与がどのように行われるか」も重要なファクターの一つです。薬の投与頻度はどれくらいか。経口投与、すなわち「飲む」だけで良いのか、注射が必要なのか、あるいは坐薬なのか、などなど、これらは「効きやすい投与方法」について検討する必要もありますが、患者の環境的に投与が可能なのか、あるいは心理的なハードルはどうなのか、など様々なファクターについて考える必要があります。

これらの事象を解決するためには、患者と健全なコミュニケーションを取ることが必要になります。まあ当然のことですが、この「臨床的」な視点も、薬学を学ぶ上では必要となる、ということです。
現場においてこの視点が重要となるのはもちろん、バックの、いわゆる「薬科学」的な部門にもこの考え方を援用することは必要でしょう。ここでは薬科学と臨床をある意味「対比的」に描いていますが、このギャップを埋めるという試みは、臨床の視点を科学に持ち込むことで他生されるものと考えられます*17。薬学のコアの一つはここにあると思います。この話は後でもう少し。

3.4. 薬を飲む

服薬指導、という言葉がありますが、薬は適切に服用しないと聴かないどころか、身体に害をなす可能性すらあるので、適切な薬の服用を促すのも薬学の役目の一つです。

これは、医師・薬剤師によるアドバイスや、行政による呼びかけなどのソフト面の対策から、薬それ自体の設計を考えて、適切に飲んでもらいやすくする工夫を設けることもあります。ここには、行動学的な観点が援用されていることになるでしょう。

さらに、薬による副作用をモニターすることも必要となります。薬物動態学について、「臨床でも用いられる分野」と記述しましたが、ここで役立ってきます。上にも書いたように、患者は薬の対象としている他に疾病を抱えている可能性もあり、その影響で薬の作用が、想定とは異なる可能性も十分にあります。そのために、特に作用が強い薬や、リスクのある患者については、投与後の薬の動きをしっかりと追う必要があります。

3.5. まとめ

問題は、ここまで述べた内容は全て現実にあるものであり、机上の勉強だけではどうにもならない、ということです(いわゆる「現場で起こっているんだ!」というやつですね)。

薬学というのは、薬科学と社会との前線、というものが包摂されています。もし科学と現実社会が対比されるものであるのならば、その境界線の一部が薬学に埋まっている、と言えるかもしれません。

応用科学的な視点に立つのであれば、このギャップを埋めるというのが薬学の役目であると考えられます。さて、この記述は先ほどもしましたね。すなわちこれについては次章にて詳しく述懐されるということです。

4.なぜ、薬学をするのか

冒頭の繰り返しになりますが、この内容はあくまでも個人的な内容であり、所属する団体、あるいは薬学という立場を代表する言説ではないことを最初に断っておきます。

4.1. 薬学的科学観

自分が薬学をしている理由の一つが、薬学の中にある科学の立場が自分の好みである、というものです。薬学の中で科学がどうあるか、ということについては上につらつらと書いたので、もう一度繰り返すようなことはしませんが、僕の好きな科学、という視点を補足しておきましょう。

僕は元々、化学と生物の交差点を目指して、薬学部に入りました。自分が指向していたのは天然物化学であり、天然物化学において覇権を握っている薬学部では、自分の望むような研究ができるのではないか、と考えたからです。
この裏には、化学だけではなく、生物もやりたいな、という思考があったものと推察されます。特に高校の頃生物が好きだった、という記憶はないのですが、大学に入って化学に立脚した生命科学を扱ううちに、分子生物学的な物の見方にも興味を抱くようになりました。

こういった人間にとって薬学部は適している場所です。特に「生物」と「化学」を重点的に扱うような学部として薬学部は代表的であり、かつ薬のような分子を扱うために、その視点は自ずと化学や分子生物学が中心となるからです。

ところで、自分が興味のある分野は、必ずしも「化学/生物の越境」を意味しません。むしろ、化学と生物の間、あるいは化学→生物という記述が正しいように思えます。
いわゆる「理系」の科学は「自然(natural)科学」と「応用(applied)科学」に大別できます。化学は、自然科学と応用科学のいずれの分野も内包すると同時に、「自然科学でも応用科学でもある」というふうに考えています。これは、化学だけでなく、他の領域にも当てはまる事項かもしれません。
そして、薬学という学問領域においては、「化学→生物」という科学が、その要素を非常にわかりやすく反映しています。薬学の対象たる疾病は生物学的である一方で、そのメカニズムや、あるいはそれを治すための薬剤は化学的に開発されうる、というのは上に散々書いた通りですが、それはまさに、「自然科学=疾病や化学物質の基礎研究」であり「応用科学=創薬」であるはずです。

この意味で、薬学、ここでは薬科学と呼んでも構わないかもしれませんが、科学というフィールドを「生物ー化学」を軸にして大胆に切り取り、その関係性をヴィヴィッドに投影しているものであると僕は考えています。

4.2. ヒト/人という系での科学

さて、上に挙げた要素をもう少し具体化してみましょう。

ヒトは生物であり、かつ社会の構成要素であるとも捉えられますが、薬学は、それら双方の要素に関して、「間に入って」科学を扱うことになります。

生物学的ヒトの中での薬学、というのは、まさに薬学そのものであると言えるでしょう。薬というのは、主にヒトの体の中で機能するものですが、ヒトの体の中というのは、自然の中でもトップレベルの複雑性を有する系の一つです。その中で、あらまほしき機能を発揮するための薬というのは、非常にセンシティブな科学に立脚しているはずです。

一方、社会の中での科学、というのは、例えば「実装」という言葉で表されるものですが、上記したような薬の「処方」「流通」といったものがそれに当たるでしょう。自分は、法をはじめとした、社会を成すシステムも好きなので、薬学はそのフィールドとしてうってつけの分野の一つではないかと思います。

「社会の中での科学」と書いていますが、あるいはこれも「科学」の一片と捉えうるものかもしれません。上記したような、応用科学による科学の社会への適用は、科学が社会にて利用されるという前提を踏まえると、科学による一定の責任で行われるべきであると思われるからです。*18そして、人の健康に関わる薬というものに関して、その要素がシビアであるということは言うまでもありません。

この意味で、薬学を「俯瞰する」という態度が、自分が理想としているものの一つです。創薬や、その基礎にある化学や生命科学に対する興味と同時に、薬の運用、というところにも一定の興味があるのは事実であり、そのために薬学部に所属していると言えるかもしれません。

また、言い換えれば、「臨床」というフィールドは「科学」と「社会」の境界に位置していると考えられます。臨床、すなわち患者さんは、現代医療においては「科学的な」アプローチを取られることが一般的です。治療、というのがそういうことであるとも言えるでしょうか。
一方で、臨床は「所与の」と述べたように、科学では手の届かない、既存の理論の外側にあるかもしれない存在です。特に化学や生命科学は、新規的な「事実」に弱い傾向があると思っています。その弱みを、実際にあったこととすり合わせることで超越していける、というのは、薬学という限られた系における一つの魅力なのではないかと思います。

4.3. 薬というものの複雑性

これまでに挙げた内容の「逆」と言えるかもしれません。薬そのものにも複雑性があります。その起因の一つは、前述したような生物学的ヒト体内環境の複雑性です。そのために、意図していなかった反応や相互作用、あるいは反応の減衰が起こり得るという点であり、これは上に述べた要素です。

