SEEDS体験記③

前回、前々回とSEEDS体験記を書いてきましたが、今回はまとめとして、SEEDSの感想的なものを正直に書いていこうと思います。この記事に書かれていることはすべて一個人の意見であることを、最初に断っておきます。

①体感コースについて

体感コースで得られたものを一言で表すと「人脈」でしょう。課外活動を活発にしてこなかった私にとって、学外の知り合いができた、というのはかなり大きなポイントでした。SEEDSは「科学が好き」という方向性は一致していながら、個々の興味の向く先は違うので、話があったり合わなかったりするのが一種心地よいものだと感じました。

他にも私に関しては、実感コースで行った研究への手がかりをつかめた、というのもありがたいことでした。あの時「できる」ということを言ってもらえなければ自分はこの研究に進まなかったと思います。

あと地味に効いてくるのが「レポートを書く体験」です。形式的な面だけでなく、自由度の高いレポートに対してどうとっかかりを見つけるか、ということを考えることができたのは、おそらく今後自分が明るくない分野に対してレポートを書くときに生きるのではないかなと思います。

実感コースに進まずに体感コースでやめる人が大多数ですが、それでも得られるものは大きいと思います。確かに実感コースでやる研究というのはとてつもなく重要な経験になりますが、体感コースで行うことができる、見知らぬ人と議論すること、自分と方向性の違う知り合いを見つけること、自分の知らないテーマでもなんとか考えてみる、あるいは自分の明るい分野に引き込んで議論を展開させる、などの体験は間違いなく今後の活動によい影響をもたらすものだと思います。

残念だったことというか、これはこのプログラムのある意味特色の一つなのかもしれませんが、工学系の話が非常に多かった。工学系の話が多いと言っても、それぞれの話は生物だったり、化学だったり、物理だったり、数学だったりするわけですが、他の学部の方の話を聞きづらい、というのは若干引っかかるポイントではあります。もちろんアシスタントさんの中にはいろいろな学部の方がいらっしゃるわけですが、それでもやはり工学部系の占める割合が大きくなる(これは大阪大学の工学部の人数が多い、というのも関わっていますが)ので、他の学部について知る機会は意外と少ないです。

理系に進みたいけれども迷っている人や、逆にしっかりした芯がある人にはこのプログラムをおすすめできます。前者は理系の様々な科目の最先端の話を聞くことができますし、後者は自分のフィールドに話を持ちこんで、異分野とコラボする訓練ができます。

②実感コースについて

実感コースはいうことがないぐらい満足です。強いて言えば全体で集まる機会がもう少し欲しかった、という程度でしょうか。

ただ、これについては運要素が強く、私は偶然自分のやりたい研究に完璧にマッチした先生がいらっしゃったのでいいものの、自分の特定の好きな分野に合わないと結構難しい、という点があります。

個人的に引っかかっていたのは、研究提案を出す人の少なさです。確かに、高校生の時点で特定の研究をしたい、というテーマを引っ張ってくるのは難しいと思います。しかし、研究において「テーマを考える」というのは一つの大きなステップになるのではないか、と考えています。こういうことを言うのは実際私の代でも研究提案を出している人が意外と少なかったからで(ただし、研究修了時のデータであるため提案がはじかれた可能性ももちろんある)、それを残念に思っていたからです。
繰り返しますが、高校生の間に研究テーマを見つけてくるのは難しく、私は運ゲーで見つけてきましたが、それでも何か、自分のわかる範囲でやりたい研究を示すのが必要なのではないか、という風に思います。ある程度漠然としていてもいいですが、研究をするにあたって自分のやりたいことをしっかりと整理しておくというか、受動的にテーマを受け入れるだけでなく、ある程度自分のやりたいことが明らかになった状態で実感コースに進めると、やれることも変わってくるのかな、と感じます。
私の場合は、提案ができたおかげで、研究発表等でもストーリー建てがすごくしやすかったなと感じています。まあこれに関してはSEEDSの運営の方にも何か考えがあるはずなので、完全に私の意見の吐き出しにすぎません。

③全体を振り返って

大事なことなので割と繰り返しますが、SEEDSの最大のメリットは知り合いができることです。そのうえで、分野を横断して思考することを学べることが、SEEDSの真価であると思います。

SEEDSで様々な先生のお話を聞いたり、英語の学習をしたり、受講生同士で議論する、というのは、違う分野や違う視点から見て、捉えなおしたり、自分の視点と融合させたりする訓練であると思います。
SEEDSにいって、あるいはその後色々なことを学んで、分野や学問ごとの垣根はかなり低いものである、という風に痛感しています。先ほど工学系の話が多かったことに言及していましたが、実際には工学部や理学部、私が志望していた薬学部にはカリキュラムの差はあれど、中で行われている研究には大して差がなかったりします。そんな中で、自分の好きな分野を学ぶだけでなく、それをどのようにつなげられるか、あるいはつなげられないかを考えるきっかけになったのがSEEDSプログラムであった気がします。

あと知り合いとか話せる相手を見つけるのは新しい環境に入ったり学問をする上でかなり大切なので、これもいい経験になりました。

過去を美化するようですが、SEEDSは間違いなく良い環境であり、その中で楽しんだり、考えたりすることは、何かしっかりしたものは身につかなくても、自己の転換点ぐらいにはなるはずです。私もハッとさせられることがたくさんありました。
SEEDSに限りませんが、特に高校生はいろいろなものに触れて、考えてほしいなと思います。おじさんからのコメントでした。大学生は授業をちゃんと受けよう。

以上です。非常に読みにくい文章になったことをお詫びしますが、その分私がざっと思いつくままに書かせていただきました。きれいごとのように聞こえるでしょうが、じっくり振り返ったらなんとなくわかるかもしれないし、わからないかもしれません。

※体感には個人差があります。

最後までお読みいただきありがとうございました。