対して、薬の成分自体にも複雑性があります。薬はいわゆる「有効成分」のみにてできているわけではなく、その薬物の作用を調整するために、さまざまなものが含有されています。その好例が「生薬」「漢方薬」であり、これらは天然の生物を「そのまま」用いているために、その作用は非常に複雑なものになることが知られています*19。これをコントロールするにはまた、生命科学や化学に対する理解が必要になります。

面白いことに、これらの内容は、科学的な研究にて明らかにされることですが、実運用上においては、法令をはじめとする社会的システムによって制限されています。「日本薬局方」がその好例であり、薬の内容物やその濃度・純度などのプロファイルは厳格に運用されています。この意味でも、科学と社会への架橋は不可欠な要素であると言えるでしょう。

5.最後に

感想文をさっくりと書くつもりが、非常に入り組んだ、またわかりにくい文章になってしまったことをお詫び申し上げます。

これをもとにして「薬学に興味を持ってほしい」「薬学を勉強してほしい」というよりは、「こういう世界観もあるんだな」と感じていただければ幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:以前は薬科学科所属でも、特定の課程を修めれば薬剤師免許を取得できたのですが、そのシステムは近年廃止されました。そのため、薬科学科の先生の中には薬剤師免許をお持ちの方もそれなりにいらっしゃいます

*2:ただし、そもそも医学部の数に比べて薬学部の数は結構少ないです

*3:具体的に化粧品を扱う授業があるわけではないが、事例として紹介されたり、卒業後化粧品を製造する企業に就職したりする

*4:流石に地学をメインに研究している方はほぼいないですが、生薬の一部として鉱物が使われることもあります

*5:ここでは、「生物学」と「生命科学」はほぼ同じ意味で用いています。一応辞書的にはちょっと異なる意味があるかと思いますが、それについては各自で調べておいてください。なお、「生物」には学問領域(=「生物学」の他に、「生きている物」という意味の「生物」(=実態としての生物)があるので、紛らわしい場合はなるべく「生命科学」を用いています。

*6:ただし、「完全に健康な人」というのは存在しないので、あくまで仮想的なモデルということができるかもしれません。「砂山のパラドックス」みたいな感じ。

*7:一応純粋な数学は独立していると言えるかも。数学は科学における「言語」みたいな扱いで、「歴史学者が歴史を読み解くのに言語を使っていて、言語学者は独立に言語について考えている」みたいな認識だと思います((でも言語学者って文化人類学とかに立脚しているのかしら。数学も論理学とかに影響を受けているのでしょうから、実際には完全に独立な学問体系などないのかもしれません

*8:念のため他の領域についても補足しておきましょう。「数学」については上に述べたように言語であり、「物理」はその言語を、現実の法則として記述するもの、そして「化学」は「物理」を実在の「もの」に対して当てはめる学問である、という一連の流れが想像できます。また、「化学」の応用先には3通りあり、人工物を扱う「工学」、天然物のうち、生きている物を扱う「生物」、生きていない物を扱う「地学」とざっくり分けることができるでしょうか。

*9:妊婦がサリドマイドを処方されたことにより、奇形児の妊娠という副作用が続出した。日本における最悪の薬害事件の一つ

*10:他の生物の薬学については、例えば獣医学部における薬理学などで学べることがあります。

*11:体内の様々なスケールで保たれている均衡、あるいはその均衡を保つ機能のこと。わかりやすい例では、電解質バランスや水分量、体温などが上げられる。「ホメオスタシス」とも。

*12:本来「高分子化合物」の定義はもう少しナーバスなものですが、ここではこれでご了承ください。高校化学で扱う「モノマーがたくさん連なったもの(=「ポリマー」)」と「分子量が大きい化合物」という二種類の意味があることだけ附記しておきます

*13:もちろんこんなに単純な思考から生まれたものではありません。ちなみに免疫システムから生まれた薬はこれ以外にも色々あり、「抗生物質」もその一種です

*14:「この物質が病気に効く」ということがわかっても、どの形態で投与するのが適切なのか(錠剤?粉末?吸引?などなど)、大ロットでうまく生産できるか(実験室ではうまく合成できても、工場では合成ができない、みたいなことはままある。これを乗り越えるには工学的な知見も必要)、など、乗り越えるべきハードルはたくさんある

*15:日本においては。以降の内容も全て「日本における」ルールです

*16:一般に医薬品の開発には莫大な資金が必要になります

*17:臨床は「所与」のものなので

*18:逆に言えば、科学がこの実装をスムーズにできなければ、社会に利用されない、という内情も含んでいます。

*19:このために、東洋医学の論理は、西洋医学と全く異なります。

目黒川お花見道中記

目黒川へ花見に行った。ただそれだけのことなんだけれども。

 

※今回は語り口がいつもとやや異なります。ご了承ください。

 

背景と動機

春の麗の目黒川

どうやら、自分にはバイトの中日に思いつきでレジャーに行く性があるらしい。件の山梨旅行も、バイトの中日だった。

 

↓よんでね

sprechchor-on-correct.hatenablog.com

 

三月の最終週は、月・火・木・金とバイトで、水曜日が空いていた。おりしも桜が満開の時期である。したがって、花見に行くことにした。

目黒川は桜の名所である。もちろん桜の名所は東京にたくさんあるのだが、ある理由から自分は目黒という土地に愛着を持っているので、自然と目黒に行くことになった。

 

すたーばっくす

目黒にはスタバがある。スタバは東京にありふれた存在であり、別に特筆すべきものではない。ところが、目黒にあるそれはとても「強い」のである。

 

↓詳しくはwebで

www.starbucks.co.jp

 

その名をSTARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYOという、なかなか癖の強いスタバなのである。

 

一応知識を整理しておこう。

STARBACKS RESERVE®というのは、スタバが提供している特殊なコーヒー豆である。豆自体を取り扱っている店は、割と色々なところにある。わかりやすいところで言うと東京駅にある丸の内オアゾや、東京ミッドタウンあたりだろうか。別に東京にこだわる必要もなく、さまざまな都道府県で提供がなされている。

そして、その豆を提供している店の極値が、件の店である。なんと世界に6店舗しかない。そしてそのうちの一つが目黒にある。急に話が壮大になってきた。

 

もちろん、かなり人気な店である。スタバ自体がそれなりの人気を誇っているが、ROASTERYに関しては桁違い、数時間待ちがザラという世界観である。

自分も、前日にTwitterで検索をしてその事実に辿り着いた。Twitterは便利である。予想はしていたが、しかしここまで待つものなのかという驚きもあった。なんなら開店時に行列ができるレベルらしい。恐ろしや。ただ、店は22時までやっている。時間さえ選ばなければ、そして待つことを厭わなければ*1、そこまで無茶な話ではない。店に入ること自体は。

 

桜と人々とスタバと

話はそう単純ではない。

 

件の店には、テラス席なるものが存在する。

店は目黒川沿いにあり、当然ながら目黒川の桜がよく見える。このことから、テラス席はかなり人気になることが予想される。自然な帰結である。

スタバとてそう馬鹿ではない、この混雑を見越して、テラス席の利用は整理券制となっている。そして、繁忙期には店舗周りの混雑を避けるため、入店も整理券制となる。

 

この二つが噛み合わさり、現在この店はなかなか恐ろしいことになっているのである。ここまで読んだだけだと、「なんだ、整理券を二つ取ればいいだけではないのか」と思うかもしれない。確かに、整理券が残ってさえいれば、そこまで過酷な話ではないように見える。

 

繰り返すが、話はそう単純ではないのである。

 

ここで、上記した公式サイトから、『桜開花時期のテラス席ご利用について』を参照してほしい。そこには、こんな一文がある。

ロースタリー東京に入館いただいた後、館内にある端末にて発券手続きをお願いいたします。

つまり、テラス席を利用するための手順は、正確にはこうである。

 

入店整理券を取る→待つ→入店する→テラス席整理券を取る→待つ→テラスに入る

 

もちろん、運が良ければ、もしくは早い時間に行けば入店した時点のテラス席を確保できる。しかし今は繁忙期、そうは問屋が卸さない。すなわち、テラス席に行くには莫大な時間が必要になるのである。

花は桜?

花よりコーヒー

物は試しである。とりあえず行ってみることにした。

ロースタリー東京は東急線中目黒駅と、池尻大橋駅のちょうど中間ぐらいにある。まずは池尻大橋駅から、店へ向かう。

 

池尻大橋駅から徒歩10分ほどで到着した。時刻は11時30分ごろ。周囲は花見客とスタバ見客で賑わっており、このために警備員さんが3人ほど駆り出されていた。大変である。

Twitterの情報だと店の周りに並ばないといけないような書き込みもあったが、実際には、店の隣にあるスペースで、QRコードを読み込むと簡単に発券できるシステムになっていた。客が並ぶのを避けるために並ばせるのも意味がわからないので、確かにこれは良いシステムだなと思った。

お店の人は240分〜300分待ちとアナウンスしていた。某夢の国のアトラクション並みである。ちなみに筆者はそこで500分待ちを観測したことがある*2ので、ぎりぎり怯まなかった。

発券すると、大凡570組待ちと表示された。少し怯んだ。自分の番号が1020番くらいで、半分以上の人がまだ呼ばれていない。おそらく一生のうちにこれ以上の街列を観測することはないだろう。

 

幸い、近所に用事があったのと、渋谷に行きたかったため、ひまつぶしの用意はたっぷりあった。時間的にちょうど夜のテラスが取れるかな、という呑気なノリで一時撤退。

物見遊山

用事を済ませた後、渋谷へ。

最近は渋谷に行くこともめっきり少なくなった。

ロースタリー東京からまっすぐ歩くと30分くらいで着くだろう。多分待ち時間を潰すには東京がちょうどいいと思う。

 

タワーレコードでCDでも漁るか、と歩いていると、こんな場所が。

かっこいい。

神椿さんの動向はあまり追っていなかったのだが、気になっているボカロPさんもいることだし、と思い店に入ってみることにした。

後々わかったのだが、この催しの本質は2階で行われているイベントであり、自分が行ったのは物販スペースだけだったらしい。

 

prompt-alpha-u.kamitsubaki.jp

 

イベントの方に行くのはチケットが必要なのだが、これを調べた時に、よもやチケットが必要な場所に入り込んでしまったのではないかと血の気がひいた。チケット確認なんてされてないし。

ちゃんと書いていないのだが、物販スペースはフリーで入れたらしい。無罪である。

 

物販スペースだけでもかなり愉しい。特に、普段は通販でしか取り扱っていない神椿さんのCDが大量に積まれている様は圧巻であった。自分もコンピを2枚買った。メンツの豪華さの割に安かった気がするのでかなり良い買い物をしたと思っている。

 

↓買ったやつ

youtu.be

youtu.be

 

こういうのに出会うと渋谷って良いな、と思う。

たわーれこーど

タワレコにも行った。

ちょうどプロセカのシングル発売日だったらしく、ほしい曲でもあったので買ってしまった。色々逡巡したがとりあえずプロセカを2枚買い、撤収……

 

と思いきや。

渋谷のタワレコには、デモ音源を無料で配布するためのCDというものが置かれている。

 

↓これ

youtu.be

 

ここに以前から気になっていた「十五少女」の曲が収録されていたので、衝動買いした。無料なので「買い」ではないのだが。

大量に持っていかれるのを防ぐためか、レジを通すシステムになっていた。これも良いシステムである。

レジで袋をまとめてもらうときに、先ほど買ったプロセカのCDを乃木坂46のCDと間違えられ、ビラをもらいそうになった。帯がパステルカラーだったからであろう。

今思うと、素直にビラをもらっておくべきだったのかもしれない。

帰還

スタバは回転が早い。

経過を見ていると、50人や100人くらいの単位で、自分の順番が迫ってきていた。240分待ちとなっていたが、意外と早く自分の順番が回ってきそうである。

 

昼ごはんを済ませ、池尻大橋経由でロースタリーへ戻る。池尻大橋にある目黒天空庭園で休憩しつつ向かうと、ちょうど良い時間になった。14時30分ごろ、約200分待ちで入店*3

入店してまっすぐ、3階にあるテラス席整理券端末へ。意外とここも並んでいなかった。しかしそれは、予約が大方一杯だったからである。もう枠はないか、と思ったが、辛うじて19:15〜の枠が空いていた。

店員さんに「遅い時間ですが大丈夫ですか?」と言っていただいた。ここの店員さんは皆優しい。

 

11:30から、7時間45分。465分待ちである。

 

すごいぜスタバ。

なお、テラス席の整理券取得後は、一時退店が認められる。整理券を無くさないようにしよう。

花開いた今を言葉如きが語れるものか

花見

流石に時間が空きすぎるので、一度家に帰ることにした。

ロースタリー東京から目黒川を降り、目黒駅へ向かう。やっと、目的の花見である。

 

前日に雨が降っていたが、桜はまだ満開であった。ちょうど散っていく時期で、ハラハラと落ちる花びらがとても美しい。流石に人もたくさんいたが。

いや、本当に美しい風景だった。写真が上手くないことをここまで残念に思うことはないだろう。今年はもう無理かもしれないが、是非来年にでも足を運んでほしい。

 

割と綺麗に撮れたと思うものをいくつか載せておこう。

めぐろがわ

中目黒駅。電車との共演もよろし。

水面の紋が綺麗

 

天気も良く、まさにお花見日和だった。言葉に言い尽くせない美しさとはこのことだと実感した。

↓タイトルから察せるかもしれないが、これを聴いてました

youtu.be

花曇り?

目黒から熟睡しつつ帰宅し、一時間ほどだらだらして家を出た。

 

家を出ると、雨が降っていた。

 

確かに、天気予報は曇りであったし、物によっては雨と書いてあることもあった。本当に降るのか。俄に雲行きが怪しくなった。二重の意味で。

テラス席というのは、ご想像の通り屋外にあるので、悪天候では閉鎖されることもある。これだけ待って、テラス席に行けないとなると悲惨である。

 

物は試しである。とりあえず行ってみることにした。

 

ルートとしては先ほどの逆順、目黒から川を登っていく。

夜になると、小雨が降っているにもかかわらず、人が増えてきた。実際綺麗である。クリスマスイルミネーション行脚演習をしていてよかったなと思った*4

一人で桜の中をずんずん進んでいくのは、滑稽もしくは不審だったと思う。おそらく後者寄りであろう。

 

相変わらず桜は綺麗であった。

夜桜っていいよな

19時ごろにロースタリー東京に到着。店員さんにもやや混乱が見られたが、テラス席の整理券を見せれば入店はできる。

流れる涙場所でお茶しませんこと?

退紅トレイン

唐突だが、『退紅トレイン』という曲がある。「神山羊」名義でも活躍されているボカロP、有機酸さんのデビュー曲であり、自分もかなり気に入っている曲だ*5

 

↓いい曲なのでぜひ聴いてみてください*6

youtu.be

 

この曲には「聖地」が二つある。どちらも、歌詞の中で明確に言及されている土地だ。

 

一つ目は、京都。

京都に行ってお団子食べて

という歌詞がある他、MVに使われている写真は京都・蹴上付近にある「ねじりまんぽ」というトンネルのものである。

自分で行って撮ってきたやつ。

 

そしてもう一つが、中目黒である。

中目黒はまだまだハイカラですこと

がその歌詞。

この曲がきっかけで、自分は中目黒に強い思い入れを持つようになった。冒頭の「目黒に行くことになった」理由はこれである。

また、「退紅」という単語。「あらぞめ」と読むのだが、くすんだ桃色の、伝統色である。これはちょうど三色団子のピンクの部分、そして桜の色に類似しており、この曲が好きな身にとって、桜の季節に中目黒に行くというのはとても意義深い行動なのである。

流れる涙場所で

話を戻そう。

 

ロースタリー東京は、主に4つのフロアに分かれている。

1階は、いわゆる「スタバ」っぽい、コーヒーがメインのフロア。もちろん扱っているメニューは普通のスタバとは異なる。また、パン屋もあり、コーヒーとパンを一緒にいただけるという贅沢な場所だ。

2階は、お茶をメインとしたフロア。スタバでは紅茶も取り扱っているが、ここではより多様な紅茶を楽しめるだけでなく、なんと抹茶ラテまで取り扱っている。石臼でお茶を挽く様子も間近でみることができる。

3階は、バー風のフロア。1階のようなコーヒーメニューの他に、アルコールも提供している。席の予約もできるらしい。

4階は主に客席だが、機械などが色々置いてあって面白い感じになっていた。

 

当初1階を利用するつもりだったが、ドリンクとフードを組み合わせてオーダーする方法がわからず、どちらも同じカウンターでできる3階へ行くことに。

なかなか緊張した。

メニューについては、上記のリンクに色々あるので見てみてほしい。自分は、スピリットフリーカクテル*7の、シネマカプチーノとティラミスをオーダー。割と迷ったが折角なのでいいものを嗜もうと思った。

無粋なのでここには書かないが、それなりにいいお値段した。気になる方は公式サイトをチェック*8

20分くらい待ち時間があります。

 

さて、お忘れのことと思うが雨が降っている。店に来るまでは小雨だったが、オーダーを終えると本降りになっていた。

よぎる不安。

さらに、テラス席の方では店員さんが忙しそうにしている。余計に不安を募らせた。やや泣きそうだった。良いスタバなのに。

 

ものを受け取り、4階へ。

 

テラスは……

 

使えました。

 

屋根側の席が使えるらしい。川からは少し遠ざかり、桜はやや見づらいですが、ここまで待って行けないよりはうんとましです。

 

早速、いただきましょう。

本日私がいただくのは……

テラスからの眺め

4階となるとやや遠いので、選択の余地がある場合は3階席をお勧め。

 

お味の方ですが、単刀直入に言います。マジで美味しかったです。

シネマカプチーノはコーヒーの味を三種類から選ぶことができ、自分はビターなものを選択しました。キャラメルベースのカプチーノですが、キャラメルの甘さとコーヒーの苦さが上手く調和していて素晴らしかった。後味や残る香りも本当に豊かで、満足いく逸品でした。

ティラミスもくどくなく、そこそこ大きかったですがさくっと食べられました。コーヒーとの相性も良かったですね。

 

ただし、一つだけ問題が。

寒い。結構寒い。春とはいえ、雨が降るとそこそこ冷え込む。温かい飲み物にすれば良かったな〜でも美味いな〜とおもいながら過ごしていた。

 

こういうところでは読書をするのが筋なのだろうが、少しだけ音楽を聴くことに。色々考えて、先ほど出ていた『退紅トレイン』を聴いていた。

流れる涙場所でお茶しませんこと

という歌詞が、まさに自分の境遇とぴったり。

中目黒はまだまだハイカラですこと

席は90分使えるのだが、流石に寒かったので40分ほどで退散。お店の中を見て回ることに。世界に6店舗しかないとなると内装もとても豪華。

ギラギラしてる

割とメカメカしい、一つの工場みたいな内装をしている。

 

あまりにも寒かったので、1階でホットチョコレートをテイクアウトして帰った。ちなみに傘を持ってきていなかったのでずぶ濡れである。電車に乗るのが憚られるくらい濡れた。

明かりが消えても綺麗。スキがないね。

帰りは中目黒から撤収。長い一日が幕を閉じた。

 

と思ったら、六本木での乗り換え途中に謎のオブジェが。

ごつい。

夜の閑散とした小綺麗なオフィスビルにこれがドンとあると、さながらRPGのボス戦みたいだった。迫力ある。

まとめ

感想

東京で花見をするにはそれ相応のエネルギーと時間とお金が必要だと痛感した。少なくともどれか一つは必要である。総じて良い経験ができたし、満足な一日であった。

桜は本当に綺麗だった。自分は花見というものがそんなに好きな人間ではないが、桜を讃える気持ちがかなりわかった気がする。それくらい美しい風景だった。人が多かったことだけが難点である。

のちの人のために

  • 目黒川で花見がしたい、という目的であれば、池尻大橋駅〜ロースタリー東京の区間、もしくは目黒駅付近が割と空いている。特にロースタリー東京〜中目黒駅はかなり混むので、避けた方が良いと思う。
  • 桜シーズンにロースタリー東京に行こうと思っている人は、暇つぶしする場所に見当をつけておこう。渋谷というのは割と良い選択肢だったと思う。屋台なども出ているが、混んでおり、目黒川近辺で暇潰しをするのは賢明ではない。
  • いいテラス席を抑えるためには、正直開店直後に行くのが最も賢明。かなり並んでいるらしいが。10時くらいだと3階席は厳しいと思う。入店は時間が選べないが、テラス席は時間が選べるので、それを加味して予定を立てれば良い。

 

以上です。割と楽しかったのでおすすめ。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

出典

『春泥棒』/ヨルシカ

『退紅トレイン』/有機

*1:後述するが、呼び出しの時間に店に辿り着けさえすれば、別に店の近くで待っていなければならないと言う制約はない。

*2:出来立ての「トイ・ストーリー・マニア!」。

*3:呼出から1時間程度の遅れであれば入店できるらしいので、そこまで焦る必要はない

*4:一昨年のクリスマス当日に、一人でイルミネーションを巡った回。人の多さやカップルの多さには、ここで慣れた。

*5:YouTubeでは、『ウッドペッカーは夜泣く』が先に投稿されているが、ニコニコ動画の概要欄から、『退紅トレイン』がデビュー作であることがわかる。『ウッドペッカー』は7作目

*6:アルバム「facsimilie」に収録されているバルーンさんアレンジver.も超いいです……!

*7:ノンアルコールカクテル。モクテルの一種だと思います。

*8:記載はないですが、ティラミスは700円くらいでした。これはまあ妥当だと思う。

春休み旅行記① 1日目

注:⓪を読んでいない方は先にお読みください。

sprechchor-on-correct.hatenablog.com

 

 

行程の詳細

東京駅ー(JR中央本線[特急あずさ41号])ー松本駅

旅の初めは東京駅

旅の初めは日本橋であり、鉄道旅の初めは上野であると相場は決まっていますが、自分にとっての旅の初めは、大方東京駅です。

ただし、目的地が松本である場合、大方新宿からスタートすると良いとされています。実際、⓪にリンクを載せた山梨旅行記でも、そのスタートとゴールは新宿でした。それでは、なぜ東京駅からスタートすることにしたのでしょうか。

 

丸の内駅舎の背中が見える。

その理由は「おもしろいから」です。おもしろい、というのは多くの人間の行動原理であると把握していますが、御多分に洩れず、今回の旅でもおもしろいから、という理由で様々なことをしています。では、何がおもしろいのでしょうか。

まず、東京駅から出る特急「あずさ」号は、1日に一本しかありません*1。それが、上記した「あずさ41号」です。山梨旅行記にも書いた通り、自分は関東圏で好きな列車として「あずさ」をよく挙げるのですが、それの特殊パターンがあるというのであれば乗らないという手はないでしょう。

また、東京起点、東京終点にしたかったという意図もあります。帰りは仙台からであるため、東京へ帰ってくることになるのですが、それに合わせて「一周」の行程を作るため、東京を起点にしました。

その他、家から近かったとか、時間的にちょうどよかったとか諸々の理由があり、結果として松本に行くのに東京出発という所業を成し遂げました。

 

さて、東京駅ではかの有名な駅弁屋さん「祭」でお弁当を買っていきます。「祭」には様々な地方の駅弁が販売されており、実はこれから向かう地方のものもジャンジャンあったのですが、なんとか美味しそうなものを発掘していきました。

鎌倉の押し寿司らしいです。美味かった。

近鉄道系YouTuberなるものをよくお見かけするのですが、みんなここで駅弁を買っていたので真似してみました。実際品揃えはとてもよかったので行ってみるといいと思います。おすすめです。

中山道

さて、そろそろ出発しましょう。

特急あずさは、東京から中央線・中央本線に乗って235.4kmを、おおよそ3時間で西進します。停車駅もそれなりにあり、東京都では中央線快速との兼ね合い、西部では山道と、あまりスピードを出せないと言えば出せないのですが*2、それでも鈍行で行くよりは圧倒的に早いですね。なにより、乗り換えがないのがとても楽です。

 

前回はほぼずっと寝ていたのですが、今回は道中のイベントを楽しむため起きていました。まずは、先ほど買った駅弁を食します。いつも中央線快速で通っている御茶ノ水飯田橋をガンガン通過していく不思議な光景が車窓に流れていました。

お弁当を食べ終わり、高尾に差し掛かったあたりから山に入ります。あずさの車両は、山道を走る前提なので(そらそう)、スピードを落とさずガンガン走るわけですが、その代わりよく揺れます。「揺れる」というより「傾く」に近い感覚ですが。

 

とか言いつつのんびりしていると、車内販売が来ました。最近では数が少なくなった特急列車の車内販売です。ネットで販売内容を見ていると、かのアイスを再販しているということが発覚。せっかくなので購入してみました。

シンカンセンスゴイカタイアイス

味はまあ……いつものお味なのですが、その特別感が美味しかったです。と言っておきます。

 

さて、そうこうしているうちに、あずさは前回訪問した甲府を超え、小淵沢を超え、長野県に入りました。ちなみにこのあずさは甲府小淵沢には止まるのですが大月には止まらないパターンのやつでした。

電車に揺られていると、というより振られていると、段々酔ってきました。お酒を飲んでいたわけではありません。車酔いです。甲府あたりから松本まで、それなりにあるのが余計に辛い。また、冬特有の暖房が暑い(熱がこもる)という状態にも直面していました。

松本

というわけで、てんでからがら松本駅に到着しました。長野の街ということもあり、雪も残っていて少し寒い。ただ、これまでの環境からすると少し寒い方が、熱を発散できたり酔いを覚ましたりできて嬉しかったです。

松本。専用ホームではないので色とりどり。

先ほど駅弁は食べたのですが、無類の鶏肉好きである自分にとって、見逃せないメニューがありました。それが「山賊焼」というもの。

平たく言えば、非常に大きい鶏の竜田揚げ、と言ったところでしょうか。それを売っている店が松本駅の隣にあるということなので、ホテルにチェックインする前に寄って行きました。居酒屋だったのですが、テイクアウトでお弁当を買って行けるのがありがたい。

 

泊まるホテルは、松本駅から徒歩10分、松本城に程近いホテルでした。主観ですが、松本のビジネスホテルは、松本駅から松本城にかけて点在している節があります。

チェックインを済ませると、山賊焼は一旦置いておいて、松本城へ。松本城は訪問当時ライトアップがされていました。

かっけえ

単に光っているだけでなく、天守閣に向けてプロジェクションマッピングがされていたり、迫力ある音楽が流れていたりと、なかなか見応えのあるライトアップでした。なにより、お堀に天守閣が映っているのが美しいですよね。

このお堀、周りに柵などがないため、落ちないかややヒヤヒヤしていました。そんなに深いものではないので、溺れたりはしないのでしょうが、、

 

15分ほど見て撤収しました。夜なのでちょっと寒かったですね。じっと見ているのは辛いくらいの寒さでした。

部屋に戻って先ほど購入した山賊焼を食べます。

割り箸と比べるとその大きさがわかる

なかなかジャンキーな味がして美味しかったですね。ボリュームもあって大変満足しました。先に駅弁を食べていたはずなのに軽く食べ切ってしまいました。鶏肉最強。

 

以上、1日目の行程でした。

 

2日目に続きます。

*1:東京より西の千葉からくるあずさも存在しますが、それは東京を通過して新宿に行きます。よって下り列車は名実ともに一本しかありません。上り列車は東京止まりが二本あります。

*2:実際平均時速80km程度なのでそんなに早いわけではない

春休み旅行記⓪ 概要

お久しぶりです。このブログを書くこともめっきり少なくなってしまいましたが、先日大きめの旅行をし、その模様を文として残しておきたいと思いまして、大きめの記事を立てようと決意しました。このブログでは珍しい連作タイプの記事です。

旅行の概要

5W1H的な内容です。

1)日程:2023年2月16日〜20日
2)人員:同行者1名(当記事ではそこまで登場しません)
3)行先:松本・新潟・米沢・仙台
4)目的:後述
5)手段:各種在来線及び第三セクター

切符についてですが、青春18きっぷは使用可能期間外であったため使えず、様々なパターンを検討しましたが、結局普通の乗車券+特急券で移動しました。ここだけでも記事1本書けるくらいの情報量があるので、また番外編のような形で書こうかなと思います。

記事は1日につき1本出します。行程の都合上、1日目の内容がやや薄いですが、2日目と合わせるとえらいことになるので、全日分けます。長かったら2記事に分けることもあるやもしれません。

旅行の目的

旅行というものは、特段といった目的がなくてもして良いものと存じますが、今回の旅行には非常に複雑な目的が存在したので、後の記事の都合からここで整理しておきたいと思います。

1.本州最後の未踏県到達

半年前くらいに書いた山梨旅行記の記事に、山形に行けば本州全ての都府県に到達する〜という内容を記載していました。

sprechchor-on-correct.hatenablog.com

しかし、先日親と確認作業をしていたところ、自分は宮城県に行ったことがない*1ことが判明しました。これはまずい、ということで、仙台に行こうと思ったのが、ことの発端です。

2.山形再訪

先ほど名前が出た山形ですが、昨年夏に合宿免許でお邪魔していました。ところが、一人で参加したがために、非常に寂しい思いをするという結果に終わってしまいました。決して山形県米沢市、そして自分が行った教習所に責があるものではありませんが(ここ大事)、山形県への印象(バイブス)を上げるべく、再訪したいと思った次第であります。米沢市山形県への思いはどう変わったのか。結果はぜひ、当該日の記事をチェックしてみてください。

3.新潟の友達に逢いに行く

まんまです。詳しくは当該日の記事を読んでください。

4.懐かしの駅スタンプラリー制覇

JR東日本で行われていたスタンプラリー「懐かしの駅スタンプラリー」に参加していました。

www.toretabi.jp

これは、首都圏にある駅のほか、「東北・信越周遊編」として、長野駅新潟駅・仙台駅にもチェックポイントが置かれています。今回の行程には、それらの駅が含まれています。

5.その他

デカめの旅がしたかったとか、特急に乗りたかったとか、えちごトキめき鉄道に乗りたかったとか、色々な理由が加味されています。大方はここに書いた通りですが、また該当の箇所で取り上げることもあるかもしれません。

目次

記事を公開次第、以下にリンクを貼り付けていきます。お楽しみに。

① 1日目

sprechchor-on-correct.hatenablog.com

 

*1:もちろん、東北新幹線の乗車経験はあるので、通過したことはあります。

2022年推し曲10選+α

いつもの。

去年に比べて聴く数がちょっと減ってしまった。NicoBox導入など、個人的にでかい事象はいくつかあったのですが。まあでも、いい曲が色々あるし、いいか。

~レギュレーション~

①2022年上半期にYouTubeに投稿された楽曲(ただし2021年12月投稿も一部含む)

②私が2022年のプレイリストに入れた曲

【ボカロオリジナル部門】

1.キメラ/DECO*27 feat.初音ミク

おっいいねいいねって感じ(適当)。本当にズムサタで流れていた時はそれなりの感動があった。もはや常連であり、そうであることに何の疑問も感じないさせないあたりに改めて感嘆させられる。あとアルバム「MANNEQUIN」もとてもよかったですね。まあこの曲は収録されてないんですが。ストレートないい曲。

2.スコーピオンガールの貴重な捕食シーン/STEAKA feat.初音ミク

なんだこれ(驚嘆)。今までこんな曲聞いたことないと言うか、「こんな初音ミクを見たことない」の感覚に近いかもしれない。感情以前に直接的に感覚に作用してくる感じがして、とても良いと思います。こんな真似ボカロでしかできないし。完璧。

3.スイートリトルライズ/莉津 feat.可不

ダウナー系のよかった曲。冒頭の下降音形が刺さりました。ギターのジャキジャキしているのも好み。二番Bメロの韻の踏み方が綺麗で、そこも気持ちいいポイントです。こういうふわふわした曲が可不にはあっている気がする。

4.街/jon-YAKITORI feat.初音ミク

今年もプロセカです。johnさんもボカロ曲を久々に出してくれて嬉しい限りですね。カントリー調の曲なんですが、ビビバスの雰囲気にも適合していて、johnさんすげーとなっています。想起されるのはそういう風景じゃないはずなんですが、カントリーで郷愁って出るんだなと。

5.レリギオス/はねるさかな feat.初音ミク

今年の掘り出し物枠。ずっと手に汗握る緊張感があって、それでいてスッキリ頭に入ってくる名曲。鍵盤がかなり暴れているはずなんですが、なんでこんなにしっくりくるんですかね。サビの刻み方も見事。

6.君の夜をくれ/古川本舗 feat.初音ミク巡音ルカ

「君の夜をくれ」なんてタイトル、何食べてたら思いつくんですかね。とってもダウナーな曲なんですが、それでいて洒落ているというか、品があるというか、透き通っているというか。まあ要するに「素敵」な曲です。

7.雷・々・来/RED feat.知声

こういうアプローチも、ありそうでなかった。2000年代初期のポップスって感じがしてとても良いですね。vaporwave味も感じる。このボカロ(多分UTAUかと存じますが)もなかなかいい声を持っていますよねぇ

8.ゴールデンスランバー/Rulmry feat.星界

いい曲。ストリングスがしっかり押し出されていて美味しいなと思います。最近YouTubeくんがこういうマイナーだけどいい曲を流してくれる様になってとても嬉しいです。ちょっとポルカドットスティングレイっぽさも感じますね。

9.Pinocchio/Noz. feat.音街ウナ

今年もNoz.さんがやってくれました。どうしてこうもメロディーがいつもいつも刺さるのでしょうか。バックもボカロの使い方も一級品。あんまり言いたくないですが「もっと有名になってほしい」ボカロPさんNo.1ですね。聴いてください。

10.アイニーブルー/ZLMS feat.初音ミク

今年のNo.1です。まあこのメンツはずるい。「覚えてる?あの日のあのこと」でグッとくるというか泣きそうになるというか。旅行先の北海道で聴いたのですが、今でもそれがありありと思い出されますね。それぞれの良さがケンカしないでちゃんと残っている、素晴らしい作品だと思います。ぐうの音も出ない。

【歌ってみた・セルフカバー部門】

1.月光/キタニタツヤ×はるまきごはん

うますぎ。ボカロが良く、MVが良く、セルフカバーが良いという化け物です。それぞれの声がボカロ版でもセルフカバー版でも上手く使われすぎていて、語彙力が溶けます。それにMVも完璧に追随しているので、もう言うことないです。聴いて。

2.Flyer!/Chinozo→Vivid BAD SQUAD×鏡音レン

プロセカ。ビビバスの曲は最近かなり好みになってきました。ここまで挙げている曲(『街』『月光』『Flyer!』)が全てビビバスというのは一見異常なのですが、それほどに今年のビビバスは豊作でした。個人的な好みは「あの日夢見た夢が最強の上昇気流」の綺麗なハモリ。あんまここでやらないハモリな気がしますけど、こうカチッとはまっているといいですよね。

3.ハッピーシンセサイザ/Easy Pop→YUME YUME JUMP!

プロセカ再び。これはエイプリルフール企画なのですが、布陣が贅沢すぎる。というか曲にハマりすぎ。うまい。MVのアニメ感もいいなと思います。エイプリルフールに全力投球するプロセカ概念、最高に良い。

4.ミライ/有機酸→aruma

さっきのがOPだとしたらこれはEDですね。沁みるカバー。しかしまたビビバスだよな。「曇りガラスと陽の影が/映し出す雨/戸惑い」の部分を上手く歌っている人がいないかな〜と探していた時に見つけました。しっとりした歌い方も合う曲ですな。

5.エイプリル/mol-74→Sou

結構昔の曲らしいですね。最近Souさんをちゃんと追ってなかったのですが、久しぶりに聴いたらいいなあとなりました。チョロい。こういう爽やかだけど切ない曲にカチッとハマる、いい歌い手さんだと思います。ピアノがちょっとじっとりしてるのがいいですね。

6.ロウワー/ぬゆり→ばんけん

ここでまさかのインストカバーを。昨年の大ヒット曲『ロウワー』のピアノカバーです。とてもおしゃれにカバーされていて、良い。やっぱピアノってかっこいいよななどと。

7.88☆彡/まらしぃ→ワンダーランズ×ショウタイム

まらしぃさんらしいというか、色々な事象にかかったネタが散りばめられている素晴らしい曲。ストーリーを読んでから聴くと泣きそうになる。いい話。

8.神っぽいな/ピノキオピー→EMA

EMAさんの声マジで好き。選曲良すぎ。神。神っぽいじゃなく、神。

9.食虫植物/理芽

Live版が上がってて、超よかった。理芽さんも割と声が好みの枠に入るのですが、ライブでもちゃんと上手いと嬉しいですよね。曲も良いし。

10.Journey/DECO*27→プロジェクトセカイ

2周年テーマソング。プロセカをずっと見守ってきたといっても過言ではないだろう、DECO*27氏の力作に、歌唱力で応えた怪作。奏の「泣き顔もなんかいい感じ」が良い。プロセカやっててよかったな、と思いました。

【POPS部門】

これまで「その他部門」でしたが、あまりにも身もふたもないので新設。

1.ゴーストキッス/NOMELON NOLEMON

ツミキさんが立ち上げたバンド部門。「きっとあなたとあたしの涙は同じ色だ」という歌詞が非常にかっこいい。前からメロが好きな人ですが、生声になってもそれは変わらず。これからも追っていきたいなと思います。

2.銃の部品/PEOPLE1

まあ有名でしょう。某学園のCMソングでしたし。純粋にカッコええなと思っただけで、深いコメントなんざできやしないのですが、それもまたいいよなという話(?)。構成がなかなか斬新ですが、それでもいいよな。歌詞はキメラになんか似てる。

3.D(evil)/春野 feat.yama

これも……ずるいよなぁ……組み合わせが良すぎ。春野さんのチルな感じにyamaさんが合わさったら最強だとしか言いようがない。

4.過学習/Ado

伊根さんがAdoさんのアルバムに参加すると聞いた時は、それはそれはびっくりしたのですが実際びっくりするような曲ができました。これ。でもしっかりAdoさんっぽい曲ができていて、納得させられました。

5.Overdose/なとり

たまには流行りの曲も聞いてるんだぞ、ということを示していきたい。これいい曲だよな。ダウナー大好きおじさんなのでちゃんとハマりました。あといい声してる。

6.トウキョウ・シャンティ・ランデヴ/花譜・ツミキ

おいおいおいおいおい
なんだこの組み合わせ。MAISONdes名義でしか確かに成立しない組み合わせではないとは思うけど。????って感じでした。蓋を開けてみたら花譜さんが変わった歌い方してるし、ツミキさんがバチバチかましてるし、恐ろしい曲ができましたね。

7.青いキリン/ftrygry

なんだこれ?と思ったあなた。聴いてみてください。これはすごいです。

8.青く青く光る/Lanndo feat.ACAね

今年全体的に組み合わせがおかしいんですよね。ワールドカップじゃないんだから。実はこの二人は『秒針を噛む』で絡みがあるので一番妥当性があるといえばあるんだけど。これもいい曲だよな。ロウワーっぽい雰囲気を残しつつ、ACAねさん向けにリカスタムした感じがする。

9.藍より群青/夏代孝明 feat.星街すいせい

爽やか。まあどっちも「青」属性なのでピッタリですね。星街すいせい氏はかな〜り活動の幅を広げていて、とても面白い。これからどう引っ掻き回してくるのか楽しみでもあります。

10.ショートショート/ポルカドットスティングレイ

アルバム「踊る様に」より。名曲ですね。「全知全能」にオリジナルが入っていたらしいのですが、僕的には「踊る様にver.」の方が好み。こんなに「かわいい」失恋ソングがあるだろうか。メロディ大好きです。

【レトロスペクティブ部門】

1.メラメリ/Sasanomaly

今年ササノマリイさんは私立恵比寿中学『ヘロー』に編曲で参加されたのですが、これをめちゃくちゃ想起される。エビ中が好きな人は是非こちらも聴いてみてください。優しい耳あたりの良い曲です。

2.リルビィ/空白ごっこ

聴くの遅すぎ。電ポルPさんは昔から大好きなのですが、今年とある事情で空白ごっこに足を突っ込んだら見事にこうなりました。かっこいい。

3.SCREW/蝶々P feat.可不

お恥ずかしながら蝶々Pさんが可不曲を出していらっしゃることを今年知りまして……蝶々Pさんらしいピアノが上手く効いた名曲。定期的に摂取したくなるんですよね。イケメンピアノは正義。

4.IMAWANOKIWA/いよわ→芥 ゆふ

今年見つけた名カバー。いよわさんの曲らしく、非常に難易度が高いのですが、綺麗に収めていて良いなと思いました。スッキリとして口当たりの良い仕上がりです。

5.Blue Star/八王子P feat.初音ミク

MIKU EXPO(海外向け初音ミクライブ)の総集編を見ていて度肝を抜かれた曲。なんと2016年の曲なんですが、こんなにゴリゴリエレクトロなんですな。良い。さすが八王子Pさんと言わしめる一曲。

6.MOGARI/かいゑ feat.初音ミク

かいゑさんは「十五少女」絡みで知ったのですが、なかなかかっこいい曲を書く方です。特にこの曲はスピード感のある展開で聴いてて楽しい。それでいておしゃれでかっこいいという、まるでカクテルの様な曲です(上手いこと言ったつもり)。

7.ミラーリング/バルーン feat.初音ミク

バルーンさんがまだ初音ミクを使っていた時代、というとかなり昔に感じる。実際それなりに昔の曲なんですが。というか『シャルル』から6年経っていることが信じられないですね。こう聴くとまたすごい。

8.Moonlight/shima feat.VY1

超絶ダウナーな曲。言葉の連なりが耳に心地よい。この曲は「歌詞も音楽の一部」という様な乗せ方をしていてすごいと思う。

9.フライディ・チャイナタウン/泰葉→稀羽すう

なんか最近昔のシティ・ポップが流行っているらしく、追随してみた。こういうのもいいよね。

10.アサガオの散る頃に/ぷす feat.初音ミク

プロセカ収録おめでとうございます。すごく良い曲です。収録のタイミングが素晴らしすぎて完璧なタイミングで聴けた気がする。

 

以上、今年の音楽レポートでした。見て分かる通りコラボが豊作でしたね。みんな仲が良くてよいことです。

一足早いですが、良いお年を〜〜〜

渋谷と飲食チェーンの話

東京に来て、自分がかなり驚いた事実、そして話すとそれなりにウケが取れる事項として、「渋谷にミスタードーナツがない」ことが挙げられます。渋谷にミスタードーナツがないのは実は微妙に不便で、ドーナツを得るために下北や新宿や高田馬場に行くことがままあるのですが、そんな事情を渋谷が汲んでくれるわけではありません。

愚痴はこの辺にして。今回は「渋谷に『飲食チェーン』の店舗がどれくらいあるのか」という問題を提起し、その解決を図ろうと思います。というわけでレギュレーションを用意しました。

【レギュレーション】

① 「飲食チェーン有名店」として、日本ソフト販売株式会社が出している「飲食店チェーンの店舗数ランキング」のうち、「ファミリーレストラン」「ファストフード」「カフェ・喫茶」からそれぞれ上位5チェーンを用いることとします。

② 「渋谷」を大体以下の範囲と定めます。

図中黒線に囲まれた範囲を「渋谷」とする

厳密に定めておくと、

・地下鉄千代田線
明治通り
東急東横線
・山手通り

に囲まれた範囲です。いわゆる「渋谷」に比べるとやや広い範囲ですが、まあいいでしょう。

というわけで、検証、スタートです。

 

1.ファミリーレストラン部門

1位:ガスト

ファミリーレストラン(以下ファミレスと記述)の中で最も店舗数が多いのはガストです。まあこれは予想できる結果でしょうか。早速渋谷の店舗を調べてみると、

・渋谷駅前店
・渋谷桜丘店
渋谷道玄坂
・渋谷宇田川町店

の4店舗ありました。それなりに「いっぱいある」と言えるでしょう。特に渋谷駅を中心としてかなり密集して配置されていますから、渋谷を歩いていると良く見かけます。これはさすが渋谷、という感じですね。

2位:サイゼリア

格安イタリアンファミレスとして有名なサイゼリアが2位にランクイン。東京にいると確かに割と見かけます。渋谷には

・渋谷東急ハンズ前店

の1店舗しかありません。山手線周りをざっと見てみても、新宿駅周辺を除けばサイゼリアはあまり密集していない、という特徴があるように感じます(新宿駅周辺には4店舗くらいある)。ガストとサイゼリアの店舗数差は300ほどなのですが、この密集度の差が出ているのかなと思われますね。

3位:ジョイフル

3位はジョイフル。ジョイフルって行ったことあったっけな……と思いましたが、どうやら西の方に多いみたいですね。どうりで東京で見ないわけです。このジョイフル、渋谷周辺にはありません。というか東京都にも4店舗しかない。山手線の内側だけ見たら赤坂に1店舗あるのみです。

4位:ココス

ジョイフルと同様の分布を示すのがココスです。ただしココス自体は東京都全体で見ると結構あります。しかし、渋谷には店舗はなく、山手線の内側だけ見ると秋葉原、白山にそれぞれ1店舗あるのみとなります。ココスは東京に来てから全く見ていないな、と感じていましたが、どうやら正しかったようです。

5位:バーミヤン

中華ファミレスの代名詞ことバーミヤンは、少し事情が異なります。渋谷周辺には、エリアぎりぎり外側となる神宮前店を除くとありません。しかし山手線内側を含め、いわゆる「都心」エリアにはそれなりに店舗があります。新宿駅周りにも2店舗はあるようです。これを見ると渋谷にないのは結構謎ですね。まあラーメン屋や中華料理屋がひしめく渋谷ではなかなか生き残れない、なんて事情があるのかもしれませんが……

 

2.ファストフード部門

1位:マクドナルド

ファストフード部門1位はハンバーガーショップであるマクドナルド。ファミレスと同様予想できる結果でしょう。渋谷にも

・渋谷店
・渋谷東映プラザ店
渋谷センター街
・渋谷MIYASHITAPARK店
・渋谷新南口店

の5店舗が存在します。ちなみに日本にある店舗数はガストの二倍超。それを加味すると渋谷には少ないと言えるのかもしれないですね。

2位:ほっともっと

2位はほっともっと。ほっともっと……??ここファストフードに分類されるんですね。多分あのお弁当屋さんだと思うのですが。渋谷には店舗なし。まあこれについては頷けますね、他の飲食店が「ない」場所にあるイメージはあるので。山手線内側にはそれなりに店舗ありますし、山手線の西側にはたくさんありました。ほっとほっともっともっと。

3位:モスバーガー

3位はモスバーガーモスバーガーが好きって人は周りに割と見かけますね。渋谷には

渋谷道玄坂
・渋谷公園通り店
・渋谷円山町店

の3店舗あります。ほっともっとはマクドナルドに店舗数で割と食らいついているのですが、モスバーガーはほっともっとにダブルスコアを付けられています。それでこの成績、というのはすごいのかもしれないですね。まあサイゼリアよりは店舗数多いのですが。

4位:ケンタッキーフライドチキン

4位はケンタッキーフライドチキンでした。個人的には結構好きなんですけどね、ケンタッキー。店舗数で比べるとサイゼリアよりちょっと多いくらいです。渋谷には

渋谷道玄坂

の1店舗のみです。東京都心をざっと見渡しても、ほっともっとに比べたら分布はまばらですね。

5位:ドミノピザ

実はピザ店もファストフード属性らしいです。渋谷には店舗なし、まあ渋谷でピザチェーンを見かけたことはない気がしますね、、ざっと調べてみましたが、ピザーラが一店舗だけありました。これも渋谷駅周辺、というよりは住宅街の方だったので、まあ中枢にピザチェーンはないのだろうなという結論に至りました。おしまい。

 

3.カフェ・喫茶店

1位:スターバックスコーヒー

カフェ部門堂々の一位はスタバ。ちなみに店舗数はマクドナルドの方が上です。渋谷でもかなり見ますが、実際に店舗数を数えてみると以下の通り。

渋谷マークシティ
・SHIBUYA TSUTAYA
・渋谷モディ店
・渋谷文化村通り店
・渋谷パルコ店
・渋谷ファイアー通り店
・渋谷公園通り店
・MIYASHITA PARK店
・渋谷フクラス店
・渋谷スクランブルスクエア店
・渋谷ストリーム店
・代官山T-SITE店
・代官山蔦屋書店

なんと13店舗もあります。渋谷恐るべし。代官山はずるいだろ、という話もありますが、上記範囲外に渋谷ヒカリエShinQs店、渋谷クロスタワー店、渋谷2丁目店もあるので「渋谷」とつく店舗だけで13店舗あるといえます。ちなみに興味本位で新宿も見て見たら大体同程度でした。これまでの店舗と異なり、大きめの駅の周りに密集するという特徴が見られます。

2位:ドトールコーヒーショップ

2位はドトールでした。スタバとの店舗差は700くらいです。渋谷だけでみると

・渋谷神南1丁目店
・渋谷井の頭通り店
渋谷センター街
・渋谷新南口店
・代々木八幡店

・渋谷公園通り店(EXCELSIOR CAFE)

の6店舗です。こう考えるとスタバの恐ろしさが分かりますね。いやドトールも十分いっぱいあるんですが。ちなみに山手線の外側に出ても、京王線小田急線のほぼ各駅に配置されているという特徴があります。見てて面白い。

3位:コメダ珈琲店

ここはなかなか予想が難しいところだと思います。コメダでした。あの大容量で有名なところですね(雑)。渋谷には

渋谷道玄坂上店

の1店舗のみ。全国の店舗数ではドトールとあまり変わらないので意外な結果になりました。しかしよく考えるとコメダは名古屋の会社。実際名古屋を見るとかなりの数があるので、東海地方にも店舗が集中しているというのもあるかもしれません。

4位:タリーズコーヒー

4位はタリーズ。昔タリーズのストラップみたいなのを持っていた記憶があるのですが、あれはどこへ行ったのでしょうか。渋谷には以下の店舗が。

・渋谷東急本店前店
・渋谷ソラスタ店
・渋谷ファイアー通り店
・東急プラザ渋谷(店名なし)
・渋谷スクランブルスクエア(店名なし)

5店舗ありました。なんと上位にあるコメダより多いですね。コメダは店舗が大きめ(テーブルとかもしっかり大きい)のに対し、タリーズはスペースが小さい(スタバに似ている)というのもあるのかもしれません。まあスクランブルスクエアのタリーズは非常に大きいんですが(筆者のお気に入り)。

5位:快活CLUB

快活CLUBはカフェらしいです。色々とツッコミどころが多いですが。ちなみに渋谷には店舗がありません。そしてコメダより店舗が少ないというのはやや意外な結果かもしれないですね。

参考) 6位:サンマルクカフェ

さすがに快活はカフェじゃないだろ……という人向け。次点はサンマルクでした。渋谷には

渋谷道玄坂
・渋谷公園通り店

の2店舗があります。チョコクロ美味しい。

 

以上、渋谷にある飲食店比較でした。個人的な印象ですが、渋谷は一部のチェーン(スタバとか)が発達している代わりにその他のチェーンはあまり集中しておらず、単発の店が多いように見えます。まあミスドもないしね。

かなりの自己満記事になりましたが楽しんでいただけたのであれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